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  再会  







§§ 再会 §§

 翌朝。
 ぼんやり起きたら、侍従に王族の食堂に案内された。
 広い部屋でポツンと一人で食事を摂る。

 服装もあのまんまよ。
 おっぱい丸出し。
 ピアス丸見え。
 ブーツ履きっぱなし。
 手枷、足枷、首輪。
 髪の毛は中心をずらした緩い三つ編み。

 お風呂に入れないので、体がくさい。
 病室の侍従に頼んだら、体だけ拭き清めてくれ、局所も拭っただけ、あとは香水をバンバンかけられた。

 王族の食事といっても、内容はあまり変わらない。
 ただ、パンもスープも、それなりにおいしいけど。

「珠里!」

「マタ、オデカケスルノォ? チョットマッテ。マダショクジチュウ…… えっ?!」

 席の背後から声がしたので、振り返ってようやく入り口に並ぶ人々が見えた。
 お父さん、お母さん、絽以、そしてニルさん!

 椅子を蹴飛ばすように席を立って、入り口へ駆け寄った。

 誰にしよう……
 誰にしよう……

「わぁーん! お母さーーーん」

 しがみついてオイオイ泣いた。

「お父さんも絽以も、来てくれてありがとう! そしてニルさん! 本当にありがとう!」
「お待たせしました」
「早かったですね」
「都合よく、あちらのお屋敷の電話とリムジンの契約がまだ残ってて、着いてすぐ王様に連絡がついて、その日のうちにお迎えに行けたのです」
「ユックさんは?」
「元気でしたよ。今は姫様のご自宅のハウスキーパーしてもらってます。王様もお后様もこちらに来られてしまったので」
「うわ、助かります」

「珠里、苦労をかけたな」
「グスッ…… グスッ…… お父さぁぁん…… あたし…… おじさまを……」
「もう言うな。とにかく、良くやったよ」

「お母さぁぁん…… 本当にありがとう。色々教えてもらってたから、なんとか力が使えたよ。しかも本当にピンチの時はエッチな気分なんか関係なく力が使えたよ」
「がんばったわね。こんど、もっときちんと教えるから」
「うん」

「絽以……」
「俺、言いたいことがいっぱいあり過ぎて……」
「あたしもだよ…… ありがとう……」

「姫様、これを…… 鍵束の入った金庫と、体の中の筒を固定する鍵です。いずれもコメドゥ様しか番号を知らないので、今すぐは使えません。工房で壊すのに2、3日かかるそうです」
「この格好にも慣れたから、鍵を取り出せたらあたしに下さい」
「はい」

「何食ってるの? 朝一で飛び出て来たから、俺も腹減ったなぁ」
「頼めば? おいしいよ?」

 全員食卓についた。

 ニルさんは身分が違うからってためらっていたけど、結局お父さんに無理矢理座らされて同席した。
 適当にいろんな料理が運ばれて来て、調子に乗って食べたら太りそう。

 そのうち長老をはじめ、お父さんが亡命する前に親しかったいろんな人が入れ替わりに挨拶に来て食堂はごったがえした。



§§ 復帰 §§

 その日のうちに城のバルコニーで王の帰還の発表をすることになった。

「プ!」
「笑うな! と言いたいところだが、私も十数年ぶりだからなぁ。前ってこんなに太ってたっけ?」
「毎日お仕事されて引き締まったんですよ。私は今のあなたの方が好きですわ」
「フフ、もう新調する必要もあるまいしな」

「絽以は出ないの」
「俺、王様んち関係ないもん。遠縁すぎ」
「あ、そうか」

 髪の毛をお母さんにアップで結い上げてもらう。
 お父さんが持って来た小さなティアラを載せる。
 これが本物なのね。
「珠里の服が無いのよねぇ」
「うー、あたしやっぱこの格好のままかなぁ」
「母親としてはブラくらいして欲しいけど。何か無かったかしら。あ、これこれ、してみる?」
 お母さんのお古のブラ。
 刺繍がすごくてゴージャスなのはいいけど……
「プ!」
「笑うな! 絽以ってば」
「だって、なぁ」
 鏡で見ると下着然としすぎていて、プールサイドに下着で立つような場違いさ。
「もういい! 皆に見られちゃったから今日だけサービスしてやる! 鍵が手に入ったら二度とやんないから!」
「親としてはフクザツだけどなぁ、長老の話にも一理あるしな。珠里が平気ならそれで出なさい。もともと泥水すすってでも国民の役に立つ気でいたんだから」
「あたし、自分がもう感覚マヒしてきてて怖いよ」
 そう言いながら手足の枷をこないだ預かった鎖でカチャンカチャンと繋いだ。
「ちょっと! お前、何やってんの!?」
「何って……? 支度。 あ! あああああ! あたし完全にマヒしてる〜! ちがうの! こうしないとみんな納得しないのよぉ〜!」
 お父さんとお母さんは呆れ顔。

「お支度整いましたらどうぞー!」

 チャリンチャリンと鎖を引きずり、エレベーターに乗って3階のバルコニーへ。

 音楽が鳴る。
 お父さんとお母さんと私の3人で赤い絨毯を踏んでバルコニーへ出ると、集まった人達が拍手喝采…… と思ったら、シーンとしちゃった。

 私のせいだ!
 私が変態だって皆にわかっちゃったんだ!
 昨日の長老たちのせいだ!
 もういやぁぁぁ〜

 その時、さざ波のように起こった拍手が次第に集まり、耳が割れそうなほどのものすごい拍手になった。

 お父さんが慣れた仕草で一歩前に出て、手を挙げて挨拶する。
 お父さん、本当に王様だったんだ。

 つぎにお母さん。
 お母さん、別人?
 本当にお后様!って風格がある。
 この人が魚をおろしたり天ぷら揚げたりトイレ掃除したりしてるなんて、ここの国民は誰も信じないだろうなぁ。

 そしてもう恥も擦り切れた私が、さっさと事務的に済ませようと一歩前に出たとたん、うるさいほどの拍手がさらに音量を増した。

 手ぇ繋がってるので、手を挙げるのはやめて、両手でおっぱい隠すような仕草でペコリと頭を下げたら、もっと音量が上がった。
 なんなのよ、もう。

 そのあと、用意された椅子に座り、首相と長老から十数年前の事件から今回の事件までへ至る経緯が説明された。
 地球での苦労話やおじさまのやったこと、『ソレチガウ』って突っ込み入れたいところもあったけど、大筋で正しく国民に伝えられた。
 ニルさんとユックさんはおじさまの手先という立場だけど、発表の中では功労者として扱われていてホッとした。
 でも実際私の乳首とクリトリスにブツンて穴明けたのはニルさんなんだけどさ。
 きもちいいこと教えてくれたのもニルさん達だから。

 式典の後半はもう退屈の一語。
 お父さんお母さんはケロッとしているというか、むしろ余裕かましてる感じ。
 式典慣れしてない私には苦痛で苦痛でたまらない。
 檻に一週間は平気でも、この退屈さには1時間ももたない。

 あーーーふ。

 あくびをかみ殺すと面白い顔になってしまう。
 バルコニーを見上げている国民の何人かと目が合い、クスッと失笑された。
 ヤバ。


 式典も終わり、お父さんたちは事務的な会議を始めた。
 政権を委譲する手続きを行うのに1ヶ月ほどかかるというので、私の出番があるかもしれない2週間ほど、こっちで暮らすことになった。

「王にはこの国の象徴として留まってもらいたいと皆願っておりますのじゃ」
 長老が言う。
「有り難い申し出だけど止めておきますよ。税金とかいろいろ余計な手間が増えるでしょうから」
「じゃがそのくらいは…… 国民の希望でもあるしのぉ」
「いやー、携帯ないと不便でね、ハハハ」
「ケイタイ……とはなんじゃ?」
「うそおっしゃい! 本当は、あっちには楽しい本がいっぱいあるからでしょ?」
「あわわわ! かなわんなぁ……」

 考えて見れば、こっちに携帯やらデジカメがあったら…… 私のあの姿、撮られまくってたわよね……

 ガクガクブルブル



§§ 城下 §§

 会議の合間にニルさんが何事かお父さんに相談している。
 お父さんは当惑した顔をしてお母さんに相談する。
 お母さんも当惑した顔をする。

 何してんのかな。

 お母さんがお父さんに耳打ちする。
 お父さんがニルさんに耳打ちする。
 ニルさんは何かを掴み取ったような晴れやかな表情をしてその場を離れた。

 私と絽以はすることもなくなったので、二人で城下を散策することにした。
 城の前の丘は見晴らしがいいので良く遊びに行ったことを二人とも思い出したからだ。

「絽以と外に行ってくる」
「その格好で!?」
「だめ? もうみんなに見られて慣れちゃったよ」
「ダメに決まってます!」

 絽以がいつのまにか騎士の格好に着替えていた。
「カッコい……! ゴホン、ふーん、馬子にも衣装ってヤツ?」
「お前、よくよく謀略と奸計の王族には向かないヤツな」
「いいじゃん! もう王族関係ないでしょ」
「そうだな。だからこれ、引き取って来た。おやじの若い時のだって」
「早く行こう」
「ならば姫様、お供します」
「うむ、苦しゅうない。アハハハハ!」
 おっぱい丸見えはやっぱりまずいっていうので、あの別荘の時から着付けてるワンピースに似たものを用意してもらった。
 髪は式典のためのアップのままだったので、リボンをもらってポニーテールにした。

 城内ではみんなジロジロ見るけど、もう声はかけてこない。
 城の表門から出て、外堀を抜けると、道ゆく人から握手攻め。
 100歳近いお年寄りなんか、「あー あー」って言いながら私のおっぱいをパフパフ触るの。
 裸だったら大変なことになっていたかも。

「あれ? あの人のシャツ、貞操帯じゃない?」
 道往く女の人が、筆でなぐり描きしたような貞操帯のイラストの入った、Tシャツみたいなものを着ている。
 近寄って話しかける。
「アノ…… ソノエガラハ……?」
「え? き! きゃーーーっ! うそ! お姫様だ! サインしてください!」
「エ? ア、ハイ」
 差し出されたペンのようなものを使い、Tシャツに漢字で名前を書く。
「一生の宝物にしますっ!」
「ア、ドウモ……」
 何がなんだか良く分からない。

 丘に行くには、市場を抜けて行く。
「おっ、俺このへん記憶あるぞ! あそこのお菓子屋のおばちゃんとか」
「んー んー あたしギリギリで出て来ないなぁ」

 市場の端まで来ると行列が出来ていた。
 貞操帯Tシャツを着ている人の密度が濃い。
 広げたまま手に持っている人もいっぱいいる。
 列の先頭を覗きに行くと、中年のおじさんがイーゼルのようなものを立て、そこに白いTシャツを置いて、脇に置いた絵の具で、フリーハンドで貞操帯の絵を描き、並んだお客に渡している。
「あたしピアスの絵も!」
「ごめんよ、あれは良く見えなかったんだよ。はい、120フルス。乾いてから着るんだよ」
「ありがとう」
 その女の子はヘンテコな横三つ編みにしていた。
 あ!
 あれって、私が仕方なくやった変な髪形だ。
 バルコニーで挨拶した時はアップだったから、トランと外出した時に見てたんだ、あの子!
 ここの国民って、女の子もみんなフェチかマニアなの? もうっ!

 お父さんも国民男性の代表みたいな趣味してるみたいだし。
 さすが国王。
 てことは、国民女性の代表はお母さんね。
 そのへんはまだ目撃してないなぁ。

 プププ、するとあの三つ編みを真似たうえに貞操帯Tシャツ着ちゃうような女の子も、王族の中に代表がいるわけだ。
 なんか面白いね。

 えーと、若い王家の女の子は……と。

 ―― ゴクリ ――

 …… 滝のように汗が出て、考えるのをやめた。


 へんなことに気を取られていたら、列に並んだ誰かが気づいた。
「あの子の首輪、すごいわ、そっくりよ!」
「本物じゃない?!」
「本物だ! 本物だ! 姫様ーー!」
 え?
 え?
 やばい!

 列を作っていた人々が騒ぎ出し、絵を描いていたおじさんも私に気付いた。
「おーーーっ!! 姫様! こんなところへようこそ!」
「アハ、コンニチハ……」
「ちょっと胸のピアスを見せて下さらんか」
 ワンピースの胸元を覗こうとする。
「キャーーッ! チョット! ヤメテ!」
「いいじゃろ? 減るもんじゃなし」
「ヘリマス!!」
「おおよそのデザインがわかれば描けるんじゃ。ホレ、ここに並んでるみんな、姫様のかっこいいお姿に惚れた人々ですぞ」
 そんなキラキラした目でこっち見るなぁぁああ!!

 ……もう、あきらめた。

「おい、ちょっと珠里!」
「絽以、あたしのことヘンタイだって思わないでよ? ここの人達って万事この調子なのよ」
 その場でワンピースをバサッと脱いで絽以に渡す。
「おま! 珠里! ああっ!」
「絽以が目ぇつぶってどうすんのよ。さっきまで見てたじゃない」
「すばらしい!! すばらしい!! もっと良く見せて下され」
 カアアアッと耳まで朱に染まったけど、自分で見せるって決めたんだから思い切って腕を後ろに回し、ポーズを取る。

 膣内の筒がここぞとばかりにヌヌヌと動く。
 全身がドロンドロンに蕩けそうなほど感じちゃう……

「ン……」

 こんな時の方が声をガマンできるから不思議だ。
 快感は同じくらい与えられるけど、漏れそうな声をかみ殺すことができる。

 乳首への視線が痛い。

「ンハ……」

 並んでる人も全員見ているうえ、騒ぎを聞き付けて人が集まって来た。
 ヤバ……
 もう垂れちゃうよぅ……

「モウ…… イイデショ……?」
「おお! おお! ありがとうございました!」
「アノ…… ワタシヲ、ダイザイニスルノ、ヤメテクダサイ」
「何をおっしゃいます! 姫様最高だからこそ、これだけの人が並ぶのですぞ? かわいい! 美しい! カッコイイ! 特にそのピアス! 姫様の勇気の象徴です! 国民の誇りです!」
 ああもう、この国の人はみんなヨイショするのが上手いなぁ。
 私のピアスなんて淫らな心の象徴なのに。

「姫様、サインしてください!」
 私の貞操帯とピアスを見て、より詳細なデザインで描き上げられたシャツを買った女の人が私の所に来る。
「ハァ……」
 さっきと同じように漢字でサインする。
「あ、ありがとうございます!」
 握手。

「なかなか布の印刷技術が進まなくてね、シャツの絵などは手描き主流ですわ。だからこうしていつも流行しそうなデザインをその場で描いているのです。先週まではなぜかカエルが受けましてね、ほら、それ。今週は姫様のご装具のデザインで大もうけですわ。ワッハッハ」
 長老、この人に重い税金かけちゃっていいよ。

 ずらっと並んだ人達から握手攻めを受け、50人くらいサインして握手した。
「ハァハァ…… もうだめ…… 腕が痛い」
「御苦労様。早く着なよ」
「ありがと、絽以」
 人々に囲まれたままワンピースを着込んだ。

 すごい時間かかって市街を抜けて、やっと丘についた。
 緩やかな起伏の四方が見渡せる、優しい風の吹き抜ける、私と絽以の昔からのお気に入りだったと思われる場所。

 低い木立の根元に腰を降ろす。
「あひゃぁ!」
 薄いワンピースのせいで、お尻に当たる草がくすぐった過ぎ!
「バカだなぁ! ほれ」
 汚いハンカチを敷いてくれた。
「お姫様にバカバカ言うな」
「ププッ。お前、本当にすごいヤツだな。やっぱりそれなりに王家の血ってあるんだと思うぜ」
「なによう、急に」
「俺ならとっくに言いなりの奴隷になってるよ。打たれ強いというかしっかりしてるというか、とにかく尊敬するよ」
「ばっ! 急に何おだててんのよ! 恥ずかしいじゃない!」

 絽以が急に真顔になる。

「珠里、時間をあの日の珠里の部屋まで巻戻してくれ。真剣に好きだ、珠里」

 ガーーーッと赤面する私。
 先に言われちゃった。

 今度は私の番。
「あのさ、絽以。鍵が戻ったら、その鍵、もらってくれる?」
「い、いいの?」
「うん。あたしの外も中も、全部絽以のものだよ」
「珠里!」
 絽以が私を抱き締める。

「鍵が戻ったら、早速使わせてもらっていいか?」

 きゃー!
 それって、
 それって!

「い…… いいよ……」

 全身が痺れるような甘い幸せに包まれる。

「ありがとう、珠里」
「改まって言われるとこそばゆいよ」
「俺も。ハハハ」

 気恥ずかしさと嬉しさから肌に軽く浮く汗を、丘を抜ける風が心地よく乾かしていった。


「そうだ、お金があればいいんだけどな」
「え? あるよ」
 私は貞操帯の腰に結んだ巾着を絽以に渡した。
「どうしたんだよ、これ」
「んーと、長老ってヒトがお小遣いにくれた。昨日少し使って、残りをこれに入れてくれたの」
「よし、ちょっと待ってろ」
 絽以は慣れない軽装甲冑をガチャガチャ言わせながら、丘を駆け降りて行った。

 風にたなびく自分のポニーテールがなんか背中に心地よい。

 この国は何か地球と因縁でもあるかのように、中世イギリスの様式に酷似している。
 そういえば、おじさまが『アナムネなんてすぐ隣なのにね』と言っていた。
 雷か何かの自然現象で、あの装置で実現しているような転移が起これば、きっとその時飛ばされた人は『ずぐ隣』のここに着くのではないかしら。
 丘から見える景色はのどかで、高層ビルも無く、時間の流れものんびりとしている。

「ハァハァ、おまたせ」
「どこ行ってたの?」
「ほら、お前のTシャツ。それに簡単なズボンとサングラスも売ってた。着替えなよ。帰りも囲まれると大変だろ?」
「うわぁああ! さんきゅう!」

 ズボンは質素な木綿のズボンで、ベルトの代わりに腰紐を引いて結ぶようになっている。
 シャツはさっきあのおじさんが描いていたもの。
「まだ結構並んでたぜ」
「うわ、じやぁ帰りにも捕まってたかもね」
「そうそう、髪もあのヘンな三つ編みにしろよ」
「なるほど! 絽以、グッジョブ!」
「ヘヘ。俺が一緒だとあのオッサンにバレるから、先に帰るな」
「あ、うん、ありがとう」
「じゃ、城で」
「うん」

 絽以が行っちゃってからその服に着替え、サングラスを掛けた。
 ワンピースにたまたまハンカチが都合よく入っていたので、それを首に巻いて首輪を隠した。
 自分に嵌められている貞操帯が描かれた、Tシャツもどきを着るなんて妙な気分。
 てくてくと(本当はガツガツと)丘を降りてまた市場に来た。
 囲まれないととっても楽で、お店を冷やかす余裕もできた。

 絽以の言ってたお菓子屋を覗くと、干しバナナそっくりのお菓子が売っていたので思わず買っちゃった。
 細かく仕切られた箱に貼られた紙を指で破くクジがあったので、それも思わずやって見た。
「大当たり!」
「エッ!」
 かるめ焼きそっくりの菓子を一箱もらった。

 城内に戻る時、門番に止められた。
「通行証を見せろ」
「アタシデス」
「はう! これはこれは!」
「オカシ、イッパイアタッタノデ、ドウゾ」
 かるめ焼きを1個くれたらもう凄い喜びよう。
「一生食いません! 家宝にします」
「タベテヨ」
「あーー! お前、姫様に何もらってんだよ! 半分よこせ!」
「いやだぁ!」
「アウ、ケンカシナイデ。イッパイアルカラ」
「うおーーっ!」
 詰め所の人間全員に配った。





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