檻姫

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  晒し刑  

 処刑当日。
 私としたことが、期待しすぎの焦燥感と恥ずかしさで寝込みそうなってしまった。
 地下牢に行くと、既にあのディルドーがリンダの手に有った。
「ああ……」
 全身の毛穴が総毛立つほどの絶望感。
 本当に処刑されてしまう寸前のような震えを伴う覚悟。

 ゆっくりと、私の被虐感を煽るようにしながらディルドーを挿入され、口の蓋を閉められ、鍵を掛けられた。
 そしてあの残酷な性感を常に発するフルプレートアーマーを着せられた。
 もちろん鉄仮面も着け、髪で正体が知られないように髪はまとめて後ろで布を被せてもらった。

 別に逃げたりするわけでもないのに、わざわざ首の左右で手を拘束する木製のストック枷を嵌められて、牢から中庭に連れ出される。
 周囲を囲むのは、今日は4人の妻達。
 たったこれだけの距離なのに、もう何日もかけて下ごしらえされてしまった私の膣は、不随意の蠕動を繰り返し瘤を摺り上げている。
 アーマーの内部を、滑(ぬめ)る液体が太腿にまで滲み広がっている。

 モリスが手伝い、私は四肢を拡げられた状態で2本の柱の間に固定された。
 あの広場の子よりも足まで拘束されている分厳しい処刑だ。

 そして、本当に、そのまま放置刑。

 最初はもちろん気が張っているし頭も明瞭なので、とにかく持久戦に向けて体力を温存し、楽な姿勢を見つけようと試みる。
 最初から腕も脱力。
 フルプレートアーマーのおかげか、生身より肘と肩の負担が少ないので、もうだらりと吊られる。
 こういうとき足が自由だともう少し楽な姿勢が取れるのだが。

 少し落ち着いたら、また膣のディルドーが蠢き始めた。
 すごい……
 すごいよ、この瘤……
 クッと奥に引き込んだ時に、ちょうど手前の天井を突き上げる。
 ここがキモチイイんだよね。
 そら、1回……2回…… これならこのままイケるじゃない! モリス、ちょっと設計を失敗したな?

 あずま家から見られてるのも気にせず、腰をクイクイ突き出して、コブの当たりの良い所を繰り返し摺る。
 あっくゥん! 嬉しい! このままああ!
 ――カチ――
 あ、あれ?
 わああああ、いきなり虚無空間に放り出された感じ。
 さっきの瘤は? 棒もヌルンと逃げちゃって、何も無い感じがする!
 ハァ…… ハァ…… くそう…… もう少しだったのに。

 少し経ったら、どこだかに逃げていた棒の感覚が、どろーんと中心に戻り、位置が安定すると再びカチッと瘤が飛び出て来た。
「ンーーッ!」
 いきなり内部全体をつつかれてパアッと気持ちよくなった。
 ハァ…… ハァ…… モリス設計絶妙すぎ!

 顔を上げてあずま家の方を見ると、4人の妻達は談笑しながらお茶を飲み、私のことを指さしている。
 ハァ…… ハァ……
 感覚は次第に鋭くなってゆくので、最初の刺激で逝けなくとも、そのうちきっと……
 あずま家を睨みながら、瘤のイイところを探して腰を前後左右にくねらせていたら、リンダ達に思い切り指さされて、思い切り笑われた。

 全身をみしみしと締め付けるフルプレートアーマーの内部が、惨めに括(くび)り出されている私の一番敏感な部分3ヶ所を刺激する。
 足の自由が利かないのがもどかしすぎる。
 もじもじってすると、絶対きもちいいはずなのに。
 本当はもっと腰をこう捻って、太腿を擦り合わせたいのにぃ!
 この姿勢、残酷すぎるよぅ!

 放置刑の恐ろしさは、何もすることがないので頭の中が思考でいっぱいになることだ。
 そして自分の首を絞めるようなことでも次々と思いついてしまう。

 火照って熱を湛える下半身の、一番下の前方で、カチコチに尖っているクリトリス。
 モリスが甲冑を高温の火炎鞴(ふいご)で焙って調整加工するのを見て、クリトリスと乳首を貫くリングも切ろうと思えば切れるんだと知った。
 いつでも外せるとわかった途端、急に名残り惜しくなって紋章メダルの交換だけにしてしまった。
 メダルは純金製なので加工は簡単だ。
 しかしピアスリングの方は私が勝手に外せると思い込んでるだけで、実際に外そうと試みれば、まず最初にリングを熱する等の処置が必要で、ひょっとしてもう一生外せないのかもしれない。

 腰の甲冑にしてもそうだ。
 甲冑の一部と言えば聞こえは良いが、私にとって機能的には性器・排泄器の拘束具、貞操帯そのものだ。
 この甲冑の材質も、熱して切れば加工できるのであろうが、身体に装着したままでは熱することができないのでとても切断するなど不可能に思える。
 最初に地下牢で合わせられた時は、秘伝の熱処理とやらをする前だったのだろう。
 自分が閉じ込められている「動ける檻」が絶望的強度だと改めて思い知り、全身にゾクゾクと甘美な痺れが走る。
 その刺激が、逝けない永久ダンスを加速する。

 動かしてない。
 腰なんて動かしてないよ。
 でも、でも、わずか1mm向こう側に絶頂への扉があるのかもしれないと思ったら、クイクイ押しつけるのを我慢できるわけないよ!
 吊られてクタクタの全身なのに、腰周りの一部だけをゆるりゆるりと回してしまう。

 今度は、この前全部外してもらって洗浄した時の自分のクリトリスを思い出してしまった。
 アーマーの厚みが4〜5mmあり、クリトリスを括り出す半月状のディスク2枚は、組み合わされてリング状になった時の穴に向かってすり鉢状になっているので、実質クリトリスの付け根は1mm程度しか引っ張られていないはずだった。
 しかし包皮を掻き分けられ、完全に剥き出しにされたまま固定され続けたため、包皮は付け根付近で縮こまり、クリトリスは完全剥き身のまま、その根本で空気の動きすら感じる程に飛び出した状態になっている。
 剥き出しの、光沢を帯びた真っ赤なソレが、リングとメダルの重さで下向きにぷらりと垂れる様は、まるで超小型の男性のアレのように思えて、皮膚上でのわずか数ミリ単位の出来事なのに、後戻りできない肉体改造をされてしまったような絶望感に浸った。
 モリスは過去に他の女に施術した経験をいくつも持つらしく、外せばしばらくして殆ど元に戻っちゃいますよとさも残念そうに言うが、
それってリングが外せればという前提の話だろ。

 私のクリトリスって、もうだめだ。
 乳首も。

 ついに腕の痺れが全身に回りはじめた。
 しばらくは全身のきつさと足の位置のままならなさが気になって、快感責めのことを忘れてしまう。
 あの広場で処刑された女の子の姿が、今の自分の姿に重なる。
 あの子が絶望しながら味わった拘束を、私は淫らな欲望を満たすという不謹慎な目的であじわっている。
 自由を剥奪されて、感覚を麻痺させられてこそ得られるゾクゾクした快感は、死と隣り合わせの戦での一瞬にも似ている。
 きっと、切られて死ぬ時もこんな気持ちなのだろう。
 まるでピアスの痛みが、矢に当たった時の衝撃に似ていたように。

 日が暮れたころ、体力が限界に達し、吊られた死肉のような気持ちになった。
 たった半日吊られただけで、厳重な拘束というものは正常な精神も判断力も奪い去ってしまう。
 あの広場の子は、もうこの時点で気が狂っていたのかもしれない。
 私は狂えない。
 他のことで狂うよう、仕掛けを施されているから。

 死肉すら狂う仕掛け。
 それはこのディルドーだ。
 あの檻の時のように手足の感覚が無くなると、まるで肉ダルマにされたような気分になった。
 体内の敏感な部分の動きだけが全てで、末端はすべて冷たい肉になり切り離されたように感じる。

 吊られた、温かい、丸い、肉。
 その中心を、蠢きながら上下する、金属の棒。

 ハァ…… フウ……、 ハァ…… フウ……、 ハァ…… フウ……

 その動きに全神経が集中する。
 ああ、やっと、やっと逝ける。
 そしたら、その後は、ずっと逝けるはず。

 ハァ…… フウ……、 ハァ…… フウ……、 ハァ…… フウ……、

 ハァ…… フウ……、 ハァ…… フウ……、 ハァ…… フウ……

 ああ…… 来た、来た来た、

 すごいの来た。

 ああ嬉…… ――カチ――

 いやあああああああああああ!!!


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