姫
バルコニー
§§ バルコニー §§
絽以が部屋を出て、しばらくしたら皆がゾロゾロ入って来た。
「あーー、だめだ、私見られないな、やっぱり」
お父さんが嫌そうな声を出す。
「あたしもです。じゅ〜り〜! だいじょうぶー?」
お母さんが入り口付近から大声を出す。
「ンー」
「おばさん、じゃなかったお后様、一応大丈夫です。支度出来ています」
「ああ、絽以君ほんとにありがとう」
この姿をお父さんやお母さんに晒すのは覚悟していたけど、ちょっとだけホッとした。
長老と侍従2人、それに大袈裟な写真機を抱えた男の人と、その助手らしき人がこっちまで入って来た。
「ホッホッホ、姫様すばらしいですな。ではでは、まずお写真から宜しいですかな?」
「姫様、失礼致します。ここでは少し暗いので、バルコニーで撮影させていただきます。おい」
カメラマンらしき男の人が挨拶し、助手に目配せする。
「はい」
えーーっ! 聞いてないよ!
有無を言わさず台車に載せられ、ゴトゴトとエレベーターホールまで運ばれた。
お父さんたちがいるのに、公務だから何も言えないのかな。
お父さんたちは付いてこない。
絽以は檻の真横に付き添ってくれていて、段差や方向転換の時に手を貸している。
おじさまの一件の時ほど悲壮な緊張感はないけど、晒し者になる恐怖は同じ。
いくら私が露出好きの変態に調教されちゃったからといっても、この怖さは変わらない。
えーと、調教されちゃって露出好きの変態になったんじゃなくて、元からの性癖が露呈したんだっけか。
もう、どうでもいいけど。
明るいバルコニーに出た。
ここは裸同然の姿で手足に鎖を着けて、お父さん達と帰還の挨拶をした場所だ。
ゴトゴトと押されて、バルコニー中央へ行く。
バルコニーは腰の高さまで石塀のある一般的な造りだけど、中央には半円形に少し飛び出た場所があり、そこだけは石塀が無く、床面まで細い鉄柵になっている。
私があの日あくびをかみ殺した顔を笑われたのも、そこから下に集まった人々が直接見えたからだ。
「もうおわかりと思いますが、この先の晒し台は、その昔獣王女を晒した場所ですじゃ。もう一つの大きな檻用なので、その檻にはちと広いがの。姫さえ良ければ何日か晒されてみてはいかがかの?」
あー! また始まったこのジジイ!
「ウー ウー!」
「えーと、嫌がってますけど」
絽以が通訳してくれる。
頼りになるなぁ。
「ホッ、ホッ、ホ。ロイ殿、お主も若いのぉ……」
長老は絽以の耳に口を近づけ、ごしょごしょと何かを囁く。
「うーん、そんなもんでしょうか?」
「ホッホッホ。手綱さばきがの、肝心なんじゃよ」
「なぁ、珠里」
―― ドキ! ――
「おまえ、本当にイヤなのか?」
―― ギクギク! ――
なんてこと言うのよぉ!
「ニルさんがさぁ、『全身の管理を他人任せにして、公然とエッチな気分に浸れるチャンスを、姫様がみすみす逃すとも思えませんが』って言った時、おまえ、否定しなかったろ」
ひーー!
そんなこと覚えてんなよぉー!
「俺はおまえがきもちいい方がいいと思うから、試しにあそこで晒されてみろよ。本当にイヤそうだったら、俺が絶対おまえのこと守ってやる。長老が何て言おうと俺がおまえを檻から出してやる。鍵も、全部俺が持ってるから。ホラ」
鍵束を私の目の前に垂らす。
本当だ。
鍵が絽以の手にあるということは、いくら長老がなし崩しに私にヘンなことさせようとしても、無視して止めにしてしまうことができる。
かなり安心して、成り行きに任せる気になった。
「ウー」
晒し台に据えられる前に、バルコニーの中央付近で、城をバックに写真撮影。
「写るまで5分ほどじっとしていてください」
旧式な写真フィルムで、撮影に時間がかかるらしい。
身動きできないんだから、別に平気。
位置を変えて5枚ほど撮影。
膣内のディルドーのおかげで気持ちはかなり高ぶっているけど、思ったほど興奮しなかった。
これなら平気だと思う。
絽以もスタッフ側に立って、冷静に見守ってくれていた。
「では、あちらの台へ移動していただき、下から撮影します」
助手の人と絽以でまた私の檻を台車に載せ、バルコニー中央から晒し台へ押して行く。
カメラマンの人はもう下へ行ってしまったようだ。
長老は特に何も言わずに見守っている。
晒し台の手前で台車が止まり、檻が台に載せられた。
晒し台はバルコニーの床面より30cmほど高くなっていて、それを囲う鉄柵もかなり細い物なので、バルコニーから落ちそうに感じてしまう。
檻のキャスターに木製の輪止めが噛まされてもまだ不安だ。
檻の真下にちゃんとバルコニーの床があるのが、自分の身体が邪魔になって見えづらいのだ。
鉄柵が見えなければ、本当に空中に浮いているようだ。
§§ バルコニー2 §§
晒されているというより落ちそうな感じが怖くて身を強ばらせていたら、背後でガチャンガチャンと音がして檻に鎖が繋がれた様子。
それが左右に伸び、視界ギリギリの所にある、バルコニーの鉄環に繋がれた。
やっと一安心。
と思ったら、晒し台の華奢な鉄柵が左右に開いて外されてしまった。
ひぃーーーーッ!!
恥ずかしいM字に股を開いたまま、檻以外遮るものもなく、空中に晒されてるーーッ!!
いや……っ
見ないで……
ああっ!
あんな所から写真を撮ってる。
ああっ!
人がどんどん集まってきた。
絽以ーーー!
絽以ーーーッ!!
もう出してよぅ!
もうやめるーーっ!
「どう? 本当に晒し者になった気分は。珠里が嫌なら、もう止めてもらうけど」
真後ろから絽以が話しかけてくる。
その絽以の見ている目の前で、お股からトロッ、トローーッと糸を引いて2筋ほど垂れた。
「やっぱり長老の言う通りか……」
「ンーー!! ンーー!!」
違う違う違う違う違う違う違うーーー!!
「否定されても、珠里のテレ隠しにしか思えないな」
「ンーー!! ンーー!! ンーー!! ンーー!!」
裏切り者ーーーッ!!
「エフエフッ! オフオフオフオフッ……! グスグス……」
「泣くなよ。撮影が終わったら、俺、後でずっと座ってるから。好きなだけ気持ち良くなりなよ」
それを聞いたとたん、たった今の絶望が全部快感に変わった。
突然の急激な心境の変化に、頭がパニックになった。
イヤなのにきもちいい!
んなバカな。
イヤなのにきもちいいのおぉ!!
「オーーーー……」
頭の中に、晒し者のまま、また何日も暮らす快感が渦巻き、この屋外の、陽光の下で、緩く緩くイキ始めた。
き、きもちいい…… ……!
絽以の後ろ盾を得て、自分に素直になり切る。
もう難しいことを考えるのを止めて、エッチな波に身を任せる。
しばらくしたら、撮影が終わったらしく、絽以が檻の真下に小皿を敷きに来た。
そのまま後でガチャガチャと椅子を置くような音がして、静かになった。
下に人がいっぱい集まって来たけど、もうボーッとしてどうでもいい。
皆が口々に何か言いながら、私のお股を指さしているような気がする。
お股を締めなきゃ……
えっちな汁が垂れるの、見られちゃう……
そう思えば思うほど、タラッ、タラッと、自分で垂れたのがわかるほどに溢れちゃう。
しばらくしたら、絽以がやって来て、口枷の栓を外し、長いジョウロのようなもので水を飲ませてくれた。
すぐに口枷の栓が戻され、またずっと続き。
陽が傾き、人々が集まっている場所か暗くなると、松明(たいまつ)が灯された。
それは幻想的な光景ではあったけど、私にとってはエッチな気分が長引くだけだった。
やがて時間が来たのか、人々が去り、目の前の柵が閉じられ、檻を留めている鎖が外され、檻の車止めが外されて、再び台車に載せられ、城内へ戻された。
「ンフーーッ」
ホッと一息。
「御苦労さん」
絽以が声を掛けてくれた。
そのまま男の侍従が一人付き、一緒に玉座のある広間まで戻って来た。
§§ 檻の暮らし再び §§
あの時と全く同じように、絨毯の上へ檻を据えられ、下に小皿が置かれた。
―― ゾクゾクゾク! ――
ホントに解放しないつもりだ。
絽以のまえでこんなにエッチな気分になり続けはイヤだー!
でもこの気持ち良さ、どうしたらいいんだろう。
絽以は私の目の表情や、お股の濡れ具合を観察するようにジロジロ見ながら、黙々と道具を準備し、侍従を帰したあと、私にウンチを出させ、流動食の食事をさせた。
じーーーっと私の瞳を見る。
恥ずかしくなって、私の方が目を逸らした。
絽以はマットレスと毛布のようなものを持って来て、私の正面に寝床を作ってゴロリと横になった。
「おやすみ」
マジですかーーーッ!!
ちょっと! 長老にダマされてるよ! 絽以ってば!
えい!
この!
今回は撮影用なんだからっ!
力いっぱい引っ張って、何とかならないのっ?!
ムキーーーッ!!
大義名分がどうあろうと、この檻の拘束力に、差なんて無い。
今の私は、あの時と全く同じなんだ。
自分の力は全て剥ぎ取られ、無力な姿を晒している。
違うのは、解放される約束があるかどうか。
いや、待ってよ……
これで絽以が長老に説得され続けたら、このまま一年…… なんて。
それでもすごいことに、転送疲れやら晒し者でイカされた疲れやらで、ガックリと寝てしまった。
§§ 説得 §§
起きてしばらくしたら、絽以も起きて来て、おしっこさせてくれ、朝ごはんを注入してくれた。
お腹が満たされ、ボーッとしていたら、長老が来た。
「ホッホッホ…… おはようございます、姫様。よくお休みになれましたかな?」
「ウー」
「それは良うございました。ところで姫様、この檻の儀式ですが、年に何度かお願いするわけにはいきますまいか」
「ウー! ウー!!」
目を剥いて否定する。
ああ、またこのジジイのなしくずしが始まった!
絶対に言いなりになるもんですか!
キッと睨んで、かぶりを振る。
もちろん、頭は固定されていて動かせないけど。
「そうですか…… 実はこの10年、出生率が年々低下して困っておりますのじゃ。是非ともこういった行事を定着させて、国民の心を満たしてやり、ひいては出生率の向上を図りたいと思っておったのじゃが」
「ウ……」
「やはり院で誰かが申した通り、口汚い言い方をすれば『王家は国民の奴隷』で、王家に尽くしてもらうことを一方的に享受したいという我々の甘えた気持ちが、まだまだ何処かに残っておりますかのぅ…… こんな年寄りからして、それではいかんのう……」
「ウ……」
そんなことはない。
私だって、今ではお父さんと同じ考えだ。
泥水すすっても国民の役に立ちたい。
別に王女としての教育を受けたわけでもない。
たった十数年の私の人生経験からしても、計算高く献身奉仕しようなんて、おこがましいことを思いつくわけはない。
多分、『血』だ。
DNAだ。
昔から続く王家の血が、私をその気にさせるんだ。
自分にできる精一杯を皆にしてあげて、皆から褒められたい、感謝されたい。
その想いが、王家をずっと支えて来たんだ。
長老の問いから随分間があいたが、震える喉で答えを口にする。
「ウー……」
「おお! そうですがそうですか! さすが姫様じゃ! では早速今日のお勤めを、お願い申し上げまする〜」
そのまま、また昨日のように絽以の手でガラガラとバルコニーに運ばれ、同じように晒し者にされた。
明るい日差しの中で、私だけこんな中に閉じ込められていると、どんどん惨めな気持ちになってくる。
その惨めな気持ちがじくじくと淫らな気持ちへ切り替わってゆく……
もう人々が集まり始めた。
命のやりとりをするような緊迫感が無い状況下で、晒される快感をただ享受し、遥か遠くから見上げる、おま○こへの刺さるような視線に暗い快感をトロトロと燃やし続ける。
緩く続く快感に、頭がボーーッとなる。
快感の中に居るくせに、少し慣れが出て、あれこれ余計なことを考え始めた。
アナムネには宗教らしい宗教が無い。
草花に宿る神様に感謝、とか、麦の神様に感謝、とか、自然に由来した神様に各々で感謝、あるいは小規模なサークル単位で感謝する程度だ。
記憶が戻ってからこっちへ来て色々わかったことだけど、その昔、檻に入れられた王女は、民衆の前に晒し者になった。
それを見て、民衆は姫を嘲り笑うのではなく、フェティッシュな心を満たす見世物として親しみを込めて楽しんだらしい。
そいうい人が、私の何代も前のおばあちゃんたちに当たるわけだ。
国民は王家の力に頼ることから脱しようとしていたけれど、おじさまの一件からこっち、そういったフェチ性を満足させるような公的なイベントが無くなって、確かに不満も増えたようだ。
だからなんとか私を説得して、妙なことやらせようとするんだろうなぁ。
多分、国民から公募した女の子じゃぁダメなんだろうなぁ……
王女だからこそ、イイんだろうなぁ……
自分じゃぁ良くわからないけど、私が力を持ってるっていうのもイイんだろうなぁ……
力を封印されて閉じ込められて見世物にされる。
私にとっては屈辱極まりない状態なんだけど、強い子が無力になる瞬間に萌える人がいるのは、もう充分わかっちゃったからなぁ……
こういった流れになるのも、連綿と続く王女の、そして私の運命なのかなぁ……
『実はこの10年、出生率が年々低下して困っておりますのじゃ。是非ともこういった行事を定着させて、国民の心を満たしてやり、ひいては出生率の向上を……』
そんな風に言われちゃ断れないよね。
お父さんから聞いた話だと、結局、王家は消滅させないことになったそうだ。
もちろん政治からは外されているが、年に数回の式典には出席することをお父さんは承諾したようだ。
国民みんなが親しめる存在を求めているなら、それを無下に否定できないそうだ。
その代り、お父さんは自分たちのために税金を使うのを極力控えたいから、私達は地球に住み、年数回の式典にだけ顔を出すことを条件にしたらしい。
自分の国に王様が住んでなくてもいいのかな、と思ったけど、別に普段顔を出すわけではないし、長いこと不在だったので、国民はそのへんにははあまりこだわらわないようだ。
もしこれが私を『王女』という存在にしておくためだけの、回りくどいフェチな人々の作戦だったらと思うとゾッとしたけど、もう考えないことにした。
年に何回か定期的にこの状態にさせられる……
いや、この状態にしてもらえる……
あうっ……
膣が勝手にイボイボの棒を強く握り締めた。