あの子に貞操帯
4 採寸と注文
4 採寸と注文
翌日、結局学校では切り出せぬまま放課後になってしまった。
昨日と同じ様に校門を出ると、案の定小竹原の待ち伏せに合った。
「遅いぞー」
「教室の出口で奈良橋に捕まってたんだ。悪い」
「知ってるわよ。行こっ」
「うん」
昨日のスポーツクラブへ行き、またランニングしてから泳ぐ。
ぐはぁ!
小竹原は昨日と違う水着だ。
デザインは昨日のと全く同じ、前はハイレグで背中は大きく円く明き、ヒップは半Tバックのようなカットだが、昨日の蛍光色のツートンに対して、今日は黒の単色だ。
小竹原はよほどこの水着のデザインが気に入っているのだろう。
一通り泳ぎ終わってプールサイドのリクライニングチェアで休んでいる時に、勇気を振り絞って聞いた。
「採寸どうする?」
短い質問だが、貞操帯のことを知る者には充分な内容だ。
モデルのような肢体を無造作にリクライニングチェアに預けていた小竹原は、俺が質問する瞬間までは悪戯っぽい眼つきできょろんと俺を見ていたが、俺が質問を口にしたとたん瞳孔がキュッと縮んだように見えた。
直前まで俺を見ていたはずなのに、瞳が俺を見据える位置から全く変わらないにもかかわらず、今は俺を見ていないのがはっきりとわかる。
瞳が濁ってしまって、目に映る俺ではなく、小竹原自身の脳内にある別な妄想の映像を凝視しているようだ。
そして急に涙を浮かべた。
俺は焦った。
何かまずいことを言ったか?
いきなり採寸の話題なんて性急すぎたか?
しかし、まっくでの会話からすれば、性急すぎということはないだろう。
「うーー。 うーー。 神山くん、今あたしのおへそより下の方を見たらコロスーー」
いきなり物騒なことを言うので慌てて目を逸らせたら、パッとチェアから立ち上がってタタタとシャワーの方へ走って行った。
一瞬、立ち上がった小竹原の尻の下からリクライニングチェアまで、銀色の長ーい粘液の糸が引いて、すぐにプツリと切れた。
俺はしばらく何が起きたのかわからなかったが、すぐに自分のタオルで小竹原の座っていた場所を拭い、自分のチェアに戻った。
俺は恐る恐るタオルの匂いを嗅いだ。
何か、なつかしい柔らかな匂いがした。
しばらくしたら小竹原が戻って来た。
「へへ、ごめんごめん」
小竹原はタオルを畳んで座布団のようにしてからチェアに敷き、その上に腰かけた。
「や、やっと本題だね? うふふ。ついに採寸かぁ…… あのポーズでやるの?」
「うん」
「はふっ…… そ、そうだよね。き、基本だよね」
小竹原の腕には、また鳥肌が立っていた。
「基本てわけじゃないだろうけど、アレは貞操帯スキーのロマンでしょ。やるにしても、やられるにしても」
「あの…… はだ、はだ…… か?」
「上はブラとか水着とか着けててもいいんじゃない? それより問題は毛だよね」
「い、いいよ。頑張って全裸でやるよ。 ……毛はねぇ…… な、無いの。生まれつき。あ、あんまりだよね、赤ちゃんみたいで」
「そ、そ、そうなんだ。でもそれって貞操帯するのにお手入れ不要ってことだよね。すごく手間が省けると思うよ。下手すると永久貞操帯だってできるかも」
「え! 永久〜!? あぁ……!」
「ちょっと小竹原さん、大丈夫?」
チェアに腰かけて話ながら、小竹原は一瞬意識が飛んだようにボーッとなった。
顔も上気していて色っぽいことこの上ない。
「……アハ、もうバレてるよね? あたしがエッチなお汁(つゆ)ダダ漏れなの」
「う、うん…… まぁ……」
「あたし、神山くんと貞操帯の話をし始めてから、毎日オナニーが止まんないの! とうとうあたしの中のヘンタイが剥き出しになっちゃったぁ! あぁぁん……」
上気した顔に切なそうに眉を寄せて、辺りを憚った小さな声ながらも、語気の強い調子で心の中を吐露する小竹原。
俺は普段気の利いたセリフなんてとても思いつかないボンヤリしたヤツなのに、今だけは変態パワーのなせる技か、今の小竹原の気分に一番合うセリフがすらすらと口に出た。
「毎日オナニーでもいいじゃないか。どんどんやれよ。貞操帯が来たらそれも出来なくなるんだから。俺が小竹原のヘンタイオナニーをキッチリ管理してやるよ。しかし管理されることがオカズだなんて、本当に小竹原さんは変態だな」
「あ! あああ! はあアアアッ……!!」
小竹原は水着の股を直すような素早い仕草で、股間を指で数回刺激したあと、自分の体抱いて前屈みになり、体を震わせてしばらく痙攣した。
「あぁ…… こんな公(おおやけ)のプールサイドでイッちゃった……」
俺は慌てて周囲を見回した。
まだビジネスマンの人たちが来るに早い時間だったので俺たちだけしか居なかったのが幸いだった。
「あたしも、どこかでハジけられる自分を模索してたんだと思う。でも、ブレーキ効かなくなりそうで、怖くて…… どこかで誰かに繋ぎ留めてもらいたかったんだと思う。 ……いいかな?甘えても」
「うん」
「神山くんて何でも『うん』だね」
「うん」
「あはははは。 帰ろうか。 あーべとべとだぁ」
俺は女の子がイクところを生で見てチソコ煮え千切れそうだった。
ふと自分の股間を見ると、俺こそ先走り汁が水着から水滴のように染み出していて大恥だった。
生地が水着だと、男の場合は染みになって広がるのではなく、葉に載る朝露のようにキレイに水滴状に浮き出るなんて初めて知った。
「あ! 神山くんも変態だぁ!」
監視員も居ないのをいいことに、小竹原は俺の水着に浮き出た先走り汁を指先でキュッとすくった。
「はうッ!」
水着の上からとはいえ生まれて初めて他人にチソコの先を触られて、あまりの衝撃的な快感に反射的に腰を引いた。
「はむっ」
何をするかと思えば、更衣室に向かいながら小竹原は俺の汁のついた指を自分の口に入れた。
「わあっ! やめろよ! 汚ねぇぞ」
「あたしのを見た代金だよ」
「そ、そんなモンが代金でいいの?」
「んー、味しないんだね」
「知らねぇよ」
「あはははは」
更衣室前で小竹原がハタと立ち止まる。
「採寸用の計測キットって、今持ってるの?」
「うん」
「恥かいたついでだから、今測ってよ」
「ええっ? どうやって?」
「今、誰も居ないでしょ? 会社に勤めてる人たちが来る時間帯までまだ30分以上あるから、あたしジャージに着替えてそっちに行くわ。シャワールームで測って」
「う、うん」
一旦2人で男女それぞれの更衣室へ入る。
俺は荷物の中から自作の計測キットと書類を出し、油性サインペンを用意した。
女の子の貞操帯の採寸。
ネットで貞操帯を知った時から、ずっと憧れていたこと。
何度も頭の中でシミュレーションした。
実物を前にして同じようにできるかどうか分からないが、一応そつなくこなす自信はある。
プール側の戸が開き、ぎっちりジャージを着込んだ小竹原が入ってきた。
髪の毛はジャージの中へ入れて、サングラスをしてる。
そのまま俺の横を通り過ぎ、シャワー室へ直行した。
「はやくー」
シャワー室から声がする。
俺は水着のまま、計測用具をまとめてシャワー室へ行った。
ここのシャワーブースは上から下まで扉があるタイプなので、2人で入っていても外からはわからない。
俺が入ると小竹原はもうジャージを脱いでいた。
俺の顔をチラッと見て、黒い競泳水着の肩紐に手を掛ける。
自分自身に言い聞かせるように短く「ウン」と頷いて、スルリと水着を脱いだ。
パパッと脱いで足から水着を抜き取ると、小竹原の腰にはまだベージュ色のサポーターが残っていた。
こんなハイレグの水着にもちゃんとそれに合うサポーターがあることに感心していると、すぐにスルリとそれも脱いで、俺の目の前で本当に全裸になってしまった。
俺のチソコは水着を破りそうなくらい勃起していた。
「めっ、命令……してよ……」
雑誌のグラビアがそのまま、目の前で立体になっている。
しかも男の俺が見ても切なくなるほど、乳首は固く勃起している。
股間は本人が言う通り飾り毛一つ無く、大人サイズの幼女のような割れ目から美しいピンクの肉ひだが僅かに覗いているのが目に痛いほど淫媚だ。
肉ひだの下部から光る突起の頭が見えている。
あれがクリトリスか?
こんなに飛び出てていいの?
「はっ…… はやくぅ、いじわるぅ……」
涙目で小竹原が訴える。
「ご、ごめん、綺麗なんで、見とれて……」
「ありがと。でも本題を、ね?」
俺はゴクリと生唾を呑んでから、少し裏返りそうな声で言った。
「じゃぁ、手を頭の後ろで組んで、足を肩幅くらいに開いて」
「はふっ…… はい……」
蕩けそうに淫らな微笑みを俺に向け、従順に貞操帯の計測をするときの作法とされているポーズを取る。
肌が触れそうな狭いシャワールームで、俺から視線を逸らして正面を見据え、手を頭の後ろで組み、足を開く小竹原。
一番隠したい部分から一番遠いところで、手錠を掛けられるでもなく自らの従属する意思で手を組み、トロトロに濡れて憚らないオマソコを自ら開示するように股を開くその小竹原の心中を察すると、ただでさえ光輝く肢体なのに、その後ろから後光が差すようにさえ見える。
「エッチな裄野(ゆきの)の、あ、あそこを管理するための、貞操帯の計測をお願いします。 ……はアッ!」
囁くような小声で呟いて、最後に大きくあえいだ。
「よし」
俺は小竹原の腰に計測キットのベルトを回すと、ぎゅっと締めて留めた。
「本当は一度仰向けに寝ないとダメなんだけど」
小竹原はサッと床に寝て、腰ベルトと腹の間に手を差し込んで、「ゆるいね」と言った。
シャワールームの狭い床に仰向けで、股を開かざるを得ないので、もう小竹原のオマソコ見えまくりだ。
俺がその場でベルトを締め直すと、すぐに立ち上がってさっきと同じポーズを取った。
俺はすぐに股間を通るベルトを取り出し、金属リングを取り付けた部分にペンを通した。
それを小竹原の尻の穴に突き立て……ってマジかよ?
「いいよ……」
実際の手順が頭に入ってる小竹原のその一言は、彼女の決意の固さを物語る。
俺だってここまでやって、中途半端は嫌だ。
傍にあったせっけんを薄く塗って、小竹原の尻肉を捲り、ピンクにすぼまった可憐な菊模様の肛門に突き立てた。
「ウッ……」
小竹原は真剣に辛そうな顔をしている。
しかし俺はそれを無視し、背中側の中心でそのベルトを留めた。
すかさずベルトを小竹原の股を潜らせて前に回し、オマソコに軽く食い込むようにして正面で留めた。
次に尻の上で左右Yの字に分かれるチェーンに相当するベルトも前に回して留めた。
これで完成だ。
小竹原の尻からペンを抜く。
「あうっっ。 ちょ、ちょっとペン貸して」
小竹原がタオルでペンを拭う。
「そのまま屈んでみて」
小竹原はヒンズースクワッドのように屈んだ。
特にベルトがずれたりはしないようだ。
「こんどは前屈」
言われた通りに前屈する。
「平気みたい」
「よし」
俺は計測項目の書かれた書類を元に、必要個所に油性ペンで印を付け、項目の番号を書き入れた。
項目の内容が理解できていれば、計測は一瞬だ。
「できた」
ベルトを全部外し、歪まないようにまとめて仕舞った。
「早く出ろよ」
「うん」
サポーターは穿かず水着だけサッと着て、ジャージを着てサングラスを戻し、手にサポーターを握り絞めて小竹原が出て行った。
俺も荷物をまとめ、シャワー室を出た。
着替えてラウンジに戻ると、小竹原がもう座っていた。
今日は髪の毛は濡れっぱなしだった。
「おつかれー」
「おう」
「あのね、お願いがあるんだけど」
「なに?」
「今日その計測キット借りて行ってもいい?」
「えっ? どうして?」
「自分でも採寸してみたいの。採寸ポーズのロマンはロマンとして、高価な買い物だし、自分自身の着心地に直結するから、自分の目でも確認したいのよ」
「ああ、それならいいよ。ていうか、是非」
「ありがとう」
小竹原に計測キットと採寸表を渡した。
今日は夕方早い時間帯なので、まだ陽が高い。
濡れた髪に夏の夕方の風が心地よい。
「じゃぁね。あたしこれからもう1回自分で格闘してみる」
「うん、明日返してくれよ。早速注文するから」
「おっけー」
翌日、小竹原からキットを返してもらうと、既に表に数値が記入されていた。
「一応書き込んだけど、神山くんも測ってみて」
「うん」
今日もスポーツクラブに寄ったが、さすがに今日は萌える出来事は無かった。
しかし、毎日小竹原の水着姿が見られるというのはなんとも贅沢な話だ。
俺も少し体調がついてきたので、ランニングのメニューなども少しハードにしてみた。
だんだん体も締まって来た気がする。
楽しく運動して、いつものように小竹原と別れた。
帰ってから着替えるのももどかしく包みを開け、机の上に計測キットを平らに置いた。
一緒に布メジャーが入っていた。
これですぐ測ることができる。
オマソコの長さなど、本人が測った方が絶対正確そうな数値は小竹原の値を採用するとして、ほかの数値についても3回確認したが、殆ど違いは無かった。
俺の付けた黒の油性ペンの印に添えて、赤の油性ペンの印があったので、小竹原はただ俺の計測をメジャーで測ったのではなく、自分でも位置を確認したということだ。
これなら間違いないだろう。
小竹原の携帯に電話する。
「よう、今電話してて平気?」
『大丈夫だよー』
「計測バッチリだったぜ」
『ほんとー? よかったー』
「オプションどうする?」
『あんまり欲張ると高くなるよね』
「でも2人の予算合わせると、少しは余裕あるよ」
『あのね、まずは神山くんのお金で買って?』
「ああ、もとよりそのつもりだったからいいけど」
『だからシンプルなのでいいよ』
「わかった。でもアナルディルドーくらいは買ってもいいか?」
『……ぁぁぅ…… ……まっ、任せるよ。KH(KeyHolder=貞操帯鍵管理者)は神山くんなんだから。めーれーしてよ。従うよ』
「うん」
『それで注文してみて、最悪ピッタリ合わなくて常時着用が無理なら、誤差についてメーカーに連絡して、あたしのお金でもう1つ買うよ』
「そこまで……」
『あたしそのくらい真剣だし、ずっと憧れてたんだもん』
「わかったよ。じゃ、早速注文するな」
『おねがいしまーす』
しかし2つ買う気だったとは恐れ入ったな。
小竹原の真剣さがわかり、おれはKHとしての責任の重さに手の中にジットリ汗を握った。
確かにそうだ。
他人の性を完全に支配してしまうのだから、その真剣さというのは単なるセックスよりも重いのではないだろうか。
俺はKHとして小竹原の日常生活の細部にまで神経を遣い、『性器の拘束による性快感の剥奪』という目的を達成し、『貞操帯による性器および周囲組織の怪我』という事故を回避するようにきちんと管理をしなければならない。
そして、貞操帯が露見することにより社会的立場の問題が生じることも未然に回避しなければならないし、お互いの家族に迷惑をかけるわけにもいかない。
実際バレたら、どんなに『好きでやってるんです』と言っても理解されないだろうから。
そうなるとこういったことは夫婦でやるのが一番なんだろうけど、まぁそこまで理想を追及してもいられない。
小竹原と結婚?
いや、それは美味しすぎるだろう、俺。
いずれにしても小竹原の言葉で、俺にも現実のKHとしての自覚を持つきっかけが出来た。
実際注文してしまうと、出来上がって来るまですることが無い。
俺と小竹原は相変わらずスポーツクラブ友達と言う感じだ。
前述の通り、俺は自分が傷つくのが怖くて、自ら積極的に恋人という関係にはなりたくない。
それはズルくもあるが、純粋に貞操帯への興味からKHを求めている小竹原のような人間にとっては、勝手に恋人やご主人様気取りにならないという点では好都合なはずだ。
小竹原の口車に乗っていろいろなメニューをこなすうちに、俺もそれなりに体が出来て来た。
水泳の授業の時、クラス女子の視線が痛いぜ、と思っていたが、結局彼女が出来るなどの実質的変化が何も訪れぬまま夏休みに突入してしまった。
もちろん、小竹原が彼女になってくれれば最高なのだが、今の俺がそこまで高望みをするのはまずいし、万一小竹原に『神山くんに頼んだのって貞操帯の管理だけだなんだけど?』なんて言われようものなら、俺はもう立ち直れないかもしれない。