おぞましい晒し物

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 ベッキイは松脂(まつやに)がそのまま琥珀になったような黄色っぽい樹脂の中に全裸で封入され、同じく琥珀でできているように見える大きな瓶を肩にかついだポーズを取らされていた。
 だらしなく開いたままの口からは嘔吐し続けるように水がとうとうと溢れ、足元の水面へと落ちてジョボジョボと水音を立てていた。
 全身全く動かない様子なのに、目の周囲にだけは空間があるのか、目を閉じたり、周囲を見回すことができるようだ。
 この距離から見ても、今頑なに閉じているベッキイの目からは涙が溢れているのが見えるが、それはどこかにある穴を通って流れ落ちるか、あるいは近くで何かに吸い取られているようで、溜まることなく消えてゆく。

 ベッキイの全身はギリシャ彫刻のように上半身裸で腰から下には布を巻いたような形になっていたが、それは琥珀の外形がそうなっているだけであって、美しく透き通る黄色の樹脂は、中で全裸で固められているベッキイの身体の隅々までを余すところなく透過させ、晒し出していた。
 胸は美しい形のままにコーティングされ、屹立する乳首もそのままにデザインされている。

 あたしはゴクリ、と唾を飲んでから、視線をベッキイの腰から下へ落とした。

 腰布型に形造られた琥珀色の造形の奥で、ベッキイの性器は剥き出しになるほど開かれていて、穴という穴が真ん丸にくつろげられたままにされている。
 樹脂の中にあってすら不安定で危うげに見える爪先立ちのまま固められてしまった両足の間には、光の加減で透明な管が縦に通っているのが見え、時折気泡を含んだ水が押し上げられてゆくのがわかる。
 気泡を含んだ水は、ベッキイの股間の後ろ側から消え、しばらくすると口から吐く水にゴポリと濁音が混じる。

 あたしは恐怖にかられ、真っ青な面持ちで彫像の後ろに回ると、恐ろしい予測そのままに、水流はぽっかり開いたベッキイのお尻の穴に吸い込まれていた。

「あ…… あ…… あ……」

 あまりの恐怖に叫ぶ声すら出なかった。

 お尻から、水を流し込まれ…… 口から吐き出さされているんだ……

 当然、ただ注入しただけでは内臓の抵抗があるから、お尻から口までチューブ状の触手を送り込まれ、腸から胃そして口へと貫かれ、生きながら噴水の水管にされているんだ……

 更にギクリと思いついて、太陽の光に琥珀の彫像を透かす角度から見上げて見た。
 まぶしさに目を凝らすと、黄色い美しい樹脂の中に、光の屈折が違う何層ものイボイボや管が、まるで今あたしがされているのと同じように、ベッキイの身体にまとわりつき、ベッキイがこんな姿にされてしまってすら、全身 触手だらけに拘束されているのがわかった。
 その触手が無色透明なために、琥珀の色にまぎれてその存在が殆ど見えないだけで。

 あの乳首も、きっと透明な触手に縛められ、締め上げられ、無理矢理尖らされてから固められたんだ。
 無防備にさらけだしたお○んこも、開いて見える穴には全て透明な触手がねじ込まれているのだろう。
 もちろん、ねじ込まれるだけでなく、一方では排尿や排便の生理機能を管理し、もう一方では……

「オエッ……」

 想像しただけで吐きそうになった。

 そう、もう一方では、激しく性器を責め立てているはずなんだ。

 全裸を晒され、局部や肛門まる見えの状態にされて、全く動けなく固められるその恐ろしい無力さもさることながら、あたしが触手服で少しずつ慣らされたように、この広い空間で、白日の元で、 触手による快感責めにずっと晒され続けているなんて……

 そしてきっと、狂おしい寸止め地獄に落とされ、イキたくても自分で触ることすら、1ミリも身体を動かすことすら禁じられ、同じ姿勢を取らされたまま、自在に繰り返される快楽と寸止めの責めを甘受しなければならないんだ……

 その中で、仲間のあたしに見られる羞恥は凄まじいものだろう。
 涙目でキッと見上げると、ベッキイはあたしなんかもう見てなかった。
 目を閉じ、眉を悲壮に寄せて、必死に何かに耐えていた。

 寸止めだ……!
 きっと寸止め地獄の真っ最中なんだ……!
 切なさでこっちの身が焦げそうだ!

「がんばって!」

 伝わるかどうかもわからぬまま声を掛け、あたしは泣きながらその場を去った。

 足早に門番のところへ行き、開門してもらった。

「見たんだね」
「ヒック…… ウグゥ…… はい……」
「良くあることさ。そのための台座だからね。 ハンカチ、使うかい?」
「グシッ…… あでぃがどございまず、ちーん!」

 あたしは涙と鼻を拭って郵便局に向かった。


 *****


 あたしが郵便局で手続きしていると窓の外を凄い勢いで自転車が通りすぎた。
 この辺で自転車なんて珍しい。


 無事に発送手続きを終えて伝票を受け取り、預かった残金を確認してお屋敷に戻る。

 途中、前からさっきの自転車がキコキコと力無くやって来た。
 イケメンの青年がぐしゃぐしゃに泣きながら乗っている。
 彼はあたしには目もくれず、虚ろな瞳で運転しながら遠ざかっていった。

 お屋敷に戻って改めて正門から見ると、真正面にベッキイの彫像が見えた。

 ―― ハッ! ――

 あの青年こそがベッキイの彼氏だ!

 なんてひどいこと!

 ―― ゾクゾクゾク ――

 でもあたしはこの恐ろしいおしおきの仕打ちにゾクリと震えると同時に、耳の後ろがカアッと熱くなるのを感じた。

 彫像に固められたまま、彼氏にまでその惨めな姿を晒す屈辱と羞恥を、そのまんま自分の身に置き替えてみる……
 その瞬間、例えようもない興奮に襲われ、ジュンとお股が湿ってきた。
 うわああ、お股が滅茶滅茶潤んでる!

 そしてそれは、触手服に完全にバレてるはず……

 更にそれは全体意思として、今目の前にあるベッキイの彫像に仕込まれた触手たちにすら伝わっていることだろう。


「おかえり。大丈夫だったかい?」
「ハンカチありがとうございました。洗ってお返しします」
「ああ、気にしなくていいよ」
「あの…… 誰か訪ねて来ませんでした?」
「来たよ。遭わなかったかい?」

「……遭いました……」

「私もここは永いが、まあ、最長で2ヶ月くらいだから」
「ひいいッ!! 2ヶ月!!」
「そうだね、随分前だけど」
「おしおき期間が終われば解放されるんですね?」
「あの青年はそんなこと知らないだろうから、相当とり乱してたね。自殺とかしなきゃいいが」
「いろいろありがとう」

 茂み越しにベッキイの彫像を見ながら小路を通り、勝手口から控え室に戻った。

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