檻姫

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  黒いさなぎ刑  

「姫様! 姫様! あら? あらまぁ。 あらあらあら」
 リンダらしき声で目が覚めると、もう夕暮れだった。
 グレンドルに抱きついている自分に気付き、ガバッと飛び起きた。
 リンダがニヤニヤ笑っている。

「何だ? おわ! やべ! 俺、夜勤警らだった!」
 グレンドルは慌てて着替えると部屋を飛び出して行った。

「姫様、モリス殿がお戻りですよ! 馬を飛ばして呼び戻しました」
 嬉しい知らせだ。
 どのみち無駄かも知れないが、この甲冑を知り尽くした製作者がいれば何か策があるかもしれない。
 しかし医学の知識まで持っていた博識のバルベロッテがそんなに甘い物を作らせるとも思えない。

「お早く地下牢へ」
 コクリと頷いてリンダに続いた。


 妻達に混じって、旅の身支度もそのままに、地下牢にモリスが居た。
「おお、姫様! 仔細相伺いましたぞ。はい、鍵」

 ハァ?

「きっと間者めは私が留守にするのを狙っておったのでしょうな。さあさあ、お早く自由の身に」

 ハァ?

 鍵あるの?
 なーんだ。

「モリス殿、あとは私共で」
「おお、頼む。慌てて帰ったので片付かん」
 鍵をリンダに渡し、モリスは出て行った。

 いつもより少し真剣な面持ちのリンダ達の手で、次々と鍵が開けられる。
 真っ先に鉄仮面を脱がせてもらった。
「ぷあっ! ああ、リンダ、皆、世話をかけた」
「一時はどうなるかと思いましたが、普通に鍵の予備があったのですね」
「うん……なぜだろう。絶対予備など無いはずだったのに……  それより毛虫! これには参った」
 甲冑が脱がされる。
 毛虫はやっぱり潰れて、汁を出していた。
「キャッ! うわああ…… これ、姫様よく平気でしたね」
「平気じゃないってばああ! 怒るぞ。 もう死にそうだったんだから。早く取ってぇぇぇ」
「はいはい」
 リンダは事も無げに潰れた毛虫を指で取り去り、地下牢の床に捨てた。
 乳首は赤く腫れていた。
 クリトリスも少し腫れていて、固定する円盤を外すときに痛かった。

 首輪も、手足の甲冑も全部脱がされる。
 最後に腰の甲冑を解除された。
 尿道の筒も肛門の筒も、もう抜き差し慣れているので、ロックさえ外してもらえればあまり苦痛なく抜ける。
「はあん!!」
 苦痛無く抜けるが、ビクッとする快感のおまけはつきものだ。

「何か着る物は無いのか? 湯を使いたい。裸で湯殿に行くわけにもいくまい」
 リンダ達がニヤーッと笑う。
「湯殿には私達がお連れします」
「だから、せめて何か着ないと……」
 リンダ達が持ってきたものを見て、私は言葉が途切れ、顔面蒼白になった。

 あの、広場で処刑された子が、最後に詰め込まれた革袋と箱……

「姫様サイズを作らせました」
「あ、い、嫌あああ!!」
「まーたまた。嫌がるふりばっかりー」
「ち、ちが……」
 ああ…… 本当にあの子と同じに…… 詰め込まれてしまうんだ……
 おあつらえむきに、今の私はボロボロでドロドロでものすごく臭いし。

 リンダ達に脇を掴まれ、大した抵抗も出来ぬまま足から袋に詰められた。
 手は拘束無しのまま背中に回され、そのまま革袋を閉じられた。
 一応新品ではあるらしく、ものすごく革臭い。

 周囲を人の手が蠢き、何かを繋ぎ合わせ、ギュッと引き絞る。
 暗闇が更に狭く、窮屈に密着してくるのを感じる。

 何本ものストラップで黒い蛹にされてしまうと、あの子の絶望が伝わって来た。
 この革袋は見た目よりもっと絶望感を煽る。

 完璧な遮光性と密閉性、そして硬さ。
 晒し刑の後のぼやけた脳でも、たちまち恐怖に暴れ出したくなるほどの閉塞感。
 周囲の気配がわからないのも怖い。

 突然持ち上げられ、無理矢理折り畳まれた。
 ちょ、無理ッ! その方向痛いってばぁ!
 おかまいなしに曲げられ、首をコキリと斜めに押しつけられたら、ゴトンと重い物を載せられた。
 蓋?
 この不自然な斜めさは首痛すぎる!

 あああああ、浮いた!浮いたよ!
 運ばれてる?
 この感じは台車ではなく、みんなで抱えてるんだ……

 ああう、自分の『荷物扱い』っぷりに、解放された股からとろとろと汁が溢れて止まらない。
 すごいよ、モノ扱いってすごい快感だよ。

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