檻姫

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  九 奴隷甲冑装着  

 ピアスされた場所と異物を埋め込まれた付近に、膏薬のようなものが塗り込まれた。
 鞍馬に仰向けの状態から解放され、ズキズキ痛む股と胸を手で押さえながら、私が目にしたのは金属性の下穿きのようなものだった。
 形は前がV字に切れ上がり、後ろは殆ど尻が丸出しになるような形であった。
 バルベロッテが正面に鍵を差し込むと、左右の腰の部分が外れて前後に割れた。それを開くと、前後の部分と股部分の3つの部品に分かれていて、それぞれは蝶番で繋がっていた。前後の部分には美しい装飾が施され、股の部分には大小4つの穴が縦に並んでいた。
 どの部品も見惚れるほど上品な曲線を描いていて、とてもそんな禍々しい仕掛けを持つ甲冑の一部とは思えなかった。
 痛む胸と股を押さえていた手を、男たちに持ち上げられ、抵抗を封じられた。私が体を捻ると、股間でクリトリスがズクンと引っ張られ、乳首でチャリンとメダルが跳ねた。
 改めてピアスされてしまったことを実感し、真っ青になった。
「いやだ! はなせ!」
 バルベロッテがその金属の下穿きのようなものを私の下腹部に当て、股を潜らせ、尻に合わせ、腰の部分で前後をガチリと合わせた。
「これこれそのように動かれると合わせられませぬぞ。本当に垂れ流しのままで良いのですかな?」
「えっ?」
「そうそう、そのように素直に股をお開きいただけば…… こちらが排便の位置合わせリング、こちらが小用のリング、こちらが……ククク」
 予め体内に差し込まれた筒と、穿かされた甲冑の一部の穴の位置を合わされ、リングが2つねじ込まれた。その上から、また別の鍵付きの蓋のような部品がねじ込まれ、タラタラと垂れ流しになっていた小水は止まった。
「これで下(しも)の始末のご心配も無くなりましたな。姫様はこの後、この鍵がないと用が足せぬ体になったのです。なぁに、これで姫様を困らせるつもりはございませぬ。言って頂ければちゃんと下のお世話をして差し上げますよ」
「なっ!」
 この期に及んで、ようやく排泄の自由を奪われたのだと知った。
「こっ! このような状態で戦えるわけがないではないか! どっ、奴隷といえど、剣士だと申すなら、もっと身軽な格好……」
「おっと、まだまだ調節致す部が御座いますので、全て済んでから仰って下さい。ククク」
 男の一人が湯殿の端に並べられた袋から、甲冑の胸当てのようなものを出した。
 プレートアーマーの胸部前後部品キュイラスと脇部品ペサギュを一体化したような構造を、腹上から首までの袖無しシャツのように成形してあった。しかし、背中部分は中央に絞られて狭くなり、前部の守るべき肝心の胸部分には、大きな2つの穴がぽっかりと並んで明いていた。
 これも豪華な装飾が施されていて、嫌味なほどはっきり鍵とわかるような部分が胸の中央にあり、そこにバルベロッテが鍵を差し込むと、脇の部分が開いた。
 左右の肩の部分が蝶番になっているので、頭から被るように着せられる。
 並んだ2つの穴から私の乳房が引き出され、甲冑が胸板を直接圧迫する。
 背中側は肩甲骨が剥き出しになる構造なので、腕の不自由さは全く感じない。
 胸板側の部品と背中側の部品が合わせられるとかなり胸が締め付けられて息苦しい。
「痛くはありませぬか?」
「すこし、息苦しい……」
「それは奴隷の身分を思い知らせる仕掛け故、我慢なさいませ」
「くっ…… わかった。しかしこれで甲冑なのか? 乳が隠せぬではないか」
「最初のうちは姫様はこのお姿で、そのお美しい御身体を晒して頂きます」
「ええっ? 嫌ぁ……」
「ククク、ちゃんとお体を覆う他の部品も御座いますので、ご安心下さい」

 次に首輪を嵌められた。
 通常、フルプレートアーマーと呼ばれる全身完全装甲甲冑では、喉を守るゴルゲットというスカート状の詰襟部品を装着するのだが、それがそのまま内部まできっちり首を拘束する構造になっていた。
 奴隷の首輪と言うだけあって、きらびやかな彫金と金箔の飾りを施してあっても、厳(いか)めしい鍵部分を正面に据え、前後左右に折り畳み式の鉄の環が取り付けられていた。
 これも嵌められると少しきつめに出来ていて、幅広であることも手伝い、かなり息苦しい。首の血管も軽く圧迫されているので、暴れて鎖でも引かれようものなら、容易に気を失ってしまいそうだった。

 次は足だった。
 あの黒革衣装の足部ほど不自由そうではないが、爪先が細く踵の高い、ふくらはぎ側に編み上げのあるブーツが目の前に置かれた。向こう脛側にはこれまた装飾を施された甲冑の一部が取り付けられていて、かたびらのような可動構造で爪先まで覆われている。
 上は膝まで伸びていて、楕円形の膝当てポレインが実戦的で頼もしいのに対し、踵は針の如く細く、恐ろしいほど頼りない。そして踵にまで装飾が施されている。
 膝を守るポレイン、脛を守るグリーブ、そして鉄靴ソールレットと、ようやくいつもの甲冑らしい部品を目にした気がするが、踵を見る限り、これも私を剣士としてではなく奴隷として、バルベロッテ自身を飾る装飾の一部として取り扱う気なのだということが分かる。
 足を丁寧に拭き上げられ、左右の足ともブーツの中に押し込まれ、くるぶしから徐々に編み上げを締められると、履かされた瞬間に感じた不安定さは消え、こんな爪先立ちに近い姿勢でもしっかり立てるのだと思えた。
 左右とも編み上げ終わると、ふくらはぎの形をした後ろの部品が嵌められ、これも施錠され、自分では脱ぐことが出来なくなった。

「如何ですかな?姫様」
 これは…… 密着度が気持ちよくて、その重さを感じない。過剰な装甲と装飾のせいで、履き慣れた戦靴より重いはずなのに・
 しかしやはり戦靴は戦靴、今の私では鈍重にしか動けない。
 しっかりした内部の構造により、不用意に足をくじくことは無さそうだが、高い踵だとやはり速くは歩けないだろう。
 まるで私を逃がさないために作られたかのようだ。

 手も似たような構造だった。
 まず手甲(てっこう)から肘まで装甲の付いた革の編み上げグローブに手を通される。これはちゃんと指が5本に分かれている、やや厚手ながら普通の手袋だった。
 指の節々もかたびら構造で甲の側が覆われ、手のひら側は手袋のままなので、細かい作業は普通に出来そうだ。肘を守るコーターまで一体となっているが、いつものガントレットという部品と大差無い。
 しかし甲冑はすべて嫌味なほど厳重に施錠されているので、たとえ指先が自由でも、全てを脱ぎ捨て我が身が解放される望みは既にない。
 内側の編み上げが終わると、足同様に内側を覆う対の部品が嵌め込まれ、施錠されて、手の甲冑も脱げなくなった。
 こんな重い装甲のままで剣を振るうことなどできるのか?

 靴にも手甲にも、何カ所かに大きな環が付けられていて、鎖で繋がれてしまいそうなことが容易に想像できた。
 短い鎖と大きな錠前が用意され、私は早速手の環を後ろ手で留められ、それをうなじまで引き上げられて首輪に施錠された。

「ククク、美しい! 実にすばらしい! いつかはこのような奴隷剣士を傍に侍らせたいと思っておりましたが、まさか姫様になっていただけるとは!」
「くっ…… 好きに申せ! 私に貴様は殺せぬと申したが、この程度の甲冑で自由を奪ったつもりか? 慣れれば自在に動けようぞ。見ていろ」
「クククク! 実に頼もしい! 我が領ではこんなすばらしい女剣士など探すあてすら無いですからな。まだまだ奴隷甲冑の肝心の部分を身にお着けになっていらっしゃいませぬぞ。手を縛らせて頂いたのは、これから御暴れになると危のうございますからな」
「なっ……」
「おっと、御髪もお邪魔ですな」
 長い髪を革紐で束ねられた。
 
「まずは腰の物の始末からですな。姫様は戦えぬと申されましたが、それは逆に緩くて股の部品が引き攣れるからで御座いましょう? これでは如何か」
 バルベロッテは私の後ろに回り、尻の直ぐ上に何かを宛がい、ギリギリと巻き上げた。
 下履きのような形の甲冑が、特に縦方向に締まり、股間の肉がまだ塞がれていない2つの穴からはみ出すほどに密着した。
 股の関節部に摺れる程度たるんでいた甲冑が締まり、身体の動かない部分に密着したため、突然腰回りが軽やかになった。
 しかし……
「あ……?」
 4つの穴はそれぞれ、排便用、小用、それに……多分、銀製の金属棒をまた入れるための穴、そしてもう一つ……これは?
 股の前の方で、ピアスされてしまったというクリトリスが何か変だ。
 まだズキズキはしているが…… 根本が……?
 気になって仕方なく、肩を押さえる男の手を、後ろ手のまま振りほどき、ぐっと前傾して股間を覗き込んだ。
 何だこれは!
 甲冑に明けられた小さな穴から、ピアスに貫かれ、メダルを下げられたクリトリスが覗いている!
 ま、まさか、これを衆目に晒すつもりか?
 こ、これはいかな私とて死んでしまいたいほど恥ずかしい!
「な、なにを…… まさか……」
「ククク、やはり美しいものを私一人が眺めるのも勿体無うございます故、こうして……」
 バルベロッテは小さな2つの部品を器用に摘むと、私のクリトリスに下がったメダルを引っ張った。
「あぐっ! 痛ッ!」
「申し訳ありませぬな、まだ痛みまするか。しかし明日には痛みも退きましょう」
 リングに貫かれた私のクリトリスが驚くほど引き延ばされ、穴から飛び出した。
 本当に、肉に金属の環を通されてしまっている。
 そのリングの根本と、甲冑の穴との隙間に、摘んだ部品を半分ずつ押し込み、カチリと嵌め込むと、甲冑の穴のサイズが小さくなり、
リングが穴に引っかかるようになった。
「嫌ああ!!」
 私のクリトリスはリングから先を飛び出させたまま、甲冑に固定されてしまった。

 私の真下の床に、はっきり私のものとわかる、大きな粘液の溜まりが出来ていた。それがどういうことなのか、もう今の私には良くわかる。
「グスッ…… グスッ……」
 また一段、心が壊れた。
 チラチラと股間に目をやるたびに、その赤い繊細な突起はキツキツに膨らんで、狭められた穴いっぱいに拡がって甘く疼く。
「最後は姫様の大好きな、これでございます」
 案の定、それはあの銀の棒だった。我が身が破壊されてゆく興奮が止まらず、さらに地獄へ進むとわかっていても、さらなる刺激が欲しい。
 ぬるんと殆ど無抵抗に侵入してきたそれは、早速奥へとまっしぐらに突き進み、途中であの気持ちいい疣が内部を擦り上げる。
「ああん!!」
 反動で私の柔肉が四方八方からその棒を締め付け、その圧力でまた飛び出て行こうとする。
 それをバルベロッテが押さえ、鍵付きの蓋のようなものをねじ込んだ。
「ああん!!」
 また棒を内部へ突き進む。
 あれ? 何か変だ。
 え? いいっ! これいいっ!!
 違う! 最初に入れられていた物と、形が違う!
 きゅううううっと内部が締まると、一番良い位置に配置された瘤が内部を突き上げる。
「ハ! はアアアアアア!!!」
 逝ける!
 逝けてしまう!
「い、いっちゃう!! アアアアアアアアア!!!」
 湯殿を振動させる程の大声を上げて、激しく気持ちよくイッた。

「ハァ…… ハァ……」
「気に入って頂けましたかな?」
「なん…… で……?」
「これから姫様に奴隷剣士としてお勤め頂く、ささやかなご褒美でございます。もう焦らされる恐怖を味わうこともなく、いつでも逝って良いのですよ。ククク」
 おあずけばかり喰わされていた私には、それは救いの神の言葉にも聞こえた。しかしその時私は、バルベロッテの言っている意味を完全に取り違えていた。

「さ、お立ち下さい。最後の甲冑です」
 バルベロッテが手にした物を見て息を呑んだ。
 それは通常ヘルメットと呼ばれる鉄仮面だった。
 しかし、普通のそれとは違い、開閉出来る前面のシールドを跳ね上げても顔を出すことは出来ず、顔の形にぴったり成形された鉄板に、2つの目の穴と、小さな鼻の穴があるだけだった。
 口の位置にシールドごと貫く形の穴が明いていて、それは内側に向かう管のような構造だったから、きっとまた言葉も奪われる。
 全体が異様に小さく、普通のヘルメットのようにスッポリ被る構造でないのはすぐわかる。
 額に設けられた鍵穴に鍵が差し込まれ、回されると、鉄仮面が前後2つに分かれた。
 後頭部には直径5センチほどの穴が明いていて、髪の毛を出すことが出来るようだ。頭頂部に折りたたみ式のリングが付いていて、やはり奴隷用として作られているのだとわかる。

 再び嵌みを噛まされ、マスクの中に生えた金属の筒を口に差し込まれ、鉄仮面を被せられる。
「オグッ!」
 今度は金属筒なので喉の刺激が容赦無い。しかしマスク全体がきっちり嵌め込まれると、微妙に位置が安定して、幾分吐き気が和らいだ。
 穴から髪の毛が引き出され、後ろの部品が合わせられ、頭が鉄の檻に閉じ込められる。
 額の部分についた鍵が回されるに従い、仮面の継ぎ目がガッチリと密着し、もう脱ぐことが出来なくなった。
 シールドが下ろされ、それも施錠されて、自力では跳ね上げることが出来なくなった。
 折角目の穴は明いているというのに、視界はやはり鉄格子の中。今度は縦に細いスリットが並ぶ視界だ。黒革のマスクは明らかに自由を奪う目的の狭い視野だったが、この鉄仮面は実戦でもこの視界なので、多少マシだろう。

「さあさあ姫様、広間でお披露目に致しましょう」
 首輪の環を引き起こされ、鎖を繋がれて、湯殿から出た。ガチャ、ガチャ、ガチャと、重々しい響きを立てて歩いて行く。黒革の時のバレーシューズで少し慣れたせいか、この程度の高い踵如き、ゆっくりならちゃんと歩ける。
 後ろ手に拘束されたままなので、胸もクリトリスも隠すことが出来ない。
 腹の中では金属棒が蠢いている。

 城の広間に連れてこられ、領主の座の脇にある金具に繋がれた。後ろ手くらい解いてもらえるのかと思ったら、このまま晒し者にする気らしい。
 バルベロッテは満足げに自らの席に着いて執務を始め、私はしばらくこのままだった。
 ここは城内の中枢なので、中庭のように色々な身分の者が居るわけではないから、皆じろじろと私のことを眺めたりはしないが、皆一様に奇異な目で一瞥をくれていく。
 奴隷甲冑という鍵だらけの装備を身に着けさせられ、乳首とクリトリスにピアスされ、バルベロッテの紋章を下げられて、その胸も、クリトリスすらも晒されている私。
 ゾクゾクと全身を甘い痺れが走る。
 覚え込まされてしまった、虜になることの快感。
 不自由な姿のままイクことの快感。
 虚飾を捨て、一番弱い自分を剥き出しにする快感。
 そんな異常な性的興奮が一度に襲って来て、こんな扱いを受けているのに、腹の中の物が激しく蠢き始めた。
「ンフー! ンフー!!」
 鼻息が荒くなり始めた私に気付き、バルベロッテがニヤリと笑う。
 金属棒の動きは止まることを知らず、瘤が勝手に中をかきまわす。
 あ! そこハ!
「クンンーー!!」
 仮面の中で精一杯切ない顔をして、ドロ甘の快感をやり過ごす。
 もう、また、逝っちゃうよう!
 そう思い始めてからイクまで数分と持たなかった。
「ンーーーーーーーー!!」
 息が詰まりそうなのを必死でこらえて、鉄仮面の中に涙を散らしながら、腹をくの字に折って快感に震える。
「ンフーー! ンフーー!」
 余韻の呼吸すら追いつかない。
 そうこうしているうちに、また気持ち良くなってきた。

 まさか……

 こんどは逝き続け責めなのか……?

 くあああっ!
 また逝く!
 ううあああああ!
 また!
 身体が傾いたら装備の重さに負け、後ろ手のままガクリと膝を着き、鉄仮面を石の床にしたたかに打ち付けてその場に倒れ込んだ。
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