あの子に貞操帯

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 俺は自分の部屋で鍵を3組に分け、1つは封筒に入れて封印し、親父の貸金庫へ入れさせてもらうよう頼んだ。
 もう1つの鍵は赤いリボンを結んで俺の定期入れに入れ、もう1つの鍵は机に仕舞った。

 しばらく貞操帯のことから離れようと、CDから曲の転送なんかを黙々とやっていた。
 夕方になったころ、ゆきのから電話が掛かって来た。

「どうした、大丈夫か?」
『へへへ、随分慣れたよぉ〜 でもスッゴイね。あたしのオマソコ檻の中だぁ、あははは』
「ヘンに明るくねぇか、お前」
『いや、そうしてないと気が狂う』

 そこだけ急に真面目な口調で言うもんだから、ゆきのの緊張感がいきなり伝わってきて俺はドキリとした。
「そ、そうか……」
『でね?でね?でね? ハンズつきあってよ。いやー、買うものいっぱいあるよ』
「今からか?」
『うん、夕飯おごるよ』
「そりゃいいけどさ。……わかった。ちょっとお袋に断ってくる」
『折り返し電話よこせやゴルァ』
「へーいへい」
 それこそ台所で夕飯を作っている真っ最中のお袋に夕飯はいらないと告げ、再び部屋に戻ってゆきのに電話した。
「言ったぜ」
『んじゃ出るわ。ねぇ、ぱんつってそっち持ち?』
「なっ? わけわかんね」
『だーかーらぁ、ぱんつ穴明いたら、買ってくれんの?』
「べ、べつにいいけど、あんまり高いのは無理だぞ」
『3まい千えん。ぷふー』
「あ、OK」
『じゃ、駅だな』
「改札?」
『んー』
「了解」

 俺が先に着いて待っていると、ゆきのが現れた。
 タンクトップに、切れ上がりの比較的甘いデニム地のホットパンツ。
 足はスニーカーで、安っぽい麦わら帽子を被り、髪は後ろで一まとめにしている。
 スタスタと普通に歩いて来て、「ういす」と言って手を挙げた。

「おう、平気か? 何度もきくけど」
「プッ、『ういす』とかごめんねぇ。最近あたしスレまくりだよね。それはそうと、平気じゃないわよ。もうぱんつ2枚穴あいたぁ!」
「ええっ? なんで?」
「あのドイツ製のABUSとかいう南京錠、角がすごく立ってるのよ。なんか貞操帯見えそうで、仕方なくホットパンツ系にしたら角で擦れてあっと言う間。 スカートでも穿けばいいんだろうけど、今の時期ミニ以外だと暑くって死んじゃうよぉ。言った通りミニじゃ見えちゃいそう」
「わかった、わかった。ちゃんと弁償するよ」
「サイトとか見てるから知ってると思うけど、常時装着してる人は穴明いたり汚れたりしていいように、安い下着を使うみたいよ」
「だから3枚1000円か。100均でも売ってそうだよな」
「100均のは悪いけどデザインがね。この麦わらいいっしょ? これは100均だよ」
「ふーん」
 嬉しそうにくるりと回ってみせるゆきの。

 この体にあのステンレスの塊がまとわりついているなんて信じられない。
「こうしてみると、とても貞操帯してるようには見えないな」
「へへへ」
 ゆきのは俺の手を取り、俺の手の甲を自分の下腹部にぶつけた。

 ―― ゴン ――

「いて!」
「ね?」

 呆然と手を引っ込めながら、俺はズボンの中でチソコがメリメリと大きくなっていった。
 女の子の服に浮き出たパンツラインを目で割り出すように、ゆきののホットパンツに内包された貞操帯のラインを目で追う。
 確かに、前のヘソ下のボタン部分が不自然に飛び出し、下腹部から股下までの中央も不自然に飛び出している。
 デニム地のような厚手の生地だと指摘されなければわからない程度だが、もっと薄い生地だとはっきり目立つだろう。

 電車に乗った時のゆきのの所作も至極普通だ。
 貞操帯装着初日とはとても思えない。
 あの服の下でゆきののマソコは檻に閉じ込められているなんて……
 あらゆる煽り文句を次々に思いつくが、さすがにここでゆきのに淫乱になられたらどう対処していいかわからないので、慣れるまで我慢だ。

「で、何買うんだ?」
「さっき言った通り、鍵の角がすごいのよ。だからまずヤスリね。面取りしてよね」
「ああ」
「それから、ウレタン素材とかスポンジ素材とか。ちょうど鍵の辺りをなだらかに覆うようなパッドを作るの。うまく出来れば下腹部ポッコリでぶに見えるだけで、『アレ』してるようには見えないでしょ?」
 ゆきのは一応周囲の乗客が気になるのか、『貞操帯』とは言わない。
「ポッコリでいいのかよ」
「あたしあんまり自分のスタイルとか気にしないんだ。前にチョロっと女友達の間で喋ったらコロされそうになったからもう公言してないんだけど、水泳好きだから泳いでるだけで、ダイエットとかシェイプアップとか意識してないし、美白なんて無縁なのに勝手に白いし。顔の造作だって親からもらったそのまんまなわけでしょ?」
「たしかに、必死でキレイになろうとしてるヤツは怒るな、そりゃ」
「そんなこと言ったってあたし知らないもん。だからちょっとくらいお腹ポッコリでもいいのよ。本当にポッコリなわけじゃないし」
「なるほど」

 目的の場所は夏休みということも手伝って、平日なのにかなり混んでいた。
「上から見てく?」
「目的がはっきりしてるから、ソッチ先ぃ」
「へーい」

 まずヤスリか。
 ちょうど係の人の手があいていたので、真鍮の面取りの話をして、適当なヤスリとサンドペーパーを買った。

 次に素材の階。
 ゆきのは片っ端からウレタンフォームの板や、スポンジ板、ゴム板などを触り散らかして、幾つかを選び出すと俺に差し出した。
「ん。」
「えー? 俺が払うのかよ」
「とーぜんでしょ?」
「わかった、わかった」

 会計へ向かう途中で、俺は足を止めた。
『超硬質レジン  従来のものよりかなりハードです。一度封入したものは通常の工作道具では掘り出せないほど。』
「すみませーん」
「はい」
「これって、絶対割れないんですか?」
「所詮プラスチックですから、大型の工具を使えば傷つきますよ」
「何か封入したら、元通り取り出すのは無理でしょうか」
「うーん、外が割れるほどの力だと、中も壊れますね。金属板なら変形したりするでしょうね。もし中身を無事に取り出したいなら、こういったゴムのディップ液で固めてから封入すれば、外が割れても中は無事である確率が高いですね」
「ありがとうございます」

 俺はいいことを思いついた。
 蛍光ピンクのゴムディップとその超硬質レジンキット、金メッキ液、その他に俺が鍵を首から下げるチェーンと、ゆきの用のチェーンを買った。

 時間が余ったので、面白そうなフロアを冷やかしつつ化粧品を小分けにするキットを買った。
「メシってここかよー」
「文句言わないの。はい割引チケット」
 帰る途中にあるファーストフード店にゆきのと入った。
「へー、新メニューか。あれ? お前、ポテトだけ?」
「うー、ちょっと恐くてまだ食べられない」
「ご苦労様だな」
「今日は夜中までお裁縫だなー。でもあの素材ならうまくいきそうだよ。明日は一応スポーツクラブ行くことにしておいて」
「わかった」
「で、あの部屋集合でお願い」
「いいぜ」
「やっぱり事前に見てもらわないと、特に後ろとかわからないから」
「そうだよな。ベルトはどんなことしても浮き出るもんな」
「さて、また帰ってから貞操帯と格闘だぁ! 今日はちゃんとしたお風呂に挑戦してみる。指が入るかとか、どこまで洗えるかとか」
「あの穴だと、爪楊枝とかで刺激できるんじゃね?」
「ひーっ! 恐ろしいこと言わないでよ。ただしクン自分のモノの先っぽ爪楊枝でつついてイケる?」
「ひー! そりゃ無理だ」
「でしょ? コヨリは突っ込んでみたわよ。でも無理だった。歯間ブラシも爪楊枝と同レベルね。出血しそう」
「さすが現代の貞操帯」

 俺もあまり食事が進まず、ハンバーガー1個だけ食べて店を出た。
 ゆきのをまた家の近くまで送り、家に帰りついた俺は、早速計画を実行に移した。

 ゆきの用の鍵をリングから外し、バラバラの2つの鍵にした。
 そのうちの貞操帯本体をロックする南京錠の鍵を糸に吊るし、ゴムディップの缶を開け、ドボンと漬ける。
 ある程度乾いたら、ゴムに厚みを持たせるため計3回くらいディップする。
 ぼってりした鍵のシルエットを持つ蛍光ピンクのゴムの塊が出来た。

 今度は超硬質レジンを硬化剤と混ぜ合わせ、家にあった金箔のクズを混ぜ、ペンダントヘッドの型に流す。
 鎖を通すための環を埋め、ゴムに包まれた鍵を押し込み、残りのレジンを注ぐ。
 ここでも、ゆきのの自由が封印されてゆく……

 俺はなぜだか猛烈に興奮してしまい、材料を片付けたあとのレジン臭い自分の机で激しくオナニーしてしまった。
 出来上がったペンダントヘッドはあまり芸術的とは言えないが、そこらにあるものよりはマシに見えた。
 細かい金箔の舞う超硬質クリアレジンの中に、蛍光ピンクの塊が封印されている。
 ゆきの用に買ったチェーンをそのペンダントヘッドに通した。

 俺は自分用の鍵束と、ゆきの用の自慰防止板の鍵を金メッキ液に浸し、ピカピカに仕上げ、ゆきのとお揃いのチェーンに通した。

 最初に妄想した時の赤いリボンと定期入れの組み合わせは、残念ながらあまり現実的ではなかった。

 アロエ軟膏とワセリンを化粧品用の小分け容器に移し、すべての作業を終えた。


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