檻姫

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  はみはみ刑  

 気付くとエレキダンスからは解放されていた。
 槍も腰周りの木片も針金も無く、ピアスの部分も元のざらざらした布に戻っていた。
 随分永く気を失っていたのか、もう夕方だった。

 何かが変だった。
 チクチク・ザラザラが移動している。

 何だろうこれは……

 夕暮れの薄暗い光の中、鉄仮面のシールドの縦格子の内側に、毛羽立つ蠢くシルエットが映った。

 け! 毛虫だッッ!!!

「フゴーーーーーーッ!!!」
 自分のどこにそんな体力が残っていたのか、ジャリンジャリン、ガキンガキンと滅茶苦茶に体を揺すり、真剣に涙目になって鉄仮面の中に侵入した毛虫を必死に振り落とそうとした。

 その時は、これはきっと下の芝生から体を這い昇って、誤ってシールドの格子から顔の前に入って来てしまったのだと信じていて、今回のお仕置きプレイの想定外の事態なのだと思った。

 そしてなんとか毛虫のことを説明して取り出してもらおうと思ったが、口が利けないのでパニックになった。
 夕食のためにあずま家から立ち去ろうとしている妻達に、懇願する眼差しをシールドの奥から向け、なんとかしてほしいと心から思った。
 どうせ眼差しなんて見えないとわかっているのに。

 ところが。

 今朝給餌をしてくれたミレアリアが、私に向かって指を4本拡げて見せたのだ。
 そして手を振って引き上げて行く。
 4って…… 何が?
 まさか…… 毛虫の数!!!?

 その瞬間、目の前の毛虫が事故ではなく意図的なものだと知り、左右の乳首周囲とクリトリスの周囲で蠢くチクチク・ザラザラの正体と繋がった。

「フゴーーーーーッ!!」
―― ガシャン! チャリン! バタン! ドスン! ――
「フゴーーーーーッ!!」
―― ガシャン! チャリン! バタン! ドスン! ――
 
―― ガチャ! ――

―― ガチャ! ――
―― ガチャ!! ――
―― ガチャ!!! ――

 バルベロッテによってエレキ棒に犯された時のことすら霞んでしまうほどのおぞましさに、狂乱して叫びながら暴れる。

 取って!

 取って!
 取って!
 取って!

 這い回る生々しい感触が嫌ああああああああああ!!!

 真剣に発狂寸前だと思った。

 首筋を伸ばしてヒイイと叫びたい程の嫌悪感なのに、ゾロゾロ這い回る毛虫で乳首もクリトリスも甘く擦り上げられてしまう。
 人間、こんな脳がぐにゃりと歪むような境地ってあるのか。

 肌と甲冑が密着している部分が多いため、毛虫は道を阻まれて、ピアス周囲の狭い空間を不規則に這い回る。
 嫌で嫌で死にそうなのに、多数の毛にクリトリスを刺激され、淫らに腰を振らざるを得ない私。

 目の前の鉄仮面のシールドの内側を這っていた毛虫は、いつの間にか勝手に出ていっていた。

 しばらくしたら、乳首とクリトリスが猛烈に痒くなってきた。
 何か塗られている!

 痒い! 痒い! 痒い! 痒い! 痒い! 痒い! 痒い!

 その痒みをトレスするように毛虫が這う。

 ああん……

 これって、毛虫の餌も兼ねているのだろうか。

 ああっ、痒い! 痒い! 痒い!

 にぎゃーーーーーッ!?

 毛虫にクリトリスをはみはみされてるっ?

 気が狂いそうな瞬間がずっとずっと継続していたが、日暮れ後しばらく経った夕食時に騒ぎが起こった。

「姫様! 大変です! 直ぐに工房へおいで下さい!」
 血相を変えたリンダたちがグレンドルと一緒にやって来た。

 私は毛虫でそれどころじゃないのに!
 一体何なんだ。

「ムフーーン!」
 毛虫は洒落にならないので取ってくれと叫んで見ても、一向に通じない。

 妻たちに支えられ、グレンドルに手足の鉄枷を外してもらった。
 ドスンと芝生に尻餅をついた。
 手足の自由が利かずもがいていると、グレンドルに文字通りお姫様だっこされた。
 ちょ、一体何キロあると思っているんだ!

「ぬごおおおお!!」
 グレンドルは雄叫びを上げながらズシンズシンと工房へ向かう。
 うわあああ、グレンドル無茶するな!

「ハフハフ、重ーーーッ! お前、太ももベッタベタじゃん。どうしたんだこれ?」
 私は甲冑の中で真っ赤になった。
 グレンドルあとでコロス。
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