終焉
§§ お風呂 §§
こっちへ来た時に着ていた服を着込む。
でも、私の心はズッシリと重い。
皆の前で国家の奴隷になることを誓い、全部の鍵を奪われてしまった。
家に帰ることを許されたけれど、これから学校とかどうしよう。
貞操帯はいいとして、首輪や手枷足枷が見えたままじゃまずいよね。
しかも足枷が外せないので、ブーツを脱ぐことができない。
ブーツ履いたままだと、まともにお風呂も入れない。
「んあっ……」
そ、そういえば、コレもこのままなんだ……
通学しながら気が狂っちゃうかも。
どうしよう……
学校やめないとだめかなぁ……
ちょっと待って!
お尻のディルドー抜いてもらわないと、ウンチもできない!
まずい、まずいよ!
今からでも長老に話をして、せめてお尻の鍵だけでも返してもらおう。
少ししたら絽以が戻って来た。
「お待たせ」
「何してたの?」
「うん、ちょっとな。部屋へ行こうぜ」
お父さんたちと一緒に、私たちに与えられた部屋へ行く。
身の回りのものそのままに、ドスンとソファーに座る。
「んあっ!」
ヤバ、気をつけないと不意にあれが動く。
「あー疲れたぁ!」
「大変だったな」
「ねぇ、お父さん! あの長老ってどんな人?」
「そうだなぁ、見たままだけど。強いて言うなら、一番アナムネのことを心配してる人、かな」
「ふーん。あたし、長老に奴隷宣言させられちゃった。『あたしは国民の奴隷です』って」
「えっ!? それは長老がんばったなぁ!」
「ちょっと! なんで長老ががんばったのよ! がんばったのはあたしだよ?」
「珠里、ほら」
話を聞いていた絽以が、いきなり鍵束を差し出す。
「あ、あれ? この鍵……」
「あのあとすぐ、長老が返してくれたのさ」
「エッ! なんで?」
「つまり、珠里に奴隷をやってもらいたいのは本当、でも珠里の日常は壊せない、なぜなら安定して奴隷として働いてもらえなくなるからな。そういうことだろう」
「お父さん、実の娘によくそんな残酷な言い方できるわね」
「これでも元国王だからな。今、何が大事か、私たちに出来ることは何か、何を我慢しなくちゃならないか、わきまえているつもりだ。お前の力をはじめとして、我々は必要な勤めからは逃れられない運命なのだ」
いつになく真剣なまなざしで言われ、少しだけ納得した。
「長老が言ってたぜ。『アナムネでは、申し上げた通りのことをキッチリしていただきますのでくれぐれも姫様にはよろしくお願い申し上げます』だとさ。今度来る時は真っ先に鍵を預かるって」
「珠里がどんな約束をしたか知らないが、ここでのことは真剣そのものだからね。お前の失敗で人が死ぬようなこともあるかもしれないから、甘く考えちゃいけないよ」
「わかったよ、お父さん」
「絽以君にはずっと迷惑をかけると思うが、本当によろしくたのむ。この通りだ」
「はい、がんばります」
「鍵、貸してよ。お風呂入りたい」
「そうだな。はい」
「ありがと。じゃ、ちょっと失礼するね」
皆を居間に置いたまま、私だけ、まずトイレ。
真っ先に膣内に入れられた棒のロックを掛けた。
次に手探りでお尻の鍵を外し、ディルドーというかプラグを抜き取り、久々に落ち着いてうんちする。
こんなことでホッとしてる私って……
プラグは外したままお風呂場へ移動し、手枷足枷首輪を外してブーツを脱いで、貞操帯も自分で外してしまった。
おま○この棒はなんだか落ち着いているので、出し入れの手間の方が面倒な気がして抜かなかった。
ざっと体を洗い、垢だけ流す間も気がはやる〜
クリピアスが引っ張られてるけど、もうそんなんどうでもいい〜〜
はやく、はやく、はやくお風呂にぃぃ〜
―― ザップーン ――
「はああぁぁぁぁぁぁあああああああぁ〜〜〜」
ぎもぢいいよぉぉ〜〜
ブーツ履きっぱなしにさせられた足を揉む。
そのままボーーッと30分くらい浸かったままだった。
だんだん眠くなってきたのでもう上がろうと思い、髪も含めて体の隅々まで洗った。
だいたい髪の毛下したのも久しぶりだ。
貞操帯とお尻のプラグ、手枷足枷首輪を洗い、貞操帯だけ戻して、残りの部品とブーツを手で持ってお風呂場を出た。
先に自分の部屋に戻り、持ってきたスーツケースを開け、Tシャツと短パンに着替え、他の荷物を置いて居間に戻った。
「ふーー! サッパリしたぁ!」
「帰る時にはまた全部嵌めておけよ。うるさそうだから」
「うん、わかってるって」
「じゃぁ、もう遅いから、俺自分の部屋へ行くわ。また明日な」
「うん、ありがとう」
絽以となんにもないのがちょっと残念だったけど、久々にお父さんたちと水入らずなのが嬉しくって、早々にベッドに入り、疲れも手伝って泥のように眠った。
§§ 悪夢の終焉 §§
翌朝。
誰からも起こされず、遅めに起きた。
お父さんたちはもう執務室へ行ってしまっていて、居間に書き置きがあった。
『珠里へ 起きたら絽以君を誘って長老の所へ行くこと』
ちぇっ、また何かやらされるのかしら。
居間のテーブルの上にあった菓子パンをかじり、牛乳をゴクゴク飲んだ。
何をやらされるかわからないので、とにかくおしっことうんちをきっちり出し切っておく。
それから自分の部屋に戻り、またブーツを履き、手枷足枷首輪を着けて、腰をリボンで縛るタイプのワンピースを着た。
久々に髪は下したままにした。
絽以の部屋へ行く。
「ろーい、いるー?」
「おー、今出る」
私が部屋に入るまでもなく、絽以の方から出てきた。
「おっす。へー!」
「何よ」
「へー!」
「だから何よォ」
「久々に見る長い髪って、いいよな」
「なーによ、いまさら。行こうよ」
「おう」
長老は玉座の間で待っていた。
そこには3人の女性の侍従が居て、衣装箱のようなものが置いてあった。
「ホッホッホ。お休みになれましたかな?」
「それよりお風呂にゆっくり入れたのが嬉しかったです。あの、えと、鍵ありが……」
「おっと、それ以上は…… おわかりであろう?」
「あ、はい……」
「さて、次に来ていただいた時から、姫様には色々な所へお出かけいただかねばなりませんのじゃ。それにはその…… ちと乳が無防備すぎますでの、乳バンドを作らせたのじゃ」
侍従の一人が貞操帯と同じ彫金模様のブラを持ってきた。
「これは獣王女の装具には無いもので、新しく作らせたものじゃ。してみて下され」
絽以より長老より侍従の目が気になったが、その場でワンピースを脱いでその金製のブラを着けた。
ちゃんとピアスの収まる窪みがあり、素材が金であることも手伝って、見た目の堅牢さに反してぴったりとフィットする。
ピアスを保持する窪みはそのまま表面の構造として飛び出しているので、巨大な乳首がポッチリ出たように見えてしまうが、私はあまり気にならない。
自分の乳首の大きさそのままや、尖った様子のコピーだと羞恥で死にそうになると思うけど、自分の形に似てないものだとなぜか平気なのだ。
このブラは構造としてはブラジャーというよりホルダネックタイプのビキニのトップだ。
しかもフロントホック。
実際はホックではなく、そこが鍵になっているんだけど。
彫金を施し、貞操帯とお揃いの宝石をいくつか嵌め込んだ2つのカップが、それぞれのカップの上の縁から伸びるチェーン同士で繋がり、ループを作っている。
さらに背中を水平に回る紐に相当するチェーンも、最初から繋がっている。
本来の水着なら結ぶようになっていたり、調節機構がついている部分が、これは私専用なので鎖の長さは調節できない。
まるでチョッキを着るように、2つのチェーンで繋がったブラに袖を通し、髪の毛をバサッと抜き出して、チェーンが首の後ろを通っていることを確かめる。
そして左右のおっぱいをカップに収め、胸の谷間部分にある鍵でカチリと左右を繋げると、ピッタリのサイズに作られているこのブラはもう脱げない。
背を丸めて手を差し入れ、おっぱいを左右均等に収める。
「いかがかな?」
「はぁ、ピッタリです」
「少し跳ねて下され」
ガッチャガッチャとジャンプする。
乳首剥き出しではとても恐ろしくてジャンプなんか出来なかった。
「うわぁ! これいいですね!」
「ホッホッホ、それは良ぅござった。ではこの次のお仕事の時を楽しみにの。ホッホ」
侍従がブラを脱がせてくれたので、着て来た服を再び着込む。
そこへお父さん達が来た。
「そろそろいいかな。地下に荷物も運ばせたから」
「エッ、あたしたち、もう帰っていいの?」
「ああ。私達はもう少し用事があるから、家のほうよろしくな」
「うん」
「絽以君も頼むよ」
「はい」
長老やお父さん達とゾロゾロ地下室へ移動した。
「もう4,5日で戻るから。学校の支度もちゃんとするのよ」
「うん、おかあさんもがんばってね」
転送にも慣れて来たせいか、挨拶もそこそこに転送装置に入る。
またパリパリとすごい静電気で、そして気分が悪くなって、最後にドーンと押された。
ゴロンと転がり出る。
「ふしゅっ! ふしゅっ! うふふふふふふふふ!!」
「珠里ちゃーん、平気かい?」
「へいきれふーよー! おっとぉ!」
立とうとしてよろけ、ドスンと尻餅をついた。
「あーりーー?」
「オイオイ、珠里ちゃん、スカート! スカート!」
「えーー?」
よく見ると、見守る工場のスタッフに向かって大股開き、ワンピースは腰まで捲れ上がっていた。
「ふーー。」
「落ち着いてないで直しなよぉ!」
「へっへーん! あたしのは見ようったって見えないもーん!」
「おいおい、珠里ちゃん人格違くね?」
―― ハッ! ――
「キャッ!!」
慌てて立ち上がった。
「あ、戻った」
「す、すみません、はしたないところ見せちゃって」
そうこうしていたら絽以も押し出されて来た。
さも平気そうにスックと立ち上がり、パッパッとズボンを払った。
「ふぅ。さるがにこんらけ回数こらすと、もうれんれん平気らな」
「全然平気じゃないみたいだけど」
「ろこが?」
コイツ全然認識が無いの?
みんなニヤニヤ笑ってて、絽以だけ怪訝なマジメ顔。
「あにみんらニヤニヤしてんらよ! オゲェーーーーッ!!」
「わーーーッッ!!」
いきなり絽以が吐きそうになって、私は慌てて飛び下がる。
「ゲブ。 ……ふぅ…… よひよひ、らおった、らおった」
「全ッ然治ってないわよ」
「大丈夫だってば」
「あ、治った」
2人でグルグルしてる間に荷物はスッ転がされたまま放置だった。
そのスーツケースをよいしょと起こして、ガラガラと押す。
「お邪魔しました〜」
「おう、またなー」
みんなに見送られて家に向かった。
途中のポストに、お母さんから頼まれたお中元のお礼状を投函する。
もう夏休みも終わりだから、お礼状遅すぎるよね。
でも長期旅行中でしたのでごめんなさいって書いてある。
やっと家に着いた。
なんだかボーッとしてしまった。
とにかく荷物を片づけて、部屋着に着替えてほっと一息ついた。
§§ 日常の姫様 §§
夏休みも終わり、学校が始まった。
このバカげた大騒ぎがここ2カ月ほどのことだとは信じられない。
でも乳首とクリトリスに穴を穿たれ、固定されたピアスが、今の私こそ現実そのものであると物語っている。
悪夢と悪夢の間のしばしの休息。
本来一番ストレスになるはずの現実の生活が、一番安堵する時間になってしまうなんて。
典子ちゃんとも親しく話す。
会話の内容は、全然変わってしまったけれど。
学校からの帰り道。
「珠里ちゃん、ピアス見せてくれるって約束したわよね?」
「うわう! 典子ちゃん、薮から棒に何ッ!?」
「お約束したわよね、見せてくれるって」
「そそそそそ、まあまあままま、またこんどね」
「ええ、それはいいけれど、痛かったとか、きいてもいい?」
「え? うん、いいけど…… 正直無我夢中でよくわからなかったんだ」
「パチンて言う感じ? それともブスーッと貫く感じ?」
「どっちかというと後者かな。意外なようだけど、乳首って一番表面が一番硬いんだよ。だから突き刺す瞬間と、反対側に突き出る瞬間が一番痛いよ」
「なるほど。 ねぇ、絽以くんはアナル使うの?」
「シェーーーッ!! の、典子ちゃん!?」
「ん? なあに? ねぇ、絽以くんて珠里ちゃんのお尻犯すの好き?」
いったいいつからこんなになっちゃったんだろう。
前にも思ったけど、マジメな子が道を極めようと意思を持つと、スゴイことになるんだなぁ……
「す…… …… き……」
「ん……?」
「そんなに使わないけど、するの好きよ。ハァハァ…… もう、何言わすのよぉ!」
「だってぇ、珠里ちゃんすごく鍛わってるように見えるんだもの、ちょっとくらい教えてくれてもいいじゃない」
「まぁ、それはそうかもしれないけど…… って、ちがーーう!」
あれ?
前の方を絽以と青山先輩が歩いてる。
「絽以〜! 何やってんのォ? 今日は用事があるからって……あ!」
「うん、センパイはセンパイで絽以くんに聞きたいことがあったみたい」
「なーんだ、君たちまで」
「こんにちは、青山さん」
「のりぃ、絽以君はピアスのこと知らないそうだぞ」
「そいつに聞いたってダメですよ。あの時の二人組が詳しいんです」
「そうなんだ。連絡とれる?」
「あーもう、典子ちゃん積極的すぎてあたしついていけないよぉ。あの二人は今は向こうの世界にいるから、ピアス手伝えないなぁ」
「仕方ないな。ネットで調べたプロに頼もう」
「うん。珠里ちゃんありがとう」
「ゴメンね、役に立たなくて」
「でも、経験者がそばにいると心強いわ」
「珠里は役に立たないけど経験だけは豊富だからな」
「あ、このーっ! ……あン!」
絽以を叩こうとしたら、今の会話で乳首がツンツンに尖ってて、腕を普段上げないような位置まで振り上げたもんだから、ブラごと乳首が擦れて、妙な声が出た。
一瞬で茹でダコのように真っ赤になり、力無く拳を下ろす私。
「珠里ちゃんカワイイ。花園君も操るのがうまいのね」
「お、おれ、操ってねぇよ!」
「いやぁ、御門さんがこんな表情するなんて、いまからのりにピアスするのが楽しみだなぁ」
途中、典子ちゃんと青山先輩と別れた。
「なぁ」
「んー?」
「ずっとこんな日常が続くといいな」
「そだね」
絽以と手を繋ぐ。
私は絽以の肩に頭を寄せた。
「うは。ツンデレ姫だ」
「ツンデレ言うな。だいいちツンないでしょ、あたし?」
「じゃ、デレデレ姫だ」
いいじゃん、デレデレしたって。
§§ どっぷりと日常 §§
そうこうしているうちにお父さんたちが戻ってきた。
私の体が改造されてしまったこと以外は、表面上、夏より前の日常が戻って来た。
お母さんは優しかったりガミガミ言ったり、お父さんはまたせっせと会社勤め。
いったいこのヒトのどこが王様なんだか。
アナムネもたいしたこと無い星だよねぇ。
ピアスと貞操帯が、奴隷宣言しちゃった私の身分を思い出させるけど、首輪も手足の枷もしていないから、あのブーツ履かされっぱなしの毎日よりは奴隷気分でもない。
学校行って、宿題やって、テレビ見て、お母さんの料理手伝って、絽以とデートして、お風呂入って、勉強して。
刺激的ではないけれど、こんな毎日の方が姫様やってるより1000倍いいに決まってる。
学校行って、宿題やって、テレビ見て、お母さんの料理手伝って、絽以とデートして、お風呂入って、勉強して。
学校行って、宿題やって、テレビ見て、お母さんの料理手伝って、絽以とデートして、お風呂入って、勉強して。
学校行って、宿題やって、テレビ見て、お母さんの料理手伝って、絽以とデートして、お風呂入って、勉強して。
私、絶対間違ってないよね。
でも私の心の奥底で、次はどんな行事でアナムネに呼ばれるのか、密かに期待している気持ちがくすぶっているのを感じていた。
今からこうやって覚悟しておけば、いざ呼ばれた時に嫌な気持ちにならずにすむもんね、と自分に言い訳して……
(終)