テトラポッド

| | 小説TOP | 名無し小説TOP

  アクリル  



 アクリル


「小屋に戻るよ、まなみちゃん」
 なんであたしのことわざわざ名指しで声掛けるの?って思ったら、よしおさんは残り、折りたたみ椅子を出してりょうこのバケツのそばに座った。
 まなぶさんも、近くに置いてあった箱からランタンや小型のガスコンロなどを取り出し、お湯などを沸かしはじめ、ひろみのバケツのそばに戻った。
 小屋に戻るのは、けんじさんとあたしだけ。
 まなぶさんとよしおさんは、二人でここでこれからキャンプの真似事でもして過ごすのだろうか。
 ひろみもりょうこも、埋めるだけ埋めて完全に放置ってわけでもなさそうなので、少しだけ安心した。

 立ち去りながら振り返ると、よしおさんがバケツを持ち上げ、リモコンのようなものを操作しているのが見えた。
 うわあぁ、あれって、りょうこは…… はふっ……
 そのまま見続けているとあたしもオカシクなりそうだったので、もう振り返るのをやめた。

 まるで恋人のようにけんじさんと並んで歩く。
 夜風が興奮で火照って体を少しだけ冷ましてくれたが、手も使わずにイッたあたしは、まだまだ淫らな夢心地だった。
「首輪、イイだろ?」
「……」

『首輪嵌められて楽しい人間がいますかっ』
『んー、キミ。』

 あの会話がよみがえる。

「はい……」
 1テンポ遅れて返事をした。

 小屋に戻ると、まだりょうこのウンチ臭かった。
 けんじさんは消臭スプレーのようなものをまいた。
 臭いはかなり消えたが、喉がいがらっぽくなってむせた。
「あいつらが手伝えなくなったからね、自分で着てもらってもいいかな?」
 さっき取り出した、あたし用のラバースーツを渡された。
「う……」
 あたしを拉致している張本人が、人手が足りないと言っているのに、その状況を利用して逃げ出すことが出来ない。
 甘美な快楽を与えてくれるはずの真っ黒な人型の袋を前にして、それを捨てるなんてできない。
 あたしは快感の予感に朦朧となりながら、ラバースーツのジッパーを下ろした。

「そういえばお漏らししてたよな」
 カッと真っ赤になる。
「拭いてあげるよ」
「そっ、そんな……! 自分で……」
 抗いも虚しく水着を脱がされ、大判の濡れタオルで体の隅々まで拭き上げられた。

 いよいよあたしがらラバーの中に閉じこめられる瞬間がやってきた。

 けんじさんがあたしの下の毛にムースを吹き掛けた。
「ひやっ!」
 冷たい刺激に腰を引いた。
 2,3分して濡れタオルを当てられて拭き上げられると、ヘアは全部脱毛されツルツルになってしまった。
 あらためて剥き出しにされると、自分のソコが色も形も本当に幼女のような未熟なオマソコだって思えて、死ぬほど恥ずかしかった。

「あたし…… あの……その……全然経験……なくて、だからりょうこみたいのは……お尻とか」
「心配しなくていいよ。僕はそっちには興味ないんだ。なんたって『光速クラブ』だからね? でもまなみちゃんが入れたいって言えば入れてあげるよ。おっと、でもお尻は排便パイプを入れる関係上、異物は入るからね。あと尿道もか」
「はぁ……」
 生返事したものの、正直けんじさんが何を言っているのかわからなった。
 ただ無理矢理犯されることはないようなので少し安心した。

 突然、けんじさんが注射器を出した。
「ひいっ! クスリはいやぁ!」
「大丈夫だよ、ただの麻酔薬だから」
「ああ、そ、そうですか。 ……ちょ、麻酔?」
「うん、乳首とクリトリスにね」
「い、いやーーーーッ! なんで? 何する気ですかっ?」
「これだよ、ピアス」
「いやあ!! さっき『そっちには興味ない』って言ったばかりじゃないですか!」
「うん、セックスそのものにはあまり興味なくても拘束は好きなんだ。乳首やクリトリスがピアスで拘束されて、無理矢理勃起させられてるのってイイよね」
「そ、そんなひどいことが大好きなんて信じらんない!」
「あれ?まなみちゃんはちゃんと理解してたじゃない?『大好き』がフェチだって。僕フェチだもん」
「あああああ」

「ちょっとチクッとするよ?」
「ひ! ひ! 怖い!」
「大丈夫だよ、僕、妙に上手いんだ」
「ウーーーーーッ!!」
 全裸でつっ立ったまま左右の乳首とクリトリスに麻酔を打たれてしまった。
 自慢する通り、本当に微かな痛みしかなかったが、薬液が染み込むヒリヒリ感が不快だった。
 乳首もクリトリスも、蝋死体のように白くなって不気味だ。

 けんじさんは太い針を取り出すと無造作に3カ所それぞれを貫通させた。
「キャーーーッ!!」
「痛くないでしょ?」
 けんじさんは通した針を抜かずに全部そのままにした。
 あたしの大事なところ3カ所に太い針が突き通ってるーー!
「ひいいい!」
「きみに付けるピアスはこれね。円盤をピアスが貫いていて、乳首はもちろん、クリトリスもこれで勃起しっぱなしに固定できるよ」
「いやあああ!」
 叫び声も空しく3つのディスク型ピアスを敏感な突起の根元に取り付られてしまった。

 クリトリスなんて割れ目に隠れることすらできなくなってしまった。

 ただ埋められるのかと思ったらいきなり肉体改造されてしまった。
 もう二度と元の体には戻れないんだ、あたし。

 やっとラバースーツだ。
 自分自身の手でラバースーツを広げると、その奥の暗闇に自分の人生が吸い込まれてしまったような気分になった。
 スプレー状のベビーパウダーのようなものを掛けながら足を差し入れると、足首が多少きついものの、ズブッとつま先まで入った。
 反対の足も通し、ラバーの異質な触感に戸惑いながらギチュギチュと腰まで引き上げてゆく。

 うわぁ…… たいへんだ……

「あの…… これ、少しきついようなんですけど……」
「ごめんねー、オーダーメイドじゃないから、多少サイズの誤差があるんだよ。もうそれしか残ってないんだ。我慢して?」
「そんな……」

 全身キツキツなんて、そのうち鬱血して、どんどん辛くなって、最後には狂っちゃうよ、きっと。

 足先の部分はそうでもないけど、ふくらはぎ、ふともも、お尻の部分までパツパツのピチピチだ。
 まだ開いたままの前のジッパーから土手のお肉がいやらしくこんもりとはみ出している。
 その中心には、ディスクピアスを嵌められてもう二度と引っ込むことのなくなったクリトリスが、まだ麻酔で白くなったままぷっつりと突き出て輝いている。

「さぁ、手を通して」
 手にスプレーをかけられ、けんじさんに促されて右手を槍のようにすぼめ、ラバースーツの袖に入れる。
 ギチギチと通してゆくとついに広い所へ出た。
 が、そこは閉鎖された三角錐の空間だった。
 先端にはリングが付いていて自由自在に拘束できるようになっている。
 右手が封じられただけで、もう反対の袖に左手を通す作業ができない。
 けんじさんに手伝ってもらって、左手も通した。
 腕は動かせるのに、自分のことがもう自分ではどうにもできない妙な気分。

 もうこの時点で充分絶体絶命なほど自由を奪われているのに、手足が動くだけまだのんきな気分でいた。

「まなみちゃんが一生楽しめるように、体調を管理する装置を入れるよ」
「管理って?」
「まなみちゃんだけ、ひろみちゃんやりょうこちゃんと違うんだ。気づいてたろ?」
 たしかに、あたし、ピアスまでされちゃった……
「もともとこういうのが好きな子じゃないと、僕のやりたいことには耐えられないからね。真夜中に見た出来事を、危険だと感じつつも翌朝バケツの下を確かめに来ずにいられないような子じゃないと、ね?」
 あたしはラバースーツの下で全身総毛立った。
 あのときから、あたしの運命って決まってたんだ……

「そうだ…… あの時の女の人は……?」
「解放したよ、もちろん。僕たちは犯罪を犯したいんじゃない。本当に拘束好きの子を見つけたいのと、あんまりその気の無い子でもエッチな気分を盛り上げて拘束の良さを教えたいんだ。でも最初の子は全くダメだったなぁ…… だからすぐ掘り出したのさ」
「あんまりその気の無い子って…… ひろみ達ですか……?」
「そうそう。そして、『本当に拘束好きの子』には、想像を絶する無限の拘束を、ね?」
 ドクンと心臓が高鳴った。

「あた……し……?」

「そうだよ」
「ああ」
 『想像を絶する無限の拘束』という言葉にめまいを感じ、そしてオマソコがきゅんと締まった。

 けんじさんがあたしの背後に回る。
「ちょっとチクッとするよ」
 またピアス?
「いやああ!」
 でもチクッとしたのはお尻の穴だった。
 じんじんと何かが穴の脇に注射されてる……

「効くまでに前をやっちゃおう」
 けんじさんが前に回り、りょうこの時に見たような、ゴムの土台にローターがいくつか付いた物を見せた。
 でも中心に、明らかに異質な棒が突き出てる。
「これがおしっこの穴に入って、中で先端が膨らむんだ。そうするともう抜けなくなるんだよ」
「おしっこの穴って…… いやっ!」
「きつかったら僕につかまっていいから。足をもう少し開いて」
「うう……」
 恐ろしくて死にそうなのに、言われるままに足を開いちゃう。

 透明ゴムの土台ごとその先端を近づけられ、ひきつりそうな逆流感とともにおしっこ穴の奥まで差し込まれてしまった。
 同時にクリトリス近くに2つ、尿道口近くに一つ、オマソコ穴の近くに1つと、合計4こものローターが密着した。
 クリトリスはまだ感覚が無く、全体が押し潰されているような感じだけがした。
 土台の付け根に注射器で水のようなものを注射された。
「これで膀胱内で先端が膨らんで抜けなくなったよ」
 実感は無いけどその内容の恐ろしさに腰が抜けそうだった。

 突然、妙な感覚に襲われた。
 お尻が熱い!
 ヌーッと何かが押し出され、スゴク気持ちよくなった。
 同時に臭くなった。
「おっと!」
 けんじさんがあたしのお尻にビニール袋をあてがう。
 やがてボトリと音がして、体が軽くなった。
「結構溜まってたんだね。肛門が緩んだだけで、軽い腹圧で全部出たみたいだね」
 ビニール袋に入っていたのはあたしのウンチだった。
「ひいいいやああああ! なんで? なんでっ?」
 脱糞の恥ずかしさで真っ赤になりながら叫んだ。

「これはまなみちゃんに限らずどんな人間でも我慢できないから安心して。肛門の括約筋に弛緩薬を打ったんだ。こうすれば痛くなく器具が入るから。で、弛緩薬が切れれば今度は抜こうにも抜けないんだ。麻酔じゃないから
 知覚は残ってるんで、器具を入れる時すごくきもちいいよ」
 お尻に何かあてがわれ、恐怖のために逃げるように腰が突き出る。
 トロンとなにかが入り、ズルンと押し込まれた。
 気持ちよくウンチだした瞬間の快楽がバリバリと全身に広がる。
「ああん!」
 すっごいきもちいい。
 でも肛門が開いたままのような気がする。
「極太ってわけじゃないけど、最低これくらいの径が無いとウンチ流れないからね」
 言っている意味が良くわからない。

 股下でチューブや電線が始末され、お尻の上にあるジッパーを前方向に閉じられて行く。
 ジッパーの開いてる今でもすでにきついのに、左右合わされ、キッチリ閉じられ、ラバースーツが本来の圧力に戻ってゆく。
 股下のチューブの部分で一度止まり、金具が追加され、そこから更に前に閉じられてゆく。
 オマソコのドテのあたりが閉じられると、全身に電気が走った。
「あああッ!?」
 ものすごい刺激。
 クリトリスの麻酔が切れて、感覚が戻ったようだ。
 同時にジンジンと肉を貫かれた痛みも戻ってきた。
 乳首もジンジン痛くなってきた。
「もう麻酔が切れたかな? 痛み止め飲んで」
 カプセルを飲まされた。

 やがてお腹を通り、胸を圧迫しながら、ギッチリ首までジッパーが閉じられると、ただ全身を包まれているだけなのに
1秒たりとも平常心でいられない、圧迫の快感に襲われはじめた。

「どう?」
「はふっ…… ああ…… あの…… キツキツが……その…… きもちいい……です。 ううーーーっ!!」
 全身の圧迫がすごい。
 ディスク状のピアスで勃起させられたままのクリトリスと乳首がカチカチに尖ってきたのがわかる。

 ひろみやりょうこも、こんな超高圧のラバーのなかに押し込まれてたのかなぁ……
 いやちがうよ。
 ひろみはわからないけど、りょうこはここまできつくなさそうだった。

 こんな…… 身じろぎするだけで肉が絞られそうな圧力なんて…… あたしだけ……
 拘束放置なんかバイブでも動かされなければ、ただじっとしてるのと変わらないなんて一瞬思えたけど、とんでもない誤りだった。
 ずっとずっと拘束の圧力に火あぶりにされ続けて悶えなければならないんだ。
 解放されるまで、ずっと……

「すごいねまなみちゃんは。これを着せられただけでそんなに感じちゃうんだ」
「はふっ、だって、クリとか、乳首とか、こすれて……」
「そんな風に自分でギシギシ動いていたら、ずっと感じっぱなしになっちゃうよ?」
「はううぅ、だああぁってぇぇ…… ラバーが…… きつくて……」
「はいはい、じゃ、動けないように縛っちゃおうね」
「ひいいい! そんな!」
 流れから言って縛られるのは当然のことなんだけど、この状態のままさらに自由を奪われたらって思うと、思わず叫んでしまう。

 けんじさんはラバーの拘束ベルトの塊を持ってきて、ほぐしながらあたしの首から胸へと合わせてていった。
 それを背中やサイドの留め金で絞って留める。
 首と胸を縛ると、手を背中に回してベルトで留めた。
 よくSMとかで見る縛り方を、縄ではなくゴムベルトでやっている感じ。
 上半身をギチギチに縛ったら、今度は下半身。
 膝の上下と足首を比較的緩く縛られたと思ったら、体を抱えて寝かされ、足は背中方向へ折り曲げられ、足首は手首近くで留められた。
「あのっ……! あたしだけ、こんなっ……? 埋め方違うんですかっ……?」
「うん。そろそろ種明かししようかな。でないと『過程を楽しむ』ことができなくなっちゃうからね」
「えっ?」
 すごくひどいことされそうな予感におののいた。

「まなみちゃんはね、あの2人とは違って、もう一生そのままなんだ」
「は?」

 『犯罪はしない』って言ったくせに、いきなり何でそんなこと言うの?
「ここにアクリルの円筒ケースがあるんだけど、きみはギチギチに拘束されたまま、このケースで首までアクリル漬けにされるんだ。
 そして、あの2人の後ろにあるテトラポッドの中に入れられるのさ」
「そんな……」
 唇が震えてそれ以上聞き返せなかった。

「あの場所のテトラポッド1基が特製で、上向きに立っている足の中に空間が作ってあるんだ。そこにきみを納めて、ずっとそのまま
 飼うんだよ。そのために排便・排尿のチューブを付けたろ? 足の一部が機械室になってて、ちゃんと医療用の流動食や水を口へ
 流し込むしかけがあるんだ」
「……」
 何かの夢物語か、全く他人の話を聞いているようだった。

「テトラポッドに入れられて…… 飼われる…… って……」
「拘束好きのきみにはたまらないと思うけど?」
 突然、カーッと股間が熱くなってきた。
「うーーーーーっ!!」
「ほら、感じてる」
「はふっ! んんん! そんな! 感じてません! ああん!」
「きみみたいな子は出口の見える拘束なんかじゃ満足しないのさ。僕は知ってるよ。もうここで一生が終わるって宣言されると、
 狂ったように感じることが出来るんだ」
 けんじさん頭おかしい、と思いながら、この抑えられない衝動はなんなの?

 手足を折りたたまれて転がされたまま、ラバーの圧力に感じて身もだえしているのに、さらに生涯拘束宣言されて股間からどんどんお汁が出てラバーに溜まる。
「うーーーっ!」
「お、イキそう? 自分の口で復唱するとイケるよ、きっと」
「いやぁ! ……う……」

 信じられない。
 自分で自虐的なセリフを練ってる…… あたし……
 もう、快感に負けそう……

「…… あたしは…… 首まで…… アクリル漬けにされて…… 一生…… テトラポッドの中で…… 飼われる…… んですね……?」
「うん」

「うああぁうぅぅーーーーーーウーーーッ!!!」

 股の中心からゾクゾクする温かいモノがお腹の中心に向かって昇ってくる感じがして、寒い時のオシッコみたいに全身が小刻みに震えた。
 頭の中に明るい光球が現れて、一瞬意識が遠のいた。

 信じられない! ホントにイッた! きもちいいいいいよううう!


「そのまま余韻に浸ってなよ。さっそく準備するから」
 けんじさんは直径40cmくらいの透明アクリル製の円盤に透明アクリルの棒が生えたものを持ってきた。
 あたしはイッたあと涙が止まらなかった。
「はひっ…… ハヒッ…… グズ、グスッ……」
 周期的に股の辺りがきゅーんと締まる感じがして、横倒しにされていても、全身を締め付ける圧力がすごくて、ディスクピアスとラバーの狭間で汗や愛液を潤滑剤にしてヌチヌチ潰されてるクリや乳首を意識しちゃって、たまらなくきつくて、たまらなくきもちいい空間で、感情の昂ぶりを抑えられなくなっていた。

 土台が準備できるとけんじさんはあたしを抱え上げ、その土台に生えているアクリル棒に固定した。
 あたしは膝を一番下にして手足を背中で折りたたまれたまま、アクリルの土台に立てられた。
 けんじさんが美容院で髪の毛をはらうような小さなほうきを持ってきて、あたしの首から下の砂やほこりを払い、ラバースーツにスプレーをかけた。

「透明度が高くて、硬化収縮がほぼゼロで、硬化熱も少ない特殊アクリルだから、ラバースーツの表面まで良く見えるはずだよ。このスプレーでラバーがすごくテカるから、まなみちゃんの締め付けられた体のラインが強調されるよ」
「ハフ…… ハヒ……」

 けんじさんが土台ごとあたしを抱えて、アクリルの円筒の中へ入れた。
 股からでるチューブ類は背中方向へまとめられた。

 今度は透明アクリル円盤の中央に穴の明いたものを持ってきて、目の前で2つに分けた。
 半分はただの板で、もう半分にはチューブを繋ぐ口金がいくつも付いていた。
 けんじさんはただの板の方をあたしの首の前に、口金付きの方をあたしの首の後ろに嵌めた。
 そして細かく位置合わせをすると、前半分を持ち上げ、アクリル円筒の上の縁にボンドにようなものを塗って戻した。
「ハヒヒィィン……」
 ボンドが使われたことで、ますます本当に一生固められることが現実に感じられ、同時にまた絶望の快感に襲われて、情けない顔で涙を流すしかできなかった。

 首の後ろの蓋が外され、チューブを嵌める音がする。
 やがてまたボンド臭くなって後ろがバタンと閉じられた。
 ヒゲの海賊が樽に詰められたおもちゃみたいに、あるいは西太后の映画のように、体をアクリル筒に密閉され、首だけ出たあたし。
 このコンパクトな筒があたしの全存在なんだ。
 けんじさんはただ生きてるだけのあたしを見て面白いのだろうか。
 
 こうしている間も、全身がギチュギチュときつくて、動けないからだをもぞつかせながら、なんとか治まらないかともがく。
「ハフッ…… ハフッ…… ハァ…… ハァ……」
「うふふふ、イイなぁ……」
 もがくあたしを見て喜ぶけんじさん。
 そうか、あたし、ただ生かされて、アクリルの中で飼育されるだけじゃないんだ。
 その間中ずっとずっと、熱い鉄板の上で踊らされる拷問のように、落ち着く暇もなく悶え続けるんだ。

「…… 出して…… やっぱり出してください……! こんなの耐えられない!」
 このまま固められてしまって、本当に抜け出せなくなるのが恐ろしくなって、急に懇願する気になった。
「あは、ちょっときつさを強く感じるサイクルに入っちゃったかな? まなみちゃん、少し気を失うといいよ。つまらない疑問や
 日常への執着なんて、全部快感が押し流してくれるから」

「え?」

 けんじさんがリモコンを操作した。
 振動したのはクリトリスより少し膣寄り、尿道に差し込まれたチューブの付け根にあるバイブだ。
「アーーーーッ!!」

 まだ傷になっているのでクリトリス直接は赦してもらえたみたいだけど、尿道の振動で小刻みにオシッコしてるようなヘンな感じが続き、ゾクゾクと快感が全身に拡がった。
 直接の性器刺激なしでイクことができたあたしでも、快感ポイントの直接攻撃は、やはり何十倍も効く。
「ううーーーーーっ! くっ!」
 あっという間に昇り詰め、1回イッた。

 刺激がますます敏感に感じるようになる。
 再びパーーーッと明るい波が押し寄せて、まだ絡められてない筒の中で全身をガクガク揺すってまたイッた。
 ううーーーッ!!
 止まんない!!

 イッた波が引く間もなく次の波が来て、だんだん呼吸がおかしくなってきた。
「ハヒッ!! ハヒィィィ!!」
 間もなくして、けんじさんの思惑通り、頭に明るい光をいっぱい詰め込んだまま、あたしは気を失った。

「ホフ?」
 気づくと様子がずいぶん変わっていた。
 まず、ものすごく臭かった。
 すさまじいボンドの臭い。
 そして、まるで戦闘機のパイロットのような、口と鼻を覆うマスクを嵌められていた。
 全身がぽかぽかと温かく、体重が軽くなったように感じる。
 ギョッとして辺りを見回すと、場所はさっきと変わっていなくて、あたしが入れられているアクリルの筒が、万力のような形をした鉄枠のようなもので押さえられていた。

「お?気がついた? 過程萌えといっていた僕がなんで失神するほどイカせたままにしたかわかる?」
「ムフムフウ……」
「おっともうマスクはいらないな」
 口のマスクを外してくれた。
「なぜ…… ですか……?」
「気持ちよくイッてるあいだいにもう後戻りできないところまで来ちゃった、と知った時のきみの顔が見たかったからさ」
「え?」
「フフ、もうアクリル注ぎ終わってるんだ。もっとも透明度が高いので、固まるまでに丸一日かかるけどね」
 全身の毛がまた、ラバーの下で総毛立った。

「い、いやーーーーーーッ!! んんーーーーーッッ!!」

 体を包む温かな流体が、そのまま極厚の脱げない拘束衣になるんだということを実感し、絶望の悲鳴を上げながら、それでもはしたなくまたイッた。

 ああ……
 とうとうアクリル漬けにされちゃった。
 まだ固まっていないので少しは動けるけど、呼吸する時の胸周りの抵抗がだんだん強くなる。
 固まる直前にちゃんと呼吸するスペースを確保していないと、マジで死んじゃうよ。

 言葉で脅されたり、言葉で煽られたりするのと、現実にその中に入れられてしまうのは全然違う。
 体に掛かる液状のアクリルの重さによる苦しさや、ジッパーの継ぎ目から染みこむアクリル液が皮膚にチリチリと刺激を与える痛痒さなんかは、本当にやられてみないとわからない。

 自分が生首だけになった惨めさ。
 首以下の感覚がしだいにどうでもよくなってくる恐怖。
 でもそれは運動系の感覚であって、手足のジンジンする痺れや、どうにも逃れられない絶望的なきつさは、1秒も休むまもなくあたしを苦しめる。
 唯一の救いはそれらを快感に転化することだけ……

「あとは固まるのを待つだけだから、設置場所に移動しようか」
 砂の上を移動できるキャタピラ付きの電動台車に乗せられ、小屋から出された。
 けんじさんが周囲をはばからずあたしのことを引っ張り出したので、周りにバレるかと心配したけど、国道を通る車さえまばらな深夜のようで、遠くの街灯と空の星以外、手近な部分は真っ暗だった。
 それでも一応ビニールシートを被せられた。

 低いモーター音とビニールシートが風ではためく音はいずれも波の音に消されて、あたしとけんじさん以外の耳には届かないだろう。
 しばらく移動したら台車が止まった。
 ビニールシートを外されると、目の前に星明かりに映るテトラポッドの影が見えた。
 暗くてはっきりとは見えないが、けんじさんがコンクリートにしか見えない表面の一部を押すと、ハンドルが飛び出てきて、そこを掴んで持ち上げると、テトラポッドの背面が縦に外れた。
 非常に重そうにそれを外し、そばに置き、内部を操作すると暗い明かりが点いた。

 中にはあたしが納められると思われる縦の空間があり、その左右には、拡がった脚の部分に機械類が組み込まれている機械の一部が見えて、何本かのチューブが出ていた。
 高さ1.4mほどのテトラポッドは、外見とは裏腹に、その内部はほとんどが空間になっていて色々なものがぎっしり詰まっていた。

 けんじさんはあたしを鉄のクランプがついたまま内部に押し込んだ。
 あたしはちょうど、テトラポッドの天に向かって立っている脚の内部に治まり、狭くすぼまっている部分に頭が来る。
 押し込まれて気づくと、正面に液晶画面のようなガラス面がある。
 ぴったりと顔の正面に来るので覗いて見たら、星明かりに暗く海が見えた。
「テトラポッドが1基100万、改造やら設置で100万、まぁこれで200万だけど、それでもよしおの腕時計より安いからね。
 そののぞき窓、いいでしょ? ここで飼われていてもとりあず退屈はしないよね。覗く暇があるかどうかはわからないけど。
 それ、海側から見るとテトラポッドの四角い切り欠きに見えるんだ。その奥に厚さ3cmの防弾ガラスにハーフミラー処理した
 ものを嵌めてあるから、お子ちゃまが石を投げ込んだってびくともしないし、外からは覗けないよ」

「あの…… 今、これで閉められて…… あと、ずっと…… なんですか……?」
「とんでもない! まなみちゃん、まだ顔が自由でしょ? りょうこちゃんが息が苦しくてハフハフしてるの見てコーフン
 してた人が、これで満足だとは思えないけど?」
「はううぅぅん……! い、いやっ、そんな話、もうっ……」
「まずはまだ自由にしゃべれるうちに排泄装置のチェックとかしないとね」
 けんじさんはあたしの背後でチューブをガチャガチャと接続した。
「ローターはオマソコ中心でランダムにしておくから、楽しんでね」
 内部の照明が消され、背後でゴトゴトと音がして、背面のパネルが閉まった。

 自分一人になって落ち着く間もなく、オマソコのローターが緩く振動し始めてすごく気持ちよくなった。
 しだいにアクリルが固まって締めつけてくるのを感じながら、真っ暗なテトラポッドの内部で喘ぎ声を上げ始めた。

「ふあっ! ふあっ! きもちいい…… もう少し強くなんないかな…… う…… 来た…… イイ イ! ア!」
「はぁっ、はぁっ、んんんん、また…… ん…… まただよ…… あーーーっ!そっちキツイ! そっちいらない!
 オシッコ穴いやぁ! あうっっ! あうっっ! くうううううぅぅぅん! ハァ、ハァ……」
 誰も見ていないので、好き勝手に声を出してよがってしまう。
 なんかお口が寂しいよ……
 ベロで唇を舐めると、なんだか物欲しげに舌なめずりしてるみたいに思えた。
「けんじさん…… けんじさん…… あああ、 あああああ、 けんじさぁぁん!」
 べつにチソポ咥えたいとかいう具体的なイメージではなく、何となく名前を呼んでしまった。
『呼んだ?』
 突然、インターホンのような声。
「キャアアアアアア!! いや! なに?! ひっどーい! 聞いてたんですか?!」
『そりゃ一応モニターするさ。死なれちゃ困るからね』
 あたしは顔が燃え尽きるのではないかというほど赤面し、恥ずかしくて死にそうだった。
「もうしらないっ! 絶対聞かせな……ああン! 聞かせないからっ! くうぅっ!」

 目の前の小窓から明るい日が差し込むまで、声を押し殺しつつ朦朧と快感の中に浸っていた。

 意識がはっきりしてきたら、もうローターはあまり動いていなかった。

 目の前の小窓からは明るい外の景色が覗けた。
 視界の手前の左右にバケツが見えた。
 一つのバケツからはまだ髪の毛がはみ出ている。
 ああ、ひろみもりょうこもまだそのままなんだ……
 仲良し3人組で海へ来たはずなのに、こんな形で二度と会えなくなるなんて……

 小窓から差し込む光で、あたしの収められた空間も照らされ、今の自分がどんな状態か見ることが出来た。
 鋼鉄のクランプが噛まされたアクリルの円筒は、あたしの体を収めるだけのぴったりしたサイズで、膝立ちの人間の体ってこんなにコンパクトなのか、と改めて思う。
 詰め込まれる時はあまり意識しなかったけど、足裏が背中に着くほどまで伸ばされた足の甲が意外にきつい。

 顎を引いて下を見ると、アクリルの円筒と中の液体の境界はほとんどわからなくなっていて、透明度の高いアクリルの塊の中に、あたしの黒いラバーの体が見えた。
 薄明かりの中に表面の艶がなまめかしくて自分でドキドキしてしまった。
 突き出た胸の先端がピアスで尖った乳首の形のままに隆起しているのが見える。
 まだピアスの傷は癒えていないので、痛み止めを飲まされているとはいえ、意識すると軽い痛みを感じる。

 目の前で動きがあった。
 ひろみの居た場所に、捻って畳む方式の簡易テントが広げられ、ひろみのバケツにすっぽりと被せられた。
 けんじさんとよしおさんがテントを支え、まなぶさんが中に入った。
 しばらく中でゴソゴソ動いていたが、やがてひろみが抱えられて出てきた。
 テントがどけられると、今までひろみが埋められていた場所の少し先にビニールシートとタオルが敷いてあり、そこにひろみが寝かされていた。
 「ひろみーーーっ!」
 あたしは自分の立場も忘れて、閉鎖された空間で叫んだ。

 ひろみはぐったりしている様子だったが、ちゃんと水着を着ていて、深い呼吸を繰り返しているようだった。
 まなぶさんが上から覗き込むと、ややあってからひろみが手を伸ばし、まなぶさんの頭を抱いた。

 キス…… してるんだ……

 ひろみが無事でホッとしたような、
 なんか、うまくいってて、うらやましいような、
 あたしだけもう仲間に入れなくて、さびしいような、
 そんな、今となっては無駄な感情が沸き起こって、少し涙が出た。

 りょうこはまだ掘り出されないようだ。
 大丈夫かな……

 突然、お尻に冷たい液が流れ込んで来た。
「わああああ」
 経験したことのない違和感に声を上げたが、注入が終わってから、それがお浣腸だとわかった。
 下腹部がゴロゴロとうなり、体の外どころか、体の中までも圧力を高められてしまう。
 もう限界の苦しさがしばらく続いたあと、カチッという音がして圧力が下がった。
 ドロドロした流体が下っ腹から引き抜かれて行く。
 そして、こんどは刺激のない液が入ってきて、しばらくしてから抜けた。
 溜まってたオシッコも、いつのまにか抜けていた。
 これが…… 排泄…… あたしの…… これからずっと、一生の……
 機械みたいな、排泄……

 今度は筋肉があちこち勝手に収縮した。
 電気を通すゴムでも仕込んであるかのように、特に手足の筋肉が、まるで通販の宣伝に出てくる機械のように、勝手にピクピク震える。

 それが終わると、今度はラバースーツと皮膚の間に水が流れ込んできた。
 袖を勢いよく水が駆け抜け、肩や首の下まで薄い水の膜で満たされ、つま先から吸い出された。
 今はまだアクリルが柔らかいので、何回か水が灌流する間に、体をモゾモゾ動かしていると、隅々まで水で流すことができた。
 ああああでもピアスの傷が染みるよー〜〜!

 吸い出しが止まり、流入が増えると、ラバースーツ全体が一旦膨らみ、僅かだけど皮膚から離れて余裕が出来た。
 水の次は空気で同じように膨らみ、しばらくそのままになってから、空気が抜けた。
 水が引くときと空気が抜ける時の、一旦離れたラバーが再度密着するときの、クリトリスの気持ちよさったら……

 ラバーに閉じこめられたままだというのに、妙に全身サッパリしてしまった。

 洗浄?のような動作が終わると、またもとの状態に戻って、全身をくまなく締めつけるきつさが戻って来た。

 はふっ……
 はふっ……
 ううううう、なんだかリセットされた感じがする。
 混沌として、朦朧として、拘束感が疲弊してきても、これをやられると一気に拘束初日にもどされてしまう。

 それって……
 いつまでもこの拘束感をリフレッシュして味合わされるてこと?
 そう気づいたとたん、無限に長い暦の初日からまったく時間が進まないという感覚の恐怖が襲ってきて、また本当に脱出したくなった。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ほかのことならなんでもしますから、このアクリルから出してください……」
 小声で哀願してみる。
 インターホンの返事は無い。

 ギシギシと体を揺すると、いよいよアクリルが固まってきたようで、ますます動きにくくなってきた。
 うう……
 あたし、本当に、本当にアクリル漬けなんだ……
 夢じゃないんだ。
 この手足の軋みも、これからずっと続く現実なんだ。

 ドロッ、と体の奥の奥が潤んだ。
 また、エッチな気分の始まりだ。
 本当に情けないと思うけど、拘束されていることを実感するとメロメロにエッチな気分になってしまう。
 けんじさんたちに捕まって、あたしの正体が変態マゾだって暴かれてしまった。
 わずか1日の間に、ひろみやりょうこともども調教されて、ひどいことされるのが好きな子にされてしまった。



名無し小説TOP | 小説TOP | |