檻姫

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  十二 湯殿にて  


 一週間程が過ぎた頃、私は風呂を許された。股の甲冑以外、手も足も首輪も全部外され、鉄仮面も脱がせてもらった。嵌みを吐き出し、久しぶりに口が自由に動く。しかし体内の物は抜いてもらえないので、ずっと淫らな気分でふわふわしたままだ。
 そしてなぜか突然、恐ろしい喪失感に襲われた。あんなに自由になりたかったのに、私を堅固に全身を保護していたものを、剥かれて奪われた気分になったのだ。

 湯殿にバルベロッテが来た。
「御気分は如何ですかな?」
 私はもうずっとメロメロのままだった。
「うふふふ! いいれすよぉ! はう! んまいにちぃ、きもちいいれすぅ! んあっ! こんなきもちいことおしえてくれてぇ、あふ、バルちんにはぁ、んああ! かんしゃしてんのぉ! ひうッ!」
 だめだ、正気のつもりなのに、わざと『バルちん』とか幼児語を連発すると、貶められた自分を再認識してしまい、被虐感にゾクゾク感じてしまう。鼻にかかった声でぇ語尾を延ばすとぉ、真面目剣士のはずの私がぁ、阿呆になり切ってどんどん堕ちて行くみたいでぇ、うあゾクッとくるぅ!
「風呂の間も、ご自分で触っても良いのですぞ?」
「はふッ!ほんとおぉ?! ああ! 自分の指イイ! いつも金属の指先だったからぁ! ちょとキツくて! んあっ!んあっ! ああああああ!!」
 いやもう真剣に気持ち良いのだ。無垢でダメダメな私が剥き出しになってしまう。淫乱に成り切ると本当に楽だな。演技が皆無かといえば嘘になるが。
 私が完全に呆けてしまったのを見て、バルベロッテが満足そうに出て行った。
 風呂は侍女が一人世話に付いた。
「あなたは……剣士様だったんですね?」
 侍女に優しく話しかけられ、私はふっと正気に戻った。その侍女の声は最初に入れられた地下牢で耳にしたものだった。
「貴女は? ……ああ! あの時の! すると貴女は侍女ではなくバルベロッテの奥方か。これは失礼した」
「あの時はお恥ずかしい姿をお見せしました」
「なんの、私とて同じだったのだから。それよりも色々と教えて頂いて心強かった。感謝する」
「お仲間に…… なって下さったのですね?」
 私は真っ赤になった。
「え? あ、い、いや、その、私は…… 一応、剣士として……だな、」
「『奴隷剣士』様でございましょう?」
「う…… きゃっ!」
 湯船の縁で、後ろから抱きかかえられた。
「やめろ! はなせ! はなして…… いやっ……!」
「バルベロッテは時々こうして私達同士の絡みを許します。きっと次のお風呂では、また違う者がお世話すると思いますから、今だけ私の好きにさせて下さい。一応これでも私バルベロッテの妻ですから、剣士様より立場が上ですのよ」
 この人は私が王女だとは知らないのだ。
「……はい……」
 だめだもう、言いなりになるのがゾクゾク気持ちよくて。

 湯船から引き上げられ、なだらかに磨かれた大理石の背もたれのような部分にまず奥方が腰掛け、そこに重ねて私を座らせ、後ろから抱えた。
 乳房を揉まれ、乳首のリングに左右とも指を通された。
「あう…… そんなことされたら……」
 乳首を乳房ごと自在に引っ張られる。
「素晴らしいですね、これ。バルベロッテは私達にはしてくれません。少し嫉妬します」
「そんな…… 好きでされたわけでは…… あああんっ!! やめてぇ!」
 引っ張られる瞬間の、乳首がピンと緊張する、痛みに近い甘い刺激。
 敏感な肉に内部から力が加わるという、普通ではありえない犯され感が、張り詰めた快感をばんばん乳房内に送り込んで来る。
 片手を乳房から離し、股間に這わせる。
「ちょ! そこは! さっきからずっと敏感…… やめっ……!」
 ぐきーんと全身がのけぞった。温かく、柔らかな指で刺激されるクリトリスの発する快感は、瞬時に私の全身をとろとろに蕩かす。
「んハああああぁぁっ!!」
 あれだけバルベロッテの前で気をやったばかりだというのに、私は内腿を摺り合わせ、腰をゆるゆると回し、もっともっととおねだりしてしまう。


 奥方は、女の体を知り尽くした指技で、クリトリスの表皮を触れるか触れないかの圧力でなぞる。
「んあああああん」
 金属棒が体内で激しく蠢き、瘤が内部をごりごりに摺り上げる。
 まるでその動きを完全に把握しているかのように、クリトリスを弱く撫で、あるいは強く摘み、そしてピアスごとクンと引っ張る。
「きゃあああああ!!」
 悲鳴に近い嬌声を上げてしまう。
 まるで時間が無限に止まってしまったように、微妙な指遣いでビキビキの絶頂直前とドロドロの弛緩との間を無理矢理何往復もさせられる私。
 クリトリスの快感の強弱で、私の奥の子袋付近の棒の動きを操られている。
 クリトリス刺激が弛緩すると、内部が快感を求め、勝手に蠢き、勝手に締め、瘤に内部が突き上げられる。
「あううぅぅんん……」
 体をくねらせ、緩くイク。
 子袋快感とでもいうのか、全身がドロドロに蕩ける、甘い汁に深く沈むような快感。
 フルプレート甲冑がくれる快感と同質なものの、もっと安堵した中での快感。
「ううううぅぅん……」
「ああふ……」
「あああああああああんんんんんん……」
 たっぷりと自在にそれを味合わされてしまう。
「ン…………」
 私の声が眠りに落ちたように小さくなり、反応が鈍くなると、奥方は私のクリトリスをまた引っ張る。
「ひううッッ!!」
 こっちは飛ぶ快感。
 エレキが全身に走る。
 軽いタッチと執拗なこね回しで、目の裏が真っ白に光るような快感の頂点に連れてゆかれる。
「あ・あ・あ・いっちゃう……」
 そしてまた、直前で弛緩。
「ヒぁぁ! い、いぢわるゥ……!」
 奥方は、自分がバルベロッテにされていることを私にしているのか、手口がそっくり同じだ。
 それより奥方が女である分、より執拗で、より深い。
「やめぇ…… らめぇ…… ハアッ…… ハァッ……」
 執拗に繰り返される寸止めで、私はもう発狂寸前だった。
 風呂場でまた墜とされるとは思わなかった。
「もぉ…… あらひぃ…… おくひゃまの…… おくひゃまのォ……、どれいでいいれすからぁ…… イカせてくらさあぁぁい……」
 息も絶え絶えに言った。
「あ、あら! あら、ごめんなさい! 私、自分が焦らされてから逝くのが好きなので…… はいどうぞ〜」
 わあ! そんな! いきなり!

「きゃあああああああああああああ!!」

 どういう指技だか知らないが、ちょうど子袋の口辺りが棒でごりごりされているところで、クリトリスをころりんと転がされ、目の前が真っ白になって絶叫し、ガックリと弛緩した。

 頭の中がからっぽになった状態のまま、体の隅々まで洗ってもらい、腰の甲冑も隙間に布を通して可能な限り洗ってもらった。
 手足の爪を切ってもらい、前髪だけ切りそろえてもらった。
 全部終わったらモリス達が入ってきて、元通り甲冑を着せられ、鉄仮面も被らされた。
 こ、この安心感は何だ。
 お風呂でとりあえず爽快感に浸り、未だ淫らな気分ではあるが、また少し何かを試してみようという気力も生まれた。
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