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  ピアス  




§§ ピアス §§

「あれ? 姫様、鎖は? 今ごろ気づく私もぼんやりさんですけど」
「あの…… 切れちゃいました」
「えっ? …… ……まぁ、いいでしょう。どうせ犬の時はリードですから」
 革のリードを首輪の金具に付けられる。
「こうしてみると、あとはピアスだけですね」
「え?」
 今更のように気づいて愕然となった。
 貞操帯もお試しと言われつつ装着してしまってる。
 あとは乳首のピアスとクリトリスのピアスだけになっちゃった!
 貞操帯用の本物のディルドーも、お尻なら正直言ってすぐ受け入れ可能だ。
 だって自分で練習しちゃったもの。
 今の犬の尻尾だって簡単に入っちゃったし。
「そ、そうですね……」
 必死に肘と膝で歩きながら、テラスへ続く扉へ向かう。

 おま○こ用のディルドーは複雑な形をしているから、本当に最後の最後に装着するものなのだろう。
 失敗して私が破瓜の痛みを感じればそこで計画がパーなのだから。

 おじさまをやっつけるのはともかく、誕生日が来て力を手に入れたら、すぐに絽以にヴァージンあげちゃおう。
 最悪、ディルドー突っ込んででも処女を捨てれば、力は完全に私のものだ。
 仮にその後貞操帯を装着されても、私はコントロールされない…… はずだ。

 テラスへの扉を開けてもらうと、外はまばゆい陽光が射していた。
「寒くないですか?」
 風は肌に冷たく感じるが、日向にいるかぎり寒くはない。
「平気です」
「あーお日様がきもちいいですね。慣れるまで少しテラスに居ましょうか」
 ニルさんはリードを放り出して部屋に戻り、すぐに椅子を持って出て来た。
 テラスのほぼ中央に椅子を置くと、ニルさんは椅子に座り、私をぐいと引き寄せた。
 エナメルのビキニに膝上まであるエナメルのブーツという服装は、迎えの車の中から変わっていない。
 雑用をしたり私を洗ってくれたりする時には素手で、その他の時にはエナメルのロンググローブをしている。
 今は素手だ。

 椅子に腰掛けたニルさんが横に下ろした手のすぐそばに、四つん這いの私の頭がある。
 その手がすっと動いて私の頭に触れた。
 犬耳のカチューシャとおでことの間の髪の毛を撫でる。
 私は驚いてニルさんを見上げた。
 にっこり笑っている。
「姫様最高にかわいいです」
「ど、どうも……」
「ずっと撫でていてもいいですか?」
「あ、どうぞ……」

 撫でられているうちに、こちらも甘い気持ちになってくる。
「姫様、おっぱい寂しいでしょう」
「べ、べつに……」
「私、姫様の調教に関われて、本当に幸せでした」
「い、いきなりどうしたんですか?」
「いえ、楽しい調教もそろそろ終わりかなぁって……」
「ほんとですか! あたし帰れるんですね?」
「いいえ、姫様はきっとお宅にはお戻りになりませんよ」
「そんなばかな」
「ウフフ、それより、ピアスしませんか? おっぱいに」
「い、いやです!」
「ピアスは奴隷になる・ならないと関係ないですよ?」
「それでもいやです! 痛そうだし……」
「ちゃんと麻酔しますよ」
「……」
「ちなみにピアスって、すーーーんごくきもちいいですよ」
「あァ……」
 思わず脳髄蕩かされたような声を出してしまった。

「ほら」
 ニルさんがブラを捲っておっぱいを見せる。
 ブラに仕舞われていたピアスがポロンとこぼれ出た。
 それは私に嵌められるはずのピアスそっくりだった。
「ウフフ、もちろんイミテーションです。でも実験と姫様説得のため、本物と同じ大きさと重さに作ってあります。これ…… アフッ…… き、きもちいいです……よ…… 真剣に……」
 私の思考は一瞬でぐちゃぐちゃにされてしまった。
 見上げるニルさんの乳首。
 適度に引っ張られ、きっとしくーんと甘い刺激が送り込まれてるに違いない。
「自分でやったんですか?」
「はい。コメドゥ様の言いつけで」
「そんな…… あたしのために……?」
「きっかけはそうですけど、でも、やってよかったです。姫様が着けてくださればお揃いになりますし」
 突然、あることに気づいた。
「あの…… まさか…… クリトリス……」

「うふふ」
 ニルさんはにっこり笑って椅子から立つと、私の目の前でゆっくりとエナメルのビキニを下げた。
 午前中のすがすがしい光りにキラキラと粘液の糸が長く伸び、その中心にダラリと涙滴型の美しいピアスが……
「あふっ…… ぶら下がったこの状態では…… とても歩けません…… 感じすぎて…… 姫様の貞操帯は、中にこれが収まる窪みがあります……」
 手足を折り畳まれた四つん這いのまま、私はガクガクと震えが止まらない。
「あ…… あ…… あ……」
 主人の命令とはいえ、私にピアスするため、実験で自分に同じピアスを着けちゃうなんて……

 私は泣き出した。
「ぐすっ…… ぐすっ…… ニルさぁん…… なんでそこまで……」
「今までのことも一通り試してるんですよ? どうすれば姫様が苦しまずに貞操帯のディルドーが入れられるかとか」
「それも…… まさか……」
「いやぁアハハ、私は広げすぎてしまって、いまユルユルなんですよ…… ほら…… 少しずつ戻してるんですけどね」
 よく見ると、ピアスの向こう側、ニルさんのお尻に太い栓が嵌まっているのが見える。
「ああん! ああん! そこまでするなんて! あたし、ピアスします! ピアスしてください!」
 ニルさんはエナメルビキニのトップとボトムを直した。

「姫様、これを見たからって急ぐ必要はありませんよ? 『きもちいいことしたい!』っていう理由なら、お止めしませんが」

「き! きもちいいことしたい!! …… グスッ…… グスッ…… ああぁ〜〜ん……!」

「はいはい」
 ニルさんは笑って部屋へ戻った。



§§ ピアッシング §§

 明るい日差しの中に一人残された私は、とんでもないことを言ったことに気づいた。
 でもまだまだ頭に厚いモヤがかかったようになっていて、どうせあとでピアスされちゃうんだから、と納得していた。
 それに麻酔ありというのが予想外で、ピアッシングに対する絶対的な抵抗心を削いでいた。

 ニルさんはしばらく戻ってこなかった。
 あんまり待たされ過ぎた私が次第に興奮が抜け、四つん這いのまま緊張感なく居眠りしはじめたころに道具一式を持って戻って来た。

 テラスの上にビニールシートを敷き、私を抱えてその上に仰向けに寝かせた。
 さっきニルさんに返した鍵で貞操帯が解錠される。

 乳首周辺とクリトリス周辺を消毒剤で拭われた。

 私は首を上げて見ることもできず、明るい直射日光に目を細めながら、ただされるままになっている。

 真夏の浜辺の幻惑のように、太陽の光で心が体を離れ、ただぼんやりとした思考の中に身を置いている。

 チクッとした。
 でも、一瞬のこと。
 何か右胸が膨らむ感じ。
 いや、胸でなく、乳首?

「麻酔が効くまで少し待って下さい」
 ニルさんが大きなハサミを持っている。
「これ、ピアス用鉗子です。これで穴を明けるわけじゃありませんよ。穴のガイドですね」
 こわい!
「姫様、見ます?」
 目を細めて初めて自分の胸の様子を見る。
 逆光で解りづらいが、真っ白な乳首が大きなハサミの先でつままれている。
 乳首が白いのは麻酔のせいのようだが、あまりの血の気になさに驚いた。
 乳首を挟んだハサミの先は輪になっていて、これからピアスを突き通す位置を示していた。

 逆光の中にニルさんの指がパイプ状の鋭い針をつまんでいるのが見える。
 それが躊躇なくハサミの先端の輪を突き通そうとする。
 かなり力を入れているようにも見える。

 でも、まるで映画を見ているように、実感が無い。

 小鳥のさえずりに混じって、私の肉がブツンと大きな音を立てたような気がした。

 血はほとんど出ない。
 鉗子が外され、針を押し出すようにしてピアスのリング本体が通され、カチッという音とともに閉じられた。
 ぷるんと私のおっぱいが元の位置へ戻る。
 大振りの涙滴型の宝飾品がおっぱいの上に載った感触がある。
 麻酔が効いているのは乳首だけのようだ。

「平気でしょ? 姫様」
「は、はい……」
「ところで、こっちの乳首は麻酔なしでやってみませんか?」
「え? いやっ! こわい!」
 私はバタバタと手足を動かして拒否した。
「やっぱりこれは割礼みたいなもので、痛みに耐えたということがピアスの意義だと思うんですよ」
「はぁ…… それはそうかもしれませんけど……」
「スパッとやりますから」
「こわい……」
「こっちだって一瞬だったでしょ? スッゴイきもちいいのに、麻酔しちゃもったいないです。私も試したんですから、信じて下さい」
「はぁ…… じゃ、お願いします」
「それでこそ姫様です」

 左胸の乳首も同じように鉗子で挟まれた。
 こんどははっきりつままれた痛みがある。
「あつつつ、もう少し緩めてください」
「一瞬ですからこれくらい我慢してください」

 ―― ブツン ――

 え?

「ギャーーーーッ!!!」
 なにも言わずにいきなりやるなんて!!

「わーーん! ひどいひどい! えーーーん! えーーーん!」

「串刺しになった乳首、見ます?」

 鉗子を外し、おっぱいを私に見える位置まで押し上げるニルさん。
 目の前の光景が信じられない。
 乳首に太い針が突き通っている。

「あ…… あ…… あ……」

 ズキズキ痛いのに、その凄まじい光景にドロドロに濡れてきた。

「ピアス装着しますね」
 涙滴型の宝飾品のリング部分を開き、その端でピアス針のお尻を押す。
 肉の中を金属棒が抜ける摩擦の痛みが胸から広がる。
「ひ! 痛ぁああいい!!」
 針の残りの長さ分、摩擦の痛みが続き、リングが通ると針は脇へ落ちた。

 カチリとリングを閉じたあと、ニルさんが足元方向へ移動した。
 ズキズキする胸の痛みにしばらくボーッとなっていたら、グイッと股を開かされ、とんでもないものがつままれてパニックになった。

 クリトリスだ!

 こっちも麻酔なしでやる気なんだ!

「やーーーッ!! ひーーーーッ! やめてやめてやめてやめてやめて!!」

 さらに大きく股が割られる。
 足を引き寄せて折り畳まれた状態のまま拘束されていので、潰れたカエルのように惨めな姿のはず。
 つまんだクリトリスを揉まれるような感触がある。
 ふわっ! いきなり、きもちいいよぅ!

 クリトリスが勃起したところで付け根を挟まれて引っ張られた。
 既に閉じている目を、更に固く閉じる。

 ―― ブツン ――

 体内に響く、肉が穿たれる音。
 それは音として耳に届くのではなく、体内の振動として伝わる。

「ゴブッ!! …… ……!!」

 目を剥き、折り畳まれた手足をガキーンと突っ張らせて、声すら出せなかった。

 敏感な突起の中心を金属棒が押し進められ、グリンとリングを通された感じがしたら、カチリと音がした。
 何かが股の間に垂れ下がり、おしっこの穴付近に重さを感じる。

 あああああ
 とうとう取り付けられちゃった。
 クリトリスにも穴を穿たれ、ピアスを装着されちゃった。

 無抵抗な仰向けのまま、ハラハラと涙がこぼれる。

 なにやってるんだろう、私。

 私、まだ元に戻れる気でいるよ。

 そんなことないのに。

 こうなっちゃったら、もうだめなのに。

 お父さん、ごめんなさい……

 これが、私という存在が国民のための生贄となる証しなのだろうか……

「どうしました! 姫様! 痛みがひどいですか?」
 絶望の涙がハラハラと止まらない。
 痛みなんてピアスが通ってしまえば、大したことない。
 そんなことより、やはり割礼のような心の変化のショックが大きい。
「グス…… なんでもないです…… もう、平気です……」
 じっくり考えると発狂しそうだったので、封じ込めるように気持ちを逸らす。

「終わりましたよ。これ、飲んで下さい」
 口にカプセルを押し込まれた。
「何?」
「痛み止め兼化膿止めです。ズキズキが少しは楽になりますよ。はい、水」
 仰向けのままゴクリと飲んだ。

 貞操帯が元に戻される。
 クリトリスのピアスはおへそ方向に跳ね上げられ、貞操帯の内部のどこかに収まったようだ。

「起こしますね」
 仰向けの状態から四つん這いに戻ったら…… 突如、快感の支配する別世界に放り出された。

 下向きに下がった2つのおっぱい。
 その先端の乳首が程よい重さで下向きに引っ張られる。
 きゅーーんと沸き起こる、甘い快感。

「いつつつつつ」
「痛みますか」
「動かすと、少し……」

 ああ、でもっ、このピアスの重さの、悪魔のさじ加減……

 はふっ……

 胸板の奥から、快感の神経繊維が釣り出されそう……

 改めて自分の胸を見る。

 ―― ドクッ! ――
 ―― ドクッ! ――
 ―― ドクッ! ――
 ―― ドクッ! ――

 ピアスは視覚による効果もすごい!
 本当に、肉にリングがぶら下がってる!

 やっと実感が沸いてきた。

 あの痛みを通して、自分が変わったように感じた。

 奴隷に堕ちた、という感覚はあまりない。

 それより、『自分に素直になっていいんだ』、という免罪符をもらったような気がした。

 なーんて真面目な思考が先に立ったと思ったら、それはあっさりエッチドロドロに追い越された。

 やっぱり奴隷に堕ちたよ、私!

 ―― ドクッ! ――
 ―― ドクッ! ――
 ―― ドクッ! ――
 ―― ドクッ! ――

 はううぅぅぅんん!!

 ピアスきもちいい!

 こんな、こんなヒドイことってないよね?
 女の子の一番敏感な部分、大切な部分に穴を明けられちゃったんだよ?

 でもどうしてこんなに気持ちが昂ぶるの?

 いやぁぁぁあああ!

 真剣に後悔した。
 こんなことされたら私、エッチ奴隷になりきっちゃうよぉ!!
 ピアス外さなきゃ、元に戻れないよぉ!

 四つん這いで、下向きに垂れたおっぱいが、重りで下に引かれてる。
 性器周りが前方向に引っ張られてる。
 その奇妙な感覚が、身体中で一番敏感な感じる突起3つを、支配されてしまった気分にさせる。

 うう……
 ヤバ……
 ものすごい奴隷気分……
 もう戻れないって恐怖もどんどん膨らむ……

 アソコが濡れ出して止まらない。
 耳まで真っ赤に染まり、耳のうぶ毛までがパリパリと粟立つている気分。

「姫様……?」
「は…… ヒッ……?」

 だめだ。
 胸がわずかに揺れるだけで凄まじい性感。
 クリトリスはしまわれてしまったので、そっちはまだ実感が沸かないけど。

「えーと? 姫様?」
「はフッ……」
「うわぁ、感じていらっしゃいますね?」
 ブルブルと肩を震わせる。
 コクッと頷きたいけど、体が揺れるのが怖くてできない。
「しばらくしたら慣れますから、心配ないですよ」
 こんな感覚、慣れるとはとても思えないけど。

 背中を太陽が暖かく照らし、汗ばんだ体に風が心地よい。

「姫様、さっきの状態まで戻ってよろしいですか?」
 何のことかわからないけど、ゆっくりと頭を下げた。
 ニルさんはピアス道具やビニールシートを片付けたあと、私の動けない状況を察してくれたのか、今私が四つん這いで立っている所へ、自分が座っている椅子の方を移動して腰掛けた。

 さっきと同じように頭を撫でる。
「本当に姫様はすごい人です。淡々とここまでついてこられる人なんて、他にいません」
「そんなこと……」
「ううん…… だってもう、フル装備じゃないですか」

 ―― ガーン! ――

 本当に、本当に全部着けられちゃった。

 ピアスまで。

 冷や汗がドッと出てるのに、快感の脂汗が止まらない……











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