あの子に貞操帯

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  12 自虐ぢごく  


 12 自虐ぢごく

 翌日。
 朝イチにゆきのから電話が掛かって来た。
『いひーん、生理ンんなったぁー だからごめーん、プールなしィー』
「それはいいけど、大丈夫か? 外すか?」
『へいき。でもアレ買ってよー ビデー、携帯ビデー』
「い、いいけど」
『やったぁ、今日はフツーにおデートの日ね? 駅ビルのドラッグストアが安かったよ』
「お前、そんなことチェックしてんの?」
『ずっとネット見て貞操帯にあこがれてた頃から、本当に嵌めたら必要になるだろうなぁって見てたんだもん。あたし量少ないしサラサラだし匂いも少ないから、ナプキンとビデで多分大丈夫だと思うけど、自慰防止板の下で固まって匂ったりするようだったら、せめて自慰防止板だけでも外して洗ってぇ』
「そりゃいいけど」
『それとさ、そん時自分で洗っちゃダメ?』
「一応ダメ。どうしようもなければ考えるけど」
『うー、わかった。どこ集合?』
「駅ビルなら駅でいいだろう」
『うい』
「同級生とかウロウロしてるかもしれないから、帽子とか被って来いよ」
『ういす。久々にメガネで行くぜ』

 改札近くで待っていたが、ゆきのはまだ来ない。
 ちょっと心配になって携帯を取り出したら、すぐそばで声がした。

「あほー」

 ギョッとして振り返ると、子供っぽいツインテールにフレームレスのメガネを掛け、ホルダネックの真っ赤な水着のトップをブラ代わりに薄いヒラヒラのタンクトップを着て、カットのきわどいデニム地のホットパンツにヘビメタ調のベルトを締め、ピンクのペディキュアがケバい足にサンダルをつっかけた女の子が立っていた。
 首には俺が作ったペンダントが下がっていて、ペンダントヘッドの横に小さいビニールケースが下がっていた。

「ゆっ、ゆきの?」
「へへーん、マジでわかんなかった?」
「ツインテールにだまされた」
「やったぁ。あ、そだ。まずこれね」
 俺の音楽プレーヤーを返してよこす。

「ちゃんとスタンプ持ってるー? 押して押してぇ、昨日の1ポイントと合わせて3ポイント」
「おま、どうせ録音したの『き・も・ち・い・い』だけだろう?」
「うわ、バレてーら。いいじゃん、最初だからサービスしろよぉ、あたしだって股から出血大サービスなんだからぁ」
「おまえ、それシャレになってねぇぞ」
「キャハハハ」
「まぁ、特別な? ほら、カード出せ」
 ゆきのは胸の谷間からチェーンを引き上げ、小さなビニールケースに入ったお手製のスタンプカードを出した。
 1・2・3と書かれた欄に猫のスタンプを押す。
 ゆきのはそれを口でフーフーと乾かしてからビニールケースにしまった。

「それにしてもすごいカッコだな。後ろケツ肉はみ出てるぞ」
「だってぇ、涼しいんだモン。下も結局水着だしィ」
「貞操帯が見えそうとかはみ出そうとか言っといて随分大胆じゃねぇか」
「あぢいのには勝てないのォ〜 あぢいと死んぢまうよぉ。それに、万一見えても平気っぽいでしょ、今の流行として。ほら、あの人も、あの人も、こんなカッコだよ? あ、あれ! あの人なんて、あたしよりスゴイ!」
 改札前を通り過ぎる薄着の女性を次々と指差す。
「まぁ、それはあるかもな。ゆきのが平気ならべつにいいや」

 ゆきのと並んで歩くと、なんだか全く別人とデートしてるみたいで奇妙な感じだ。
 ゆきののサンダルがペタシペタシとうるさい。
「それはそうと、生理の方は大丈夫なのか?」
「電話で言った通りだよ。前からネットで読んで対処考えてたけど、あたしは汚れが溜まらなければナプキンで平気みたい。でも3日目4日目になると無事かどうかわからないから、様子見だね。あたし、サラサラで軽い代わりに、ちょっと長く続くんだ。もういい加減終りかなーって思っても、ちょぴっと1滴ついたりすんの」
「ふーん、大変だな。ま、困ったら外してチェックするよ。そうそう、そろそろプラグの訓練も再開したいよな」
「はふぅ…… 前を閉鎖され、後ろにも突っ込まれだと、本当に狂っちゃうよ……」
「生理終わってからでいいよ。マターリ逝こうぜ」
「うん」

 真っ先に駅ビルのドラッグストアに行った。
 ここは雑貨やアイデア商品も多く扱っていて、モノによっては100均よりも安い。
 テーブルコショウが100均だとバカ正直に105円なのに、ここだと税込みで98円。
 でも100均だと105円で買える七味唐辛子が、日付が新しいとはいえ、ここだと120円。

 目的の携帯用のビデは3種類ほどあり、ゆきのの好みで、タンク容量の大きいものよりも全体が小ぶりで持ち歩きに便利なものを買った。
「ああっ! これ欲しいっ!」
 ゆきのが興奮したのはシャワーノズルだった。
 既存のものと交換して使うようになっていて、通常のシャワーの他に細いジェット水流が出るようになっている。
 台紙の写真を見ると、『風呂場の目地汚れも一撃!』とある。
「買って買ってー」
「だだっ子か、おまww でも、いいぜ」
「2つね」
「ハァ?」
「だって、うちの分とマンションの分……」
「チッ、しょうがねえな。 あー貞操帯は金かかるー」
「それもKHの資質のうちかな」
「ちぇーっ」

 昼飯は、割引チケットが残ってるとかで、まーたまっく。
 ゆきのが普通にセットを注文して、普通に食べてるのを見て、俺はなんだか安心した。
 その後デザートを次々と食うので、逆の意味で心配になった。

 俺は家族との用事があったので、ゆきのとは昼食のあとすぐ別れた。
 しばらくしたら携帯に電話があった。
『どっちも便利なモノだったよ、ありがとー』
「よかったな」
『これなら生理中ずっとこのままでも大丈夫そう』
「うんうん。清潔にしとけよ」
『うん、じゃぁねー』

 ゆきのの声を聞いて、音楽プレーヤーのことを思い出した。
 『き・も・ち・い・い』だけでも耳元で聞いてやれ。
 ゆきのは声もかわいいから、それだけ聞くだけでも得した気分になる。

 [PLAY]ぽちっとな。
『……
 ん? これで録音されてるの? ……まあいっか。
 気分を語れったってねぇ…… 結構、面と向かってストレートに語ってるしねぇ……
 今さら、何か感想ってあるかなぁ……
 んー、じゃぁとりあえず、自虐的ぢごくの寸止め、いきまーす!
 終われないオナニーの凄惨さが、何かの参考になればいいけど。
 聞いててイライラするだけかもよ。
 あ、そうそう、自分ひとりで聞いてよね。あたしに聞かせたらコロス! たのむよ?
 えーっと…… もちろん気付いてると思うけど、そうなのよ、おっぱいが自由なのよねー。
 いじっちゃうぞー? えヘヘ。

 …… んっ ……
 …… んっ ……
 …… んっ ……

 …… ぁぁっ ……
 …… ぁぁっ ……
 …… ぁぁっ ……

 …… ああっ! ……

 …… ぁぁっ ……
 …… ぁぁっ ……

 …… ん ……

 ちょっと乳首いじっただけで、あっという間に乳首がカチコチで痛いよ……
 ひゃうっ! つまむと飛び上がるっ!
 心臓が吸い出されるっ!
 ただしクンのおちんちんじゃないけど、乳首を単調な刺激でずっと擦るとイキそう!
 でもイケないの!

 はぁっ……!

 はぁっ……!

 無駄だって知ってるのに、アソコいじっちゃうの!
 ぱんつ下すと…… うわ、大洪水…… ハズい……

 指で、指で! 自慰防止板を、ああっ!

 恨めしいいぃぃ!

 もどかしいぃぃいいい!!

 上から! 押すと! ほら、にちゃって、横から、汁がぁ! このッ!

 ああ、歪みそう!
 痛ッ! 挟んだぁ!

 この下! そこにクリ見えてるのに!
 クリ、そこにあるのに!

 いやだよぉ…… ひどいよぉ……

 手で、叩いたら!?

 ―― パン、パン ――
 ―― カチャッ! カチャッ! ――

 痛ぁーーーい! また挟んだぁ!!

 そうだ! お尻! お尻!
 トイレッ! お浣腸!

 ―― ガサガサ ――

 ―― バリバリ ――

 んーーー! あああん!!

 液つめたい……

 ……

 ……

 エヘッ…… ゴロゴロ言ってる……

 ……
 ……

 ン……

 ウ……

 ンン!

 ……出る……

 うわ!

 アッ、アッ、アッ! どうやって止めるのよこれ! 一時停止ィ!!

 ああもういい!

 ―― ドタドタドタドタ…… ――

 ……
 ……

 ふぅ……

 えと、ローションは?
 だぁっ! キャップ固く締めすぎたぁ!

 ―― プチュ ――

 ……

 ああン……!!

 ッはぁぁン……

 ごめん…… 実はたまに指でいじってるのぉ……

 でも、おっぱいといっしょで、いじっちゃうと取り返しがつかなくなるのぉ……
 

 ああふ……
 ああふ……
 お尻きもちいい……

 どんどん……

 どんどん昇る……

 自分の指を…… えい!
 きゅきゅって!

 挟んだりして……

 うあ、吸いつく!
 お尻の穴が生き物みたいだよぅ……

 指が熱いよ。
 本当に同じ体温、同じあたしの体の一部?
 指が熱で蕩けちゃう……

 どんどん……

 どんどん昇る……

 すごいクル……

 クル……

 く〜〜 あ〜〜 あああーーーー!! きいっ!

 きいいいいい!
 どうしてっ!
 どうしてイケないのよおおお!!
 薄皮1枚の壁があるッッ!!

 太さ?!
 太さだよ多分……!
 指だと細すぎッ!

 きいいッ!
 きいいッ!
 きいいいいいいいいいッ!

 くはっッ!
 はアッ……!
 はアッ……!
 はアッ……!
 はアッ……!

 イケない……

 惨めだよぅ……

 性器を封印されるってこんなに惨めなんだ……

 快感剥奪って、普通に与えられてる性の楽しみを、本当に根こそぎ奪われちゃうんだ……

 イメージだけで貞操帯に憧れてたけど、いざその身分になってみると、ネットとかでは分からない本当の惨めさがどんどん現実になるよ……

 あたしは今、快感の乞食だよ。

 ショーウインドウのおいしそうな食べ物を見てヨダレを流す哀れな乞食。

 しかもそのショーウインドウは自分の体にくっついてるんだよ。

 そこにあるの!
 そこに見えてるの!
 もともとあたしのものなの!

 ああ…… でも今は…… ただしクンのものなんだよね……
 あたしのオマソコ……
 あたしのクリトリス……

 ここに掛かってるこの鍵が恨めしいよ。

 ―― ガチャガチャ ――

 でも視覚的にも堅牢すぎて破壊しようという気さえ起こらないよ。
 手錠を掛けられたまま日常を暮らすようなものだよね。
 ただそれが見えるか見えないかってだけ。
 手錠は人目に見えるけど、貞操帯は見えないってだけ。
 本人にとっては、拘束感は見えようと見えまいと全く同じなんだよ。

 ベラベラしゃべってたら少し落ち着いて来たよ……

 でもね、またお尻やっちゃうんだよ。

 自虐ぢごくに嵌まっちゃったんだよ、あたし。

 こうなると自分じゃ止められないの。

 もう自分のことブッ壊しちゃうんだよ。

 たっぷりローション塗った、一番細いプラグをね……
 こうやって……

 ン……

 ン!!

 お尻のケーブルを脇へよけて、こうやってプラグを動かすの……

 はぁっ……! いいっ……!

 挿入時の犯され感が!
 引き抜く時の喪失感が!
 敏感な肛門の内面をプラスチックがすり抜ける、ヒリヒリした快感が!
 1ストロークごとにブッ飛びそうなほどきもちいい!!

 はうっ!

 はうっ!

 はうっ!

 はぁああああっぁぁぁぁ

 ……
 ……
 …… だめだよぅ……

 やっぱり擦っても擦ってもイケないよぅ……

 ふーぅ。

 さいごに2ばんめに太いプラグで自虐ぢごくの仕上げをしまーす。

 これね。
 これはもう、入れるだけ。

 …… んっ ……

 …… んーーーッ アアッ!!

 けっ、ケーブル戻して!

 これがっ!
 これがもっと極太にしたのがっ!
 いずれあたしのお尻にッ!

 いいいいいいいいいいい!!!

 この太さでこんなになっちゃうなんて!
 一番太いプラグや、貞操帯についてきたディルドーだと、一体あたし、どうなっちゃうの?!!

 くふっ……
 くふっ……

 また惨めな気分になってきた……

 すごいよ。

 手が、ぶるぶる震えて止まんないんだよ……

 惨めで、悔しくて、でも気持ち良くて、どうにかなりそう……

 腰が、ガクガクして、唇が震えて……

 悔しいよ……
 惨めだよ……

 オマソコ返してよ……
 あたしのオマソコ……

 あたしのオマソコ他人のもの……

 あたしのオマソコ鍵掛かってる……

 鳥肌立つほどきもちいい……
 自分を他人にあげちゃうのがきもちいい……

 はやくイキたいよ。
 ポイントくれるよね? 2ポイント。

 このあとね、自分のおっぱい揉みながら泣き寝入りしちゃうとおもうのよね。

 自虐地獄のあとっていつもそうだから。

 今のあたし、脳の中ドロドロなのにイケてないんだよ。

 察してね。
 もう狂いそう。
 このまま寝ちゃうんだよ……
 録音メモリー使い切ってたらごめんね。

 …… んっ……
 …… んっ……
 …… んっ……

 ここから先もう自分じゃわかんないから……

 …… んっ……

 …… んっ……

 …… んっ……
 …… んっ……
 …… んっ……

 …… んっ……

 …… ん? ……

 あれ? あれあれあれ?!!

 わーッ! 始まっちゃった!

 いや少し突っ張るなとは思ってたけど、ちょっと早くないか?

 もー!

 ―― ドタドタドタ…… ――

 ……』

 あとはほぼ無音だった。
 俺は危うく、手も使わずに射精するところだった。
 実際には出なかったけど。

 こんな……
 あいつの脳みそン中、どうなってんの?
 これって俺と駅ビルでデートする前の晩のことだろ?
 女の子ってこんなに乱れるもんなの?
 そして普通は、ああしてケロッとしてるもんなの?

 俺は取って付けたようにティッシュにビュルッと射精して、プレーヤーの電源を切った。


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