檻姫

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  一 プロローグ  

 父上は私が男でないことを嘆き、母上は好きにおやりなさいとニッコリ笑う。聞けば母上も小さい頃はお転婆だったと聞く。いずれ私も母上のような女性に成れるなら、せめて今だけは好きなことをさせてもらおう。

 王女として生まれて十数年、私はなぜ王子に生まれなかったのかと何度も悩んだ。悩みつつも母上の言葉を頼りに大好きな剣術に勤しみ、今では戦となれば甲冑に身を包み前線に赴く。
 今の時代、王といえど絶対君主ではなく、常に覇権を狙う諸侯が内乱を起こす。その度にそれを収めて王国の体勢を維持している。地方領主の城に対する石弓などでの攻城が多いこともあり、直接敵と剣を交える機会が少ないので、私は女だてらに剣を振るいつつも、あまり危険な目に遭うこともなく常に勝利を収めてきた。しかし白兵戦とて私は負けない。女ゆえ私の剣は軽いが、常にスピードで勝り相手を倒して来た。
 捕らえた領主はすぐに処刑、妻や娘は晒し者だ。戦の度に城下の広場で行われる晒し者や処刑は、幼い頃は私も心を痛めたが、今は仕方ないことと割り切っている。その不幸な出来事がもし我が身に降りかかれば、女の身で、ましてや王女の身分であれば、ただでは済まないことなど考えもせずに。
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