檻姫

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  二 処刑台の少女  

 今日は、先日の戦で敗れたドイルド候の娘が晒される。ドイルド候は既に処刑され、妻は舌を噛んで死んだそうだ。
「ムーーーーッ! ムゴーーーッ!!」
 太い木切れで轡を噛まされた、私と同じくらいの年の娘が、半狂乱の状態で広場に引き立てられる。広場にはX架があり、その前に引き立てられると、刑吏の手で瞬く間に全裸に剥かれ、手足を鉄の拘束具でそのX字架に繋がれてしまった。股の下には汚い桶が置かれ、涙を撒き散らしながら振る頭を、左右から鋼鉄の棒を耳に差し込まれて留められてしまった。
 広場の四隅に兵士が立ち、晒し刑が始まった。
 王国に刃向かう者の娘であるから、悪人の一味という立場ではあるが、個人的に不義を働いたり盗みをしたりしたわけではないので、物を投げつけたりする群衆も居ず、ただひたすら衆目に晒されて辱められている。


 はじめは四肢の枷をガチャガチャ鳴らして暴れていた娘も、次第に脱力して静かになった。
 いつもこのまま3日ほど晒され、その間、僅かの食事を与えられ、糞尿は下の桶に垂れ流しだ。裸のまま晒されて死ぬ気候ではないが、雨が降ってもそのままにされる。
 何日か経ち、瞳から完全に光が消えた頃に、専門の娼館が引き取りに来た。娼館の使用人達は兵士に金を渡し、娘をX字架から下ろすと、その場に水の入った桶を運んで体を清め、革でできた人型のサナギのような服を娘に着せ始めた。
 脱力した娘に着せるのは難しいように思われたが、そこは専門にしているだけあって、編み上げを全部解いてあるその服を、さながら皮を剥いたエビに再び皮を戻すが如く、開いた服で娘の体を押し包むと、ぐるりと裏返し、手早く編み上げを閉じて締め上げて行く。
 口に嵌められた轡はそのままに、首まで全身黒革に締め上げられたところで、やっと木片が口から引き抜かれ、私は喉まで届きそうなその長さに驚いた。しかしもう娘の口からは安堵の息すら漏れることもなく、だらしなく口を開いたまま、専用の口枷を新たに押し込まれ、そのまま黒革のマスクを被せられ、完全に締め上げられてしまった。
 娘を包む革の鞘には所々ベルトが付いていて、使用人達は娘を胎児のような姿勢にすると、ぞれぞれのベルトを繋ぎ合わせ、胎児の姿勢のままぎちぎちに固定し、小さな木箱に入れてしまった。
 使用人達はその場を払い、兵士達に無言で会釈すると、木箱を台車に乗せてその場を去って行った。
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