檻姫

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  五 エレキ排泄  

 ガチャガチャと音がして、バルベロッテと頭巾を被った男二人が入ってきた。
「ムーーーッ!!」
 憤りと、全裸の股間を正面から見られる恥ずかしさと、排泄物の匂いを嗅がれる羞恥とで、私は真っ赤になり、口枷の奥で叫んだ。
「ご気分は如何ですか、姫様。さすがに壮健な姫様といえど、もうお体の感覚はありますまい。おお、うんちも出されましたな」
「ムギーーッ!」
 男の一人が石台の下の便壷を新しいものと交換したので少しホッとした。次に、男二人で檻の格子の間から手を入れ、私の頭を押さえつけ、口枷を交換しようとする。舌を噛んで自害する隙も与えられず、木製の嵌みを嵌め込まれ、その上から金属の筒が押し込まれて固定された。
「少しは喋れますかな? しかし今度は恥ずかしい声を漏らされぬようにお気を付けください、ククク」
「ワルヘロッヘ! わらひは、こんらころれは、くっふくへぬお!」
「おお、勇ましい。しかし、姫様はこちらの方は如何ですかな?お得意か?」
 物心ついてから一度たりとも他人に触れさせたことの無い、秘所の入り口にいきなり触れられた。
「ひあ!!」
 他人に、男に、しかも敵に、恥ずかしい所を触れられ、私は屈辱と羞恥で真っ赤になって睨んだが、それでもバルベロッテは手を止めず、ピリッと痺れる私の何かを摘んだ。
「ひイッ!!」
「ククク、そのご様子では全くご存知無いようですな。女だてらに剣ばかり振り回して、肝心の「おんな」を放ったらかしですか? 大丈夫です、ちゃんと取り返して差し上げますよ。充分に…… そして後悔するほどにね…… ククク」
 バルベロッテは金属の棒を取り出すと、私の秘所に押し当てた。
「ひッ!」
 気力が半分尽きかけている私は、何をされるかわからない恐ろしさに、気丈に振る舞う術もなく、情けない悲鳴を上げた。
バルベロッテは、私の悲鳴など微塵も気にせず、棒を押し込んで来る。
 嫌…… 嫌……
 生まれて初めてそこに物を、しかも異物を受け入れる恐ろしさに息が止まりそうだ。しかし噂に聞く破瓜の痛みもなく、それを根本まで受け入れてしまった。 
「おや、出血しませんな。まれにお転婆な女性で、膜が自然に縮退してしまう方がいると聞きましたが、まさか姫様がとは! ハハハ」
 自分の性器が普通ではないと笑われた悔しさと、女にとって大事な一瞬を金属の異物に捧げてしまった悔しさからボロボロ泣いた。
「姫様お気持ちはわかりますが、百万歩譲ってよしんば姫様がここから逃げおおせ、城にお戻りになったとして、将来国の執政に携わるとき、何も知らないネンネな姫様と、何もかも経験してご存知の姫様では、下々の者の気持ちの理解も違おうというもの。何事も経験ですぞ?」
 だめだ…… この屈辱の空間に詰め込まれた極限の状態で言われると、詭弁だらけの屁理屈にも納得してしまいそうだ。
「こんどはこちらです」
 バルベロッテは今度は細い金属棒を取り出し、いきなり小用の穴に突き立てた。
「ひーーッ!」
 出すべき所に押し込まれると、心を砕かれるほどの屈辱感がある。
「そしてここ」
 最初にいじられた、ビクッとする突起に何かを挟み付けられた。
「ホあぁっ!」
 緩く挟まれているが、体の奥まで一本の紐で引っ張られているような不思議な感じがする。

 男達が牢内に、ハンドルのついた大きな木箱を持ち込んだ。そこから延びる3本の線を、私の秘所に付けられた3つの金属に繋ぐ。バルベロッテが木箱のハンドルをギリギリと何回も回し、レバーをガクンと引いた。
 ジジジジジジとゼンマイの戻る音がする。
「ハウ!!」
 わけもわからず、私は飛び上がった。
 いや、飛び上がることはおろか、身じろぎすらできないのだが、筋肉の反応としてはまさに飛び上がる感じだ。
「ハウ! アウ! やああァ!」
「如何ですかな? これは私が作りましたゼンマイでエレキを起こし、歯車の歯数に従って、小刻みに断続的にエレキを流す機械です。姫様以上に何も知らぬ妻も何人も居りましたが、固いつぼみもこれで緩くほぐれ、私を素直に受け入れてくれるようになりました」
「ハウ! ハウ! ハウ! ハアアアア! つよい! ひょっろつよいよぉ!」
「歯車が細かい歯、緩い歯、エレキ流しっぱなしなど、自動で噛み合わせが変わり、緩急自在に責める仕掛けです」
 バルベロッテはそう言いながら私の尻にも何かを押し込んだ。
「ひゃあああ! らりをいれら!?」
「これはお尻の中をきれいにする薬です。体内で泡立ち、大きな固まりとなって、便のカスを全て押し出します」
「やあああ!」
 たちまちのうちに治まっていた便意が再び渦を巻く。このままバルベロッテの目の前で排泄してしまうなんて、想像したくもない!

 ジジジジジジジというゼンマイの音に混じり、カッタン、カッタン、カタカタと不規則に回る歯車の音がするたび、私の体は檻に密着したまま、ビクンビクンと無理矢理爆ぜさせられる。
 首から下はもう身体が無いようにしか感じないのに、股を中心とした一部の器官の感覚は、かえって鋭く生きていて、私に全く初めての感じを呼び起こす。
 き、きもちいい……
 生まれてから今まで、一度も意識したことの無い器官が、ゆっくりゆっくりと解(ほぐ)し融かされてれてゆく。月に1回、血や下り物が出る面倒な穴にしか思っていなかったソコが、私をおかしくする。
 気恥ずかしい火照りに、全身が焼かれる。
 小用の穴がエレキでクンッと引かれると、小用の後の放心する甘気持ち良さが連続して襲ってくる。
 そして前の方の不思議な突起が、もうカチカチに硬いのが自分でわかる。
 こんな部分が私にあったのか?
 どこに仕舞われていたのか、自分でもわからない。
 これが刺激されると、真剣に、気持ちいい……
 カタカタと歯車が回り、またこの突起にエレキの刺激が来た。
「ああン……」
 トロンとした目で正面を見たとたん、バルベロッテのニヤついた顔が目に入り、気持ちが急に醒めた。
 何をしてるんだ、私は! 敵の面前で、暗い地下牢で、ぎちぎちに檻に詰め込まれたまま、こんな妙な気持ちに心を奪われて!

 しかし私の女の部分の肉は勝手に刺激され、バルベロッテの言葉通り、私の「おんな」が寛げられて行く。只の肉の割れ目としか認識していなかったそこは、恥ずかしい程に赤くほぐれ、粘液にまみれて輝き、今まで見たこともない程淫らな有様だった。
 はっきり認めよう。
 きもちいい。
 敵にこんな目に遭わされていることと、この気持ちよさとが、どうしても結びつけることができないが、きもちいいのは事実だ。

 腹の奥が突っ張り、股の側が締まる。
 檻に密着させられているくせに、腰が物欲しげに円を描くような筋肉の動作をする。
 与えられる刺激に合わせて、女陰の淫らな肉がゆっくり膨らみながらはみ出し、そしてまたゆっくり収縮する。
 それが繰り返される度、どんどん快感が増し、次第に頭の中に霞がかかってきた。
「オあああぁァ……」
「オあああぁァ……」
「オあああぁァ……」
 情けない喘ぎ声が出てしまう。
 バルベロッテに見られている……
 何かを期待するような、成果を確認するような、冷ややかな、それでいて嘲笑を含んだ目で。
 悔しいのに、悔しいのに、快感で頭がもっともっと霞んで行く……

 快感に責め苛まれているうちに、一時忘れかけていた便意の波が来た。それは既に自然な便意と言えるものではなく、檻いっぱいの私の、もう余裕のないお腹を、内部から強引に膨らますものだった。全部排泄したはずなのに、腹の中で新たに人工の便が大量に作られている。
「あアう! れりゃう! れりゃうよぉ!」
 敵の面前でなり振り構わぬ恥ずかしさ。私に残る最後の尊厳と誇りを振り絞って窄めていたお尻の穴が、エレキを3点同時に浴びせられた瞬間に、ついに緩んだ。極太の固形物が肛門を強引にすり抜けはじめる。
「アーアーアーアーアーアー!」
 目を閉じてしまいたいのに、何故か閉じる気になれない。


 涙に滲む視界でバルベロッテを睨みながら、ムリムリと極太の人工便を排泄し続ける。薬の効果なのか殆ど臭わないのがせめてもの救いだが、恐ろしい固さで、肛門を締めて区切ることができない。
 自分で排便を止められない、肛門を閉じ合わすことのできない無力さを、嫌というほど味合わされながら、敵に見つめられ、改めてこれが自分自身の敗北の罰なのだと思えてきた。
 これが私の運命なのだと。
 それに気付いた時、私の心の中心に、ポッカリと大きな、諦めの空洞が出来た。
 その空洞に、敢えて理性と誇りで脇へ押し退けていた快感の大波が、怒涛の如く流れ込んで来た。
「あああああああん!」
 そうだ…… 私…… 辱しめに身を任せても良いのだ。
 『辱しめを受け入れるという恥』を我慢することも、きっと私への罰なのだから。
 私の心の、最後の支えが、ポキリと折れた。

 私の秘所3箇所の快感が、強く小刻みになってきて、檻の中の肉塊の私は全身痙攣しはじめた。鬱血の痺れではなく、快感に全身がガクガクと勝手に震えているのだ。
 下腹部の奥がきゅううっと締まり、体内の金属棒を握りしめてしまって、大きな声が出た。
「あァーーーーーーーーッ!?」
嫌だ、なんて切なげな悲鳴を上げるんだ、私は。
 敵の策に嵌り、死にも値する負けを喫し、地下牢の中で、小さな檻に手足を畳まれてぎちぎちに詰め込まれ、肉の塊にされ、尻から極太の人工便を長く垂れ下げたまま、女性器を機械の発する怪しげな刺激で陵辱され、
勝手に快感を詰め込まれているというのに。
 快感の熱はすでに私の全身を犯し、屈辱的に折り畳まれた姿勢の肉塊のまま、どんどん温度が上がって行く。
 いよいよ頭も犯され、もう霞のかかっていた脳は完全に快感に漬け込まれた。
「ンはぁ……」
 やっとお尻の物を出し切った……
 永遠とも思われる永い永い極太人工便の排泄を終え、経験したこともない排便の達成感と安堵に襲われた瞬間、熱と痙攣の果てから、ものすごい何かがやってきた。
「アアアアッ! らんか、くる! きひゃう! いやッ! いく! アアアアアアアアアアア!!」
 頭の中が真っ白になり、意識を失った。

 気がつくと、私は静かな牢内の檻の中にただ一人、性器の陵辱や排便の屈辱を受ける前と変わらず、そこに居た。
 あれは夢だったのか?
 違う…… まだ鎮まり切らない全身の火照りや額に浮いたままの脂汗、股間に入れられていた器具の感覚がまだある。
 そして、あの快感の残滓……
 あれが「おんな」の快感なのか……?
 快感が頂点を極めた瞬間の、例えようもない気持ち良さがまだ鮮明に記憶に残っている。体の奥には、その時芽生えた快感の火種が、まだ完全に消えずに残っている。身体自体はといえば、鬱血の痺れもとうに通り越し、窮屈な姿勢を続けさせられていることの不快感だけだ。あれだけ檻内で爆ぜさせられたのに、もう手足の区別が不鮮明になっていて、意識は首から上だけしかない。折り曲げた手足の不快感は、その発信元が混じり合ってしまい、どこがどう辛いのかという区別できなくなっている。
 私がここに入れられてから、どれくらい経ったのだろう。
 この檻に詰め込まれてからは、どれくらい?
 時間の感覚も不鮮明になってきている。
 このままずっと放置するつもりなのか。
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