コロム挿入

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 ごっとん、と木の床が鳴って、老婆が私の後ろに跪いたのがわかった。
 正面の民衆の目が私の下腹部を凝視したことで、挿入の瞬間がもう来たのを知った。

 ぴとっ、とお尻の穴に冷たい塊が触れる。
 これがあの丸い先端。
 皮を剥いた中味の先は、さっきの目測ではピンポン玉くらいだった。

 不意に曲がるのを避けるためか、老婆の指が茎に沿えらたのがお尻の穴付近の感覚でわかる。
 ゆっくりとストレートに圧力が掛けられる。
 私は少しだけうんちする時のように力むと、老婆の指ごと先端を咥えた。
「ほ」
 老婆が奇妙な驚きの声を上げる。
「うーむ」
 今度は唸って、そして何を思ったか今入れたばかりの先端をちゅぽんと抜いた。
 いきなり排泄の気持ち良さに襲われる。
「ハァああんッ!! やっ! ちょ! 何なんですか?! ねえ! やりなおしなんてひどい!!」
 全く後ろを向けないので、手足を伸ばして拘束されたまま、顔を横にして虚空に向かって抗議する。
「ヒッヒッヒ。まあ、そう焦られますな、姫様。どうせなら楽な方が良いじゃろ?」
「そ、そりゃまぁ、そうですけど……」
「ん、今ので粘液が馴染んだようじゃ。このあとはもう抜き取りはせなんだが、一旦止めることはありますぞ?」
「え、ええ…… 楽ならそれがいいです。 お任せします」
「ヒッヒッヒ。もとより」

 そう言うと老婆は全く身構える動作もなく、さっき飲み込んだ1個目の球をいきなりちゅぷっと押し込んだ。
「んあっ!! だからぁっ! い、いきなりはひどいィ!」
「楽じゃったろ?」
「うー。まあ、はい」
「次、入れますぞ」
「はい……」
 クロイッツェルって人の説明にあった。
 コブの間隔はおよそ人の指の長さ半分……だから、3cmくらい?
 括約筋は肛門から少し奥にあるから、1個目のコブが落ち着く所まで中へ引き込まれると、肛門にはもう次のコブが触れるはず。
 そう考えてる間にコロム先端は僅かに収まりどころを求めて進み、括約筋に少し掛かっていた先端のコブが完全に直腸内に入った。
 すると案の定、お尻の入り口が面で圧迫されるような違和感があり、2個目のコブが密着したのだとわかった。

 さっき見た時、コブは順々に大きくなってた。
 1個目が楽だったからって、このあと何個目まで楽かなんてわからない。

 先端を呑み込み、それに続く茎を肛門が咥えさせらえた状態で、いよいよ次のコブが押し込まれる。
 お尻の穴の抵抗だけで、明らかに1個目よりかなり大きいというのがわかる。
 正面に向いたまま、恥ずかしい姿を皆に晒したまま、この大の字に立った姿勢で、排泄のための筋肉に力をいれるのがどんだけ恥ずかしいかわかる?
 正面向いて、足を開いて、バンザイして、そして立ったままうんちしてるのと同じ。
 信じられない。
 しかも浣腸の圧力で出そうなのを、穴を緩めて脱力するのではなく、自力排泄の『いきむ』神経回路を作動させないといけない。
「ン…… うっ……」
 微かに声が漏れちゃう。
 すると一瞬緩んだすきを突いて老婆が力を入れ、2個目のコブが一気に括約筋を乗り越えた。
「アッ!!」
 ガシャーンと手足をよじる。
 き、きもちいい……
 こんな2個目でこんな気分にさせられてたら、あと8個どうすんのよ、私。

 しかしこの処刑の現実は、そんな快感あと何個分とかいう単純計算では済まないことを次の瞬間に思い知った。

「ヒッヒッヒ。3個目参りますぞ。心されよ、姫様」
「え?」
 たった今押し込まれた、天然のローションを纏ったコロムの2個目のコブがじわっと括約筋の奥へと繰り込まれ、私のお尻の穴には3個目のコブが密着した。
 コブとコブの間の茎を咥えさせられてる肛門が、私の脳に明らかに限界を超えたサイズであることを伝えている。
 だって、お尻に密着する感じが、球形の凸面を感じさせない、いきなり壁が存在するような感覚なんだもん。
「ヒッヒッヒ。姫様程の方なら、ロッドシールの責めや、あるいは何かで既にもう感覚だけはご存知かも知れませぬ。さあ、心されよ。コロムの心を受け容れよ…… 受け容れよ……」
 急に老婆の言葉が芝居がかってきた。
 わかってるよぅ。
 無の心にして、すこしいきむ気で。
 そうすると括約筋が緩んで、太いものでも入るんだ。

 ちょっとは経験者の余裕も見せてやんないとね。
 四肢を四方に引っ張り伸ばされた姿で、チラッと正面の民衆を見て、それからその上空を見て、フーーッと息を吐いた。
 その動作を私の覚悟と受け取ったのか、老婆は少しずつ押す力を増して行く。

 無心……

 無心……

 ……って! ちょっと待って! なんかヘン!!

 ああっ! 最初に押し込まれた、このコロムの先端が直腸の奥に当たってる!

 3cm程の球形のコブに3cmの茎、そして3cm半ほどのコブに更にまた3cm程の茎、これでもう12cmを越えてる。
 先端が、直腸からS字結腸へと曲がって狭くなってる所を通過しようとしてるんだ!

 普段は閉じたようになってる所をコロムの先端で犯される!

「ヒッヒッヒ。当たりますじゃろ? まぁ、お任せくだされ」
 この老婆、私のお尻の中がいまどういう状態なのか、はっきりわかってるんだ!

 これ、ロッドシールの木製アナルディルドーできっとここ位は越えたことあるんだと思うけど、完全に通過点のつもりで侵入されるのと、そこが行き止まりのつもりで侵入されるのとでは、全然違った激しい被虐感を伴う犯され感がある。

「ほれほれ、奥にばかり気を取られておいででは困りますぞ」
「はぐッ!!」
 そうだった。
 肛門そのものも、たった今すごいサイズのコブに犯される直前なんだった。

 いや!
 いやああ!!
 犯される場所が同時に2箇所なんて、ありえない!!

 大パニックの予兆に冷や汗を流していると、老婆の指は容赦なく次の巨大なコロムのコブを押し込んでくる。
「ふーッ! ふーーッ!!」
 腸の奥を開く技なんて持ってないので、腸奥にあるコロムの先端の行方のことはもう考えないことにして、今は次のコブを肛門で呑み込むことだけに集中しよう。

「押しなされ。押しなされ」
『押す』って変だと思うかもしれないが、この淡々と言う老婆の掛け声は、実は本当に大切なことを告げている。
「ン”ーーーーーーッ!!」
 喉の奥で勝手に濁音の混ざる息み声をあげ、今まで呑み込んだ2個すら排泄するつもりで肛門に力を入れる。
 この行為のことを『押しなされ』と言っているのだ。
 その腹圧を感じ取った老婆は、それに逆らって、この瞬間とばかりに次のコブを押し込んだ。

「アーーーーッ!!!」
 お尻の穴の一番狭い部分を、チリチリ摺りながら侵入してくる摩擦が、ミクロン単位ではっきりわかる。

 現在進行形でその侵入を感じ取っていると、次の瞬間、お尻の奥の奥を太い何かでズルリと犯された。
「キャアアアアアア!!!」
 ガシャーーーンと鎖を鳴らして身をよじり、絶叫した。
 入り口と奥を同時に犯されるパニックに、現状を表現する言葉すら思いつかない。
 惨事の二回重ね。
 衝突事故に遭いフラフラの所へもう一台に突っ込まれるようなもの。

 永遠とも思える拡大緊張の超刺激は、実際には僅か1,2秒で収束へと向かい、極太コロムコブの挿入感はあっという間に落ち着き、そして腸奥にある先端がS字結腸へ侵入した感覚もじわりと元の状態へと収まった。
「エグウゥゥゥ……」
 勝手に涙が出た。
 ハッと前を見ると、集まった民衆が何とも言えない困ったような顔で私を見つめていた。

 私のたった今の腸の状態なんて誰にも理解されないと思うから、その切ない挿入感を想像したり共感したりしてこんな顔をしているのではない。
 単純に高貴な存在が恥辱にまみれるのが興奮を誘うのか、それとも私の悲鳴や仕草がエロいのか。
 嬉しいような惨めなような複雑な気分。
 だがこれで民衆の信頼が得られれば安いものだ。
 まだまだ私は正気だ。
 これならきっと大丈夫。


「ヒッヒッヒ、次、参りますぞ」
 ゴトリとでも音のしそうなほど重くなった肛門を下腹部に感じ、まだ3個目だということを思い出した。
 あと7個?
 気を失いそうだ。

「少しお慣れになったようじゃ。あと3〜4個はそのままいけそうじゃの」
「ハァハァ…… ええっ?」
「正面をご覧なされ。 皆に腹の奥の奥まで見せ、全てを晒して罪を購う、本来の処刑の気持ちをお持ちなされ」
「ああ……」
 老婆はこの刑の意義を聞かされて理解しているのか、今現在のお尻のことにだけ頭が囚われ始めた私を諌め、この刑で弱い自分、素直な自分、害を為す気の無い自分を見てもらおうと意図した私の気持ちをアピールしろと言う。
 手足を微塵も縮められない、四肢伸展の木枠の処刑台に架され、手足を鎖に繋がれて惨めな私。
 晒し刑としたってこれでもう充分なのに、排泄するところを見られ、そして今度は肛門から異物を挿入されて苦しむところを見られている。
 アピールすべきは、苦悶と無力感、か。

「もっと無力に、脱力するのじゃ」
「はい……」
 死を受け入れる如く、自分の体から魂が抜けたように力を抜き、やや苦悶の表情をのこしたまま、濁った瞳で正面の虚空を見つめる。
 その表情をじっと見守る民衆たち。

「次、参りますぞ」
 再度宣言して、老婆が次のコブを押し込もうとする。
 反射的に少し息んで肛門を開くと、拡張の慣れが生じたのか、さっきより楽にちゅぷんと飲み込んだ。
 が、しかし。
「うあああああっ!!」
 さっきより更に抵抗ある感じで腸の奥が開いた感じがして、またS字手前のくびれをコブが乗り越えた感覚がした。
 当たり前だ。
 肛門のコブより2個分遅れて、腸の曲がりを乗り越えるコブも順番に大きくなるのだから。

「ハァ! ハァ! しんじゃう……」
「ヒッヒッヒ。この刑はの、多分、死ぬほうが楽じゃ」
「ひいいい!!」
 腸の奥でこのコロムという植物のコブを呑み込まされているたった今の当事者の私には、老婆の煽り言葉は千倍の実感として恐怖を呼び起こす。

「次、参りますぞ」
「ひいいいいいいいい!!」
 頭の芯がパニックモードから降りてこない。

 さっき3個目のサイズより大きいはずの4個目を、慣れによってやや楽に押し込まれたが、この5個目も肛門入口の触感ではそのサイズの増加をさほど感じさせない。
 しかしコブを押し込む老婆の指の力はさっきより全然強い。
「うぐぐぐぐぐ」
 喉が勝手に鳴っちゃうよぅ!
 また反射的に肛門を開くと、ズルッとコブが入ってきた。
 その瞬間!!

「きゃああああああああああ!!!」
 まただ!
 今度は何?

「あ…… あ…… あ……」

 直腸の突きあたりなんかより、もっと奥だ!

 お腹の下の角(かど)、コロムの先端が、S字結腸が下行結腸に繋がってる曲がりの部分を超えようとしてる!!

 肛門から挿入された植物の茎が、直腸から曲がってS字結腸、さらに曲がって縦になった大腸へ侵入しようとしてる!!

 一瞬でそこまで理解したが、理解したからといってコブが乗り越える勢いを阻止できるわけでもなく、私はコロムの先端で縦の大腸すなわち下行結腸の入り口まで犯されてしまった。

「あ”−−−−−−−ッ!!」
 城の広場に私の惨めな声がこだまする。

「入ってる! 腸の奥に入ってるよう!」
「ヒッヒッヒ。ようやっとそこまで繋がり申したか。後はの、割と楽じゃ」
「ハァ…… ハァ…… ほんとですか……?」
「ヒッヒッヒ。姫様ではのうて、わしがじゃ」
「ひ! いやあああああああ!!!」
「先端がそこまで抜けきらんと、後を強引に押せば腸が裂けるからの。じゃがそこまで通ったのがわかれば、あとは入り口でさえ呑み込めれば、その奥は順番に通るからの。狭いところも必ず通る。食べ物を一気に飲み込んで、胃に落ちるまでの食道の苦しみに似た苦痛が続くがの。ひっひっひ」

「ひいいいいいいいいいいッ!! ヒイッ!ヒイッ!ヒイッ!ヒイッ!」

 なんてコト言うんだよーー!!
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